忍び寄る異変
マクシミリアンさん達の話を聞くため席に着く。
クリス達はいつものように私達の後ろの壁際で大人しくしてくれる。
「それで、オーク討伐の話だったな。まぁ、結果を見れば大きな被害が出る様なものではなかったんだが…」
「何かあったんですか?」
マクシミリアンさんが微妙なところで話を切るので、少し突っ込み気味に聞いてみる。
「あぁ、オークの数も通常より少し多いぐらいで何も問題は無いんだが、妙に引っ掛かってな」
「引っ掛かる…」
ぼそりと呟いた私にヨアヒムさんが話を続ける。
「そうなんだけど、森を調べても遺跡を調べても、目ぼしい成果がないんだよねー」
「遺跡?!」
私の食い付きに驚く【深紅の薔薇】の面々と、顔をしかめる兄達。
それにも気づかずオークよりも遺跡に興味が出てしまい、身を乗り出して質問をしてしまう。
「遺跡ってどんな遺跡なんですか!?」
「レイちゃんはそんなに遺跡が好きなの?」
「えーと、まぁ…ははは…」
遺跡も好きだけど、遺跡といえばやっぱりダンジョンだよね!
「その…ダンジョンなんてあるのかなって…」
「遺跡って言っても英雄時代に造られた数ある砦の中でも小さめのものでダンジョンもないよ」
グロウ君によれば何百年も前の英雄時代、大陸中に大小の城や砦が数多くあったんだけど戦争で破壊され、今ではほとんどが遺跡なんだとか。
「破壊を免れて普通に人が住んでるのは極僅かで後は廃墟なんだけど、廃墟は盗賊が根城にしていたり希に魔物が巣くってる事があるから、むやみに近づくのは危険だからね」
「グロウ君、詳しいんだね」
「あ、うん。小さい頃、シスターから色々聞いてたから…」
(そっか、ダンジョン無いのかぁ…残念)
「…で…レイ、も、もし良かったら近くの…ダンジョンに…」
「ん…グロウ君、何か言った?」
「だ、だから…その…」
「「…………」」
「―――いやっ、何でもないよ…」
何か言おうとしているグロウ君が一瞬、言葉を詰まらせると何でもないと黙ってしまった。
(グロウ君、一瞬、私の横の兄達に視線が行ったような…気のせいだよね…うん。気のせい気のせい)
その後は、私達の受けた依頼の話になった。
「へー、じゃあアビスブラックボアもフォレストグリーンサーペントもジャイアントホーンラビットも全部レイちゃんの従魔が?」
「は、はい…」
妖しい微笑でヨアヒムさんが聞いてくるけど、これ、また私が倒したと思ってるよね。
本当にチッチャ達が獲ってきたのに…ここは笑ってやり過ごすしかない。
「はは……」
「「「「………」」」」
【深紅の薔薇】の皆さんが、心配なのか疑いなのか微妙な表情で見つめ返してくる。
その最中、急にギルドホールが騒がしくなってきた。
「どうしたのかな?」
「僕が見てくるよ」
私の問いにそう言うとグロウ君が飛んでいくように見に行き、ちょっとして直ぐに戻ってきた。
「グロウ、なんだった?」
「マクシミリアン、大変だよ! ゴーストマウスが出たって…っ」
〝マウス〟の響きにクリス、ジル、チャッチャ、チッチャが一斉にこちらを見るとグロウ君達に緊張が走る。
「ゴーストマウス…ですか?」
「あ、あぁ。ゴーストマウスは普段は見ることのない魔物で、本来なら12年置きに大量に姿を現すんだが…」
マクシミリアンさんは、またも微妙なところで話を切る。
私が不安げにしていると、マクシミリアンさんは少し困ったように微笑むと、ため息混じりに話を続けた。
「…前にゴーストマウスが出たのは2年前なんだ」
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