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漆黒のヴァルキュリア  作者: 月之黒猫
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予感


 どうやら12年に一度しか出現しない筈のゴーストマウスという魔物が、2年しか経っていないのにも関わらず現れたことにより冒険者達は沸き立っているようだ。



「12年に一度の筈なのに、また直ぐに現れたから皆さんあんなに張り切ってるんですね」


「んー…そういう訳でもないんだよね」


「違うんですか?」


 そういう訳じゃないと言うヨアヒムさんに気になったので、もう少し聞いてみる。



「うん。確かにゴーストマウス()珍しいけど、実は皆の狙いはゴーストマウスじゃないんだよ」


「??」


 私が首を傾げているとヨアヒムさんは、相変わらずな笑みを崩さず話を進める。



「マジックレアバード」


「マジック…レアバード?」


 ヨアヒムさんによれば、ゴーストマウスは確かに珍しいが、それほど旨味のある魔物じゃないらしい。

 強くもなく倒しやすいが素材も取れないし、肉も人が食べるには適してはいないが、その大量発生するゴーストマウスを狙って現れるのが、これまた珍しいマジックレアバードだという。


「じゃあ、皆さんはマジックレアバードの方を狙っているんですか?」


「まぁ、そうなるね」



 そこに、椅子に座り直したグロウ君が話に加わる。


「でも確か、ゴーストマウスも竜騎士団に結構言い値で売れるんじゃなかったっけ?」


「あれは騎竜には良い餌だし、需要がない訳じゃないんだけどねぇ」


 とヨアヒムさんが「でも…」と続ける。



「マジックレアバードはランクBで初心者にはキツいけど肉は極上、その上、取れる素材はBランクの魔物と思えないレア素材だからね。天秤にかける迄もないよ」



 竜騎士団とか騎竜とかワクワクワードが飛び出したが、これは今度聞いたほうが良いかな。


「どんな素材なんですか?」


「んー、色々と取れるんだけど一番は羽根かな。マジックバリアの効果あって下位魔法程度なら完全に防ぐことが出来るんだよ」


 マジックレアバードは無駄なところが殆ど無いらしく、骨や嘴にも羽根には少し劣るがマジックバリアの効果、血と内臓はマジックポーションの材料に、お肉も魔力回復の効果があり携帯用干し肉にしたら、出先で直ぐに使用できて重宝するのだとか。




 ヨアヒムさん達の話を聞いていたら、いつの間にかギルドホールも酒場も随分と賑わっていた。


「また仕事が増える…」


 ため息と共にボソりと聞こえてきた声の主はギルドマスターだった。


 ギルドマスターは私達の後ろの酒場のカウンター席に座り、お酒を飲もうするがギルド職員さんに怒られてお水を渡されている。


 渋々お水を口にするギルドマスター。



「でもいいじゃん。ゴーストマウスが出たらマジックレアバードも来るしさ」


「そうとも言い切れんぞ」


「え、何で?」


 グロウ君の言葉にギルドマスターは眉をひそめて答えた。


「それはマジックレアバードが現れるかどうか…ってことだな」


 先程まで難しい顔して考えて込んでいたマクシミリアンさんの言葉に、ギルドマスターが頷き話を続ける。


「今までゴーストマウスが12年置き以外に現れたと言う話は聞いた事もない。無論、過去の資料にも記されてはいなかった。これはかなりの異常事態だと考えていい」


「んー…もしかしたらマジックレアバードは来ないかもってことかぁ」


「まぁ、覚悟はしておいても良いかも知れんな」


 残念そうというか、つまんないという表情のヨアヒムさんを横目に、私は疑問に思ったことを誰にともなく聞いてみる。



「あの、マジックレアバードも12年置きにしか現れないんですか?」


「いや、マジックレアバードは滅多に遭遇しないだけで常にはいるんだ。生息地は深い森の奥になら、どの地域にも生息している」


 と、マクシミリアンさんが教えてくれた。

 他にも、この魔物は通常は一羽で行動していて、人の気配で直ぐに逃げてしまうとか、動きが素早く自身の攻撃時は飛びながらの魔法攻撃でこちらの攻撃もかわすことが殆どなのだという、凄く厄介な魔物らしい。


 それがゴーストマウスが出る時期にはマジックレアバードも集団で行動し、人がいても逃げずにゴーストマウスを補食に来る。


 それでこのギルドの賑わいだ。




 私も何だか気になるし、クリス達も寝ていたり遊んでいたりするが、皆しっかり聞き耳を立てているのでマウス狙いだろう。


 気持ちは今からワクワクしているが、でもちょっと違う感じもする。



 よくは分からないけど……。

 嫌な予感…というか、なんというか、ワクワクの中に微かなモヤモヤがあった。







 でも、まさか()()()()()()()()()()()()()()()()なんて今の私には想像もつかなかった―――。












お読み頂きありがとうございました。

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