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漆黒のヴァルキュリア  作者: 月之黒猫
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治癒師


 私達が孤児院に到着するも、其処はまるで誰もいないかの様に静まり返っていた。


 マリーちゃんをクリスから下ろすと彼女は孤児院の中へと駆け出して行くので私達もその後を追う。

 たどり着いたのは孤児院の奥にあるシスターの部屋だろう、その入口に子供達が集まっているのが見えた。


「…っシスターは!?」

「マリー! あれからまだ目を覚ましてないの…」


 マリーちゃんがシスターの容態を聞くが彼女と同じ年頃の女の子の口振りから、シスターの容態はあまり良くないことが伺える。



 そして子供達が私達に気づくと驚きと、でもシスターの心配で戸惑っているのが分かった。

 それに気づいたのはもう一人、教会の神父様で彼は子供達を子供部屋で待っているようにと一番歳上の女の子にお願いしている。



 子供達が部屋へ戻るとギルドマスターがシスターの部屋に向かう。


「神父、シスターの容態はどうですか」


「ああ、マティアス殿。…それが…やはり…」



 シスターの部屋にはマクシミリアンさん達もいて、眠っているシスターの横にはグロウ君がとても心配そうに付き添っていて、グロウ君が眠るシスターに謝りシスターの袖を少し捲ると、手首辺りに赤紫の痣のようなものが見えた。


「ギルマス、シスターの病気はガウバス病で間違いなさそうだ」

「…そうか」


 シスターの腕の痣とマクシミリアンさんの言葉にギルドマスターはため息交じりの返事をしている。


「マティアス殿、ギルドの方にマウラ草は…」

「残念だが冒険者ギルドには在庫はなかった。今、商人ギルドの方に確認を入れてるところです」



 神父様とギルドマスターが〝マウラ草〟という物ついて話し終えると同時にグレンさんが現れた。


「グレン、どうだった」


「すみません。やはり商人ギルドの方にもマウラ草はありませんでした。それともう一つ…町の全ての道具屋にも無いそうです」


「そ…そんなっ」


 神父様の悲鳴のような声が部屋に響く。


「数年前に隣国で蔓延した大規模なガウバス病で特効薬となるマウラ草は、この国と近隣諸国の物は隣国により大量に買い占められました。その上、マウラ草は自生の数も少なく、あの時に取り尽くされかけたので、未だに数が増えず仕舞いです」


「聖女がいながら()()だからな。どうもあの聖女は胡散臭い」

「マティアス」


 すかさずグレンさんがギルドマスターを(たしな)める。

 やっぱり教会で聖女の悪口は駄目なんだろうか。



「で、では、治癒師の…王宮魔術師団副団長様に…」


「神父様。今から王都にいる副団長を呼んでも、もう…時間がありません」


 時間がないとのグレンさんの言葉に神父様がショックのあまり倒れそうになり、マクシミリアンさん支えられ椅子に座る。



 〝時間がない〟ということはシスターの命は―――。



 私は思わずシスターの側に駆け寄りベッドの脇のグロウ君の横に膝をつく。


「どうにかならないの…」


「このガウバス病を治すには二つしか方法がないんだ。一つはマウラ草、そしてもう一つは治癒師と聖女が使えるキュアだけなんだよ」


 私の呟きに答えたのはグロウ君だった。

 キュアは毒や麻痺、一部の病気を治せるもので、滅多にいない治癒師で扱えるのはその中でもごく一部、この国の二人の治癒師では王宮魔術師団副団長だけが扱えるという。

 聖女も使えるが今の聖女はどうも怪しいとのこと。



 そして、何を隠そう私もキュア持ちである。



 私はシスターに顔向けると意を決して【鑑定】を使う。

 勿論、ガウバス病にだけ意識を向け個人情報は見ないようにする。


 背中に冷や汗が流れる。

 兄達も既に鑑定を使っているのか、険しい表情をしていた。





《ガウバス病・重症 急変の可能性・高》





(……凄く嫌な感じがする)



 ――そう思った、その時。




 シスターの容態が一気に急変した。












お読み頂きありがとうございました。


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