献上
「これ以上、君達のことは詮索しない」
ギルドマスターが頭を上げた後にそんなことを言われたが、ギルドマスターもグレンさんも本当にそれ以上何も聞いてくる事はなかった。
「だが、もう少し話を聞いてくれ」
兄達や私が頷く。
「…先程、ギルドにいたあいつ等は大体がここを拠点としている冒険者で、あいつ等の殆どは今回の君達についての事を他所で話したりはしないはずだが…」
ギルドマスターは一度話を止め、ため息を吐くと表情を険しくさせ、話を続ける。
「君達も気づいたと思うが、あそこに普段いない奴等が紛れていてな。男爵の護衛の他に商人ギルドの奴等も数人いた」
「商人ギルド…」
私の呟きにギルドマスターが頷いた。
「奴等は商人ギルドに所属しているが冒険者でもある」
何でも、腕に覚えがある者は商人でも冒険者登録している者達も多いという。
「しかも奴等は男爵と関係が深い上、自分達の利益以外に関しては口が軽いときた」
「俺達の噂は瞬く間に広まる訳か…」
「まぁ、十中八九そうなるだろうな」
商人達の情報網は凄まじく、私達の話は事が事なので、あっという間に広まるとのこと。
確かにアビスマーダーキャットを従魔にしている時点で大事だったのに、それが実は神獣ケットシーでした、なんてなったら…少し怖いけど、気を引き締めないとと思った。
「後、男爵…ゴーミダゲス男爵には十分に気をつけてほしい」
「「!…っ……」」
危なかった。
男爵の名前聞いて危うく吹き出す所だった。
なんて名前なんだ。
蒼兄さんも同じだったらしく、二人同時に吹き出しそうになるのを何とか耐える。
剛兄さんは通常運転、あれに顔色一つ変えないなんて尊敬の一言である。
その間、ギルドマスターは訝しげな顔をしつつも話を続けた。
「今回、男爵はフォーチュン・ブルーバードに気を取られていたし、君の従魔がケットシーとは今は信じていないだろう。だが、噂が広まり男爵がそれを信じれば、あの男は必ず君の従魔を手に入れようとする」
「そんな…」
「あの男は裏で汚い事をしている。君達や従魔の強さは分かっているが十分に気をつけてくれ」
「捕まえないのか」
「色々とやっているのは分かっているんだが、なかなか尻尾を掴めなくてね。国も優秀な者を投入しているが、あの男、隠蔽に関してはずば抜けているんだ」
ギルドマスターは後の方には男爵を、あの男と嫌悪が滲む苦笑いで呼んでいたので、かなり好きではない様だ。
グレンさんもにっこりしていて怖かった。
「それと男爵はフォーチュン・ブルーバードも諦めていないと思うので気をつけてください」
「あの…フォーチュン・ブルーバードって、一体…」
グレンさんにもフォーチュン・ブルーバードを諦めていない男爵に気をつけろと言われ、あの鳥がどうしてそこまでと気になった。
「フォーチュン・ブルーバードは伝説の精霊〝ブルーバード・ブルーフェニックス〟に似た、一目見れば幸運をもたらし、手に入れればどんな願いも叶えるという大変稀少な魔物です」
とグレンさんが説明して「真偽は定かでは無いがな」とギルドマスターが付け加えた。
「それとすまないが、あの鳥をもう一度見せてもらえるか? フォーチュン・ブルーバードか確認したい」
ギルドマスターの言葉に私は兄達に了承を得てから、「はい」と返事してテーブルの上にアイテムボックスから〝青い鳥〟を取り出して置いた。
「………」
「…私も過去に一度、遠目からフォーチュン・ブルーバードの剥製を見ましたが、間違いないかと……マティアス」
「…あぁ。間違いない。フォーチュン・ブルーバードだ」
二人は深くため息を吐いている。
「…フォーチュン・ブルーバードはランクSS級で名や見た目と裏腹に狂暴過ぎて生け捕りは無理なんです。もしも手にすれば剥製にされるのですが唯一、剥製を所持しているのは今はザイフィリア帝国という国だけです」
「昔、グレンとザイフィリア帝国の皇宮に招かれた事があってな。その時こいつの剥製を見た。確かあの時、男爵もいたはずだが…」
「えぇ、いましたね。遠くからですが食い入る様に見ていましたよ。…とても不快でした」
グレンさんの圧の笑顔に固まってしまう。
「おい。グレン」
「すみません。つい…」
直ぐにグレンさんの笑顔から圧だけが消える。
まるでクリスの威圧のようだと思いながら、謝るグレンさんに引き攣った笑顔で答えた。
私とグレンさんのやり取りを呆れ顔で見ていたギルドマスターが真剣な表情で兄達に向き直る。
「それで、このフォーチュン・ブルーバードはどうする?」
「「………」」
「もし、持て余すというなら……王家に献上してはどうだろうか」
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