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漆黒のヴァルキュリア  作者: 月之黒猫
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マジックレアバード討伐最高記録


「レイちゃん、大丈夫?」


 私は少しの間、固まっていたらしくヨアヒムさん達を心配させてしまったようだ。



「だ、大丈夫です! その…思っていたよりマジックレアバードが大きかったので…」


 目の前にあるマジックレアバードは、私が抱えきれない程の大きさだった。

 きっと羽根を広げると4mは優に超すだろう。


「想像してたのと違った?」


「うん。なんか、こう…小さめの可愛いのかと思ってて…」


 グロウ君に問いかけられ、身振り手振りで伝える。

 スズメと言わずともカラスとかニワトリ程度の大きさだと思い込んでいたので、足元に横たわる元の世界のコンドルよりも遥かに大きなマジックレアバードに驚愕する。



「ゴーストマウスを獲物にするぐらいだからな。まぁ、別の話によるとゴーストマウスより大きな獲物を鷲掴みにして飛んでいったという事例もあるらしい」


 と、マクシミリアンさんが教えてくれた。




 私がマクシミリアンさんの話を聞きながら、まじまじとマジックレアバードを眺めていると突如、ギルドマスターのいつもより低い声が辺りに響く。


「どうやら私の考えは杞憂に終わったな」


 なんだか疲れた様子のギルドマスターが二階から降りてきて、マジックレアバード見下ろし言った。



「うわぁ…ギルマスなんかお疲れ」


「何故だか知らんが、最近仕事が減らなくてな」

「貴方が頻繁に逃げ出しているからでしょう? そうでなくても異変で仕事が増えてるのに…」


 ギルドマスターがグロウ君に不満を漏らすが、すかさず現れたグレンさんが突っ込みを入れると、ギルドマスターが呻いた。



「あー…兎に角だ。皆、聞いてくれ」


 ばつが悪そうに頭を掻きながら低いのによく通る声で喋りだす。


「マジックレアバードが出た以上、ゴーストマウス討伐の難易度が上がる。C級以下の個人、パーティーは以後、マジックレアバードが出現した場合は手を出さず討伐を中断とする」


 冒険者達がガヤガヤと騒ぐ中、「でもマジックレアバードはゴーストマウス補食中は人が目に入らず夢中になると聞いた」「俺も聞いた。なら夢中になってる間に倒せば問題無いだろ?」とヒソヒソと話す者達がいる。


「確かに、マジックレアバードは人を気にせずゴーストマウスを補食しようとする。だがそれはこちらから攻撃をしなければの話だ。…マクシミリアン、どうだった?」


「ギルマスの言う通りだ。一度でも攻撃を仕掛けると、途端に対象が人に向く」


 ギルドマスターの問いにマクシミリアンさんが答えると引き続きギルドマスターが話を続ける。



「そういう事だ。それも彼奴らは普段は個々で活動するくせに、この時だけは尋常じゃないくらいの連携攻撃を仕掛けてくる。下手をすれば数十匹から総攻撃を受けるぞ」


 数十匹のこんな巨大な鳥から総攻撃とか想像したら、やっぱり怖い。


「皆、分かりましたね。時には上級の経験者でさえ、命を落とすこともあります。下級の者や未経験者はマジックレアバードに遭遇次第、即離脱してください」


 グレンさんが微笑みながら念を押すと、ギルド内の騒いでいた冒険者達が一斉に緊張感に包まれ押し黙る。

 そして何故かギルド職員どころかギルドマスターでさえ緊張しているように見える。


 あの感じだとギルドマスターは無意識に緊張しちゃってるんだろうなぁと思った。







 それから冒険者達は散り散りとなり、マクシミリアンさん達は解体所へ向かった。

 あの大きなマジックレアバードをどうやって運ぶのかと見ていると、グロウ君が鞄を開けたかと思うと吸い込むようにマジックレアバードを入れてしまった。


 あれが所謂マジックバッグというやつだろうか。



 その後は酒場のいつも場所でマクシミリアンさん達と食事をして、今、私達は果実水でマクシミリアンさん達はエール、また何故かいるギルドマスターは水 (仕事中だから)で食後のお茶?の最中だ。



「でも、皆さん凄いです。あんな大きくて怖い魔物をたくさん倒しちゃうなんて…」


「はは…レイの従魔だったら、もっといっぱい倒せるよ」


「そうだねぇ。レイちゃん達ならマジックレアバードの討伐最高記録も抜けるかもね」


「討伐最高記録ですか?」


「一回の戦闘での最高討伐数、出現期間中の遭遇回数と討伐総数、その全てを一人の男が保有している」


 マクシミリアンさんの話に驚いていると、グロウ君が因みにと「一回の最高討伐数が86匹、遭遇回数17回、討伐総数724匹だよ」と教えてくれて、更に驚いてしまった。


「そ、それを一人で…凄い…」



「その凄い人が身近にいるんだから、ホント、驚きだよねぇ」


「えっ?」



「君の()()()()にいるよ」



 ヨアヒムさんの言葉に固まり、マクシミリアンさんの言葉で、ゆっくりと首を後ろに動かした。



 エメラルドグリーンの瞳と視線がかち合う。





「…昔の話だ」










お読み頂きありがとうございました。

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