『変にゃ〝とっと〟捕まえたにゃ』
標的を変更してから二日後、私達はやっとマジックレアバードを見つけた。
それまでの間、ゴーストマウスを見つけても直ぐには討伐せず、マジックレアバードが来るまで遠くで身を潜めながら待ち続けるのを何度も繰り返した。
途中、チッチャ達が我慢できずに二、三度ゴーストマウスに突撃をしたが、なかなかマジックレアバードに出会うことができなかった。
しかし、とうとうマジックレアバードが出現し、今現在、討伐中である。
なんだかんだと言っても、やはり初めて遭遇する魔物だけにチッチャ、チャッチャ、ジルを心配をするが、それは考えすぎだったようだ。
「うわー、もうあんなに倒しちゃってる」
今回、周りには結界を張らず討伐中なのだけど、マジックレアバードはマクシミリアンさんやギルドマスターの言った通り、一度攻撃をすると途端に対象をこちらに切り替え、襲いかかってくる。
その上、チッチャ達に恐怖したゴーストマウス達は、結界を張っていなかったせいで蜘蛛の子を散らす様に逃げていった。
マジックレアバードは自分達の獲物が逃げた事に怒り、その怒りの矛先をよりこちらにぶつけてきたのだ。
ほとんどのマジックレアバードがチッチャ達に向かうのだけど、たまに離れて見守ってる私達の所へ数匹程来るが、私が弓を構える前にクリスが倒してしまう。
クリスは即死魔法が効かないので固有スキル【魔眼(威圧)】を使う。
すると、あら不思議。
クリスの視界に入ったマジックレアバードが空から、ぽとりぽとりと落ちてきたので確認すると全て死んでいた。
クリスの威圧がすさまじ過ぎて心臓が止まるらしい。
レベルが上がる毎に威力が増しているようで、これ以上になるとどうなるのだろうか…。
…考えるのはやめておこうかな。
そして、クリスの視界からは遠いマジックレアバードも何故か急に落ちてくる。
よく見ると胴体に直径4㎝程の穴があいていた。
「よし。上手くいったな」
「えっ!? これ、蒼兄さんが? どうやって?」
蒼兄さんは私の少し離れた隣にいたけど、魔法は勿論、武器を構えた様子もなかった。
「これだ」
と言って見せたのは、手のひらの上の小石だった。
「これ…小石?」
「ああ。これを風魔法で飛ばしたんだ」
「でも魔法は効かないんじゃないの?」
「魔法はな。だがこれはただの小石だ。土魔法で作った石は効かないが、そこら辺で拾った石なら普通に物理攻撃だ」
風魔法も小石に魔法で作った風を纏わせず、飛ばすだけの原動力にしただけだとか。
そんなことが出来るなら、もしかしたらウォルターさんも、こんな風に倒したのかなと思った。
私が物思いに耽っているうちに、どうやら討伐は終わったようだ。
皆、魔法が効かないので魔眼を使ってるのかなと思っていたけど、スキルの身体強化で戦っていたみたい。
場所は森の中だからマジックレアバードもそんな高くは飛んでいなかったが、チッチャ達も同じ高さまで飛び上がっていた。
今日の戦果はゴーストマウスが9匹、マジックレアバードが48匹だった。
ゴーストマウスは大部分は逃げたけどマジックレアバードは殆どは逃がすことなく討伐に成功した。
マジックレアバード討伐も遭遇もこれが初めてなので、この数が多いのか少ないのかは判断がつかない。
また兄達と話し合い、ゴーストマウスはそれぞれのアイテムボックスにここ数日で減ったり増えたりで15匹づつと今回の9匹で、三人で18匹にして一気に売ることにした。
マジックレアバードは各自16匹で分けてアイテムボックスに、そしてマジックレアバードは48匹を隠さずギルドに報告をする。
実はマクシミリアンさん達がマジックレアバードを討伐した日の翌日の朝、ギルドマスターが私達のテントへやって来て、こんなことを言ったのである。
「マジックレアバードの一度の戦闘での討伐数は隠すことなく報告してほしい」
と言われてしまった。
何か色々とバレてる…のかな。
そんなこんなで私達はギルドへ戻りマジックレアバード討伐を報告した。
そして、顔が引きつるグラードさん、微笑のグレンさん、腕組みをするギルドマスターがここ、解体所に揃っている。
「はぁー…またあん時みたいに泊まり込みか…流石に今は身体が持たん…」
「えぇ。ここまで数を見たのはあの時以来です…ねぇ? マティアス」
「………」
なんだか、あまり声を掛けれる雰囲気でもないし、討伐数も信じてくれたようなので、私達はそそくさと解体所を後にした。
◇◇◇◇◇◇
それから私達はマジックレアバードと遭遇したり、しなかったりで、まぁまぁ順調に過ごしていた。
だけど、ここ最近チッチャはマジックレアバードを討伐しているのに少し落ち込んでいる。
理由は討伐数や遭遇数でギルドマスターの討伐最高記録が気になるらしい。
といっても討伐後にマジックレアバードの数を見て、しょぼーんとしちゃうぐらいなんだけど。
その姿が可愛くて抱きついて、よしよしすると元気になってくれる。
―――そして…ついにその日がやって来た。
「もうそろそろ三週間目になるから、これが最後だな」
実は今、マジックレアバード討伐の最後になるであろう三週間目の今日、私は最後の日だからどうしてもと蒼兄さんにお願いをして〝深淵の森〟に来ている。
ギルドマスターからは暫くは深淵の森には入るなとは言われていたが、三週間も経ったし良いだろうと思ってしまったのだ。
蒼兄さんにはダメ元でお願いしたけど、最初こそ渋っていたものの意外とあっさり許可が出て、不思議に思ったが直ぐに心の済みに追いやったのだった。
最後のマジックレアバードの群れは大群で、それでも最高討伐数は超えることは出来なかった。
私は今日が最後だからとジルを側に置き、クリスを討伐メンバーに加えた。
クリスもジルが私の側にいるので安心して討伐してくれていた。
この最後の日、私は色々と今までと違う事をした。
でも、それが禍したのか…。
そして討伐も終わるといつもなら討伐後に元気がないチッチャが、興奮しながら戻ってきた。
『麗ねぇちゃ! 見てにゃ!! 見てにゃ!!』
「わわっ ちょっと、どうしたの?!」
体当たりのようなスリスリをするチッチャの口元を見れば、青い何かが咥えられている。
『変にゃ〝とっと〟捕まえたにゃ』
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