閑話 悪友
よろしくお願い致します。
その日、その男は冒険者ギルドのギルドマスター、マティアスに呼ばれていた。
ギルド職員も皆、帰るであろう時間にその男は冒険者ギルドの扉を潜る。
案の定、今日もギルドに泊まり込むマティアス以外の最後の男性職員がまさに帰る所だった。
「す、すみません。あの…冒険者ギルドは…」
「分かってるわ。マティアスに呼ばれてるのよ」
それを聞くとギルド職員は「でしたら…」と頭を下げて帰路に就いた。
しんとするギルド内にほんの微かに感じる気配をたどり、行き着いた先は酒場。
そこでマティアスは酒場のカウンターでグラスを傾けていた。
「独りでやってるの? 辛気くさいわね」
「ならお前が付き合え」
「いやよ。カワイイ子なら兎も角アンタとヤるはゴメンだわ」
「酒の話だ!」
「分かってるわよ」
「全く…変わってないな」
マティアスは酒をついだグラスをアランの前に置いた。
「うふふ、ありがと。って、ここの主はまだ帰ってないの?」
「あぁ。料理長なら王都に酒の買いつけに行ったきり、まだ帰らん」
「相変わらずねぇ。そういえば、どっかの国の商人が珍しいお酒を売りに来たって言ってたわね」
「折角、かわいい子達が来てるのに」とアランの不穏な呟きをマティアスは無視する。
「…で、彼らはどうだった?」
「やっぱりその事ね。最高だったわよ。グロウちゃんは」
「そっちじゃなくてだな「三兄妹の話でしょ?」
「…不思議な子達ね。勿論見た目も驚いたけど、立ち振舞い、教養、言葉使いの端々に貴族の様なものも感じられるけど、貴族の様に傲慢で高飛車でお高くとまってないのよね」
「後、ソウがいいわね」と言うアランをマティアスは、また無視した。
「それとあの子達が身に付けていた装備品、どれも今まで見たことも無い物ばかりだったの。素材も全くもって検討すらつかないわ」
「やはりそうか…」
「ギルドマスターも大変ね。他にも問題が山積みで。レイの従魔、あれって一様アビスマーダーキャットだっけ? それにあの子達の黒髪黒目の伝説の一族の様な容姿…一体何者なのかしらね……アンタにはホント同情するわ」
マティアスは無言で酒のグラスに口をつける。
「――でも、レイはとってもカワイイ子よね。思わず抱き締めてしまったわ」
〝レイ〟と〝抱き締めて〟という言葉に反応したマティアスをアランは見逃さなかった。
特に〝抱き締めて〟には殺気すら感じられた。
「………」
「今でも抱いた感触が残ってるのよ。あの艶やかな黒髪からは果実の様な香り、乳白色のお肌は弾力があって滑らかで吸い付く様だったわ…」
マティアスの殺気が更に色濃くなる。
「あら、どうしたの? マティアス」
「――っ……いや、何でもない」
殺気は消え何時ものマティアスに戻る。
「何をニヤついている」
「いーえ、別にー…うふふ」
「ともかく上級冒険者でもあるお前にもこれからは色々と面倒をかけるかも知れん」
「どうってこと無いわ。あんな面白そうな子達と仲良くなれるなら喜んでやるわよ」
「…程々にな」
「分かってるってば」
アランは残りの酒を呷るように飲み干すと「じゃあね~」と上機嫌にギルドを後にした。
◇◇◇◇◇◇
「全く…あの様子だとダダ漏れの殺気は無自覚よねー」
ギルドからの帰り道でアランは先程のことを思い返し、軽くため息を吐いた。
「…あのマティアスがああなっちゃうなんて…でも…もしかしたら彼女なら……」
――彼を救えるかしら――
お読み頂きありがとうございました。
次回は人物紹介を投稿しようと思っております。




