標的変更
「……ギルドマスター…?」
私が驚きのあまり目を見開くとギルドマスターは不意に目を附せ視線を外す。
「そ、ギルマスだよ。当時から、もうこの記録は誰も抜けないって言われてたらしいよ」
確かに、今はギルドマスターをしていて冒険者はしていなさそうだけど、未だ衰えていないだろう身体を見れば納得がいく。
「す、凄いですね。えっと…2年前ですか」
「いや…14年前だ」
「えっ!?」
「僕らが3歳の頃だよ」
「あはは、グロウがバブバブ言ってた頃か」
「なっ! 言ってない!!」
グロウ君とヨアヒムさんの恒例のじゃれ合いが始まる。
「グロウは兎も角、3歳のレイちゃんはさぞかし可愛かったんだろうねぇ」
ヨアヒムさんが目を細め微笑めば、横から殺気が飛んでくる。
「ふふ…こわい、こわい」
大して怖くないのに怖がったふりをするヨアヒムさん。
兄達の殺気をするりと上手くかわしている様だ。
ギルドマスターも兄達の殺気を物ともしないがヨアヒムさんはギルドマスターとは、また何か違う感じがする。
それと、まだギルドマスターにマジックレアバードの討伐の話を聞きたかったが、ギルドマスターはあまり昔の話をしたくは無さそうなので、何となくその場はグロウ君とヨアヒムさんのじゃれ合いで終わった。
勿論、ヨアヒムさんの圧勝だった。
◇◇◇◇◇◇
訓練場のテントに戻るや否や、チッチャが興奮を押さえられずに私に突進してきた。
大きさが大きさなので避けることもできず、そのまま後ろへと倒れる所を剛兄さんが支えてくれるがチッチャと剛兄さんに挟まれる形となる。
「ぐぇ」
蛙のような声が出てしまい、蒼兄さんに「何やってんだよ」と言われるが、これは仕方無いと思う。
チッチャのこれは正確には突進ではなくて、本人?はスリスリのつもりなのだ。
『麗ねぇちゃ! 麗ねぇちゃ!』
「チッチャ、どうしたの?!」
『僕、あの〝とっと〟が欲しいにゃ!!』
「〝とっと〟って、マジックレアバードのこと?」
『うんにゃ! それにゃ!』
『もう大変だったんだぞ。こいつ、あのでっけぇ鳥にいつかぶり付くかヒヤヒヤもんだったぜ』
『とっとは欲しいけど、他所の獲物には興味にゃいよ。死んでるし』
先程からずっとソワソワしていたのは、このせいだったのか。
特に皆、チッチャがと言っているが、どうやらチャッチャやジルやクリスも気になっているみたい。
「じゃあ、次からはマジックレアバード狙ってみる?」
『『『『賛成[にゃ]!!』』』』
それから、酒場の食事だけでは足りないクリス達に親子丼をお腹いっぱい食べさせて今日も早めに就寝する。
こうして、私達は標的を変更する事となった。
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