お試し
よろしくお願い致します。
蒼兄さんが母の勢いに押され、転移魔法陣を試すことになったのだけど他に誰が試すかと聞くと剛兄さんと父は辞退、『僕も行く』と私の横に座り一緒に行く意思を見せるのはクリス。
「ほら、魔法陣使うからお前達は離れてろ」
蒼兄さんがしゃがみ込みシオン達を退かそうとするがシオンとカスミは魔法陣の上をピョンピョンと逃げ回り、アジサイは蒼兄さんの顔目掛けて飛び付いた…が顔に到達する前に敢えなく捕まっていた。
「それじゃあ、庭に転移させるからな」
「えぇ~、蒼ちゃん、町じゃないのぉ?」
「町は駄目」
「そこを何とか」
「駄目ったらダメだ」
「麗ちゃ~ん、蒼ちゃんが怒るぅ」
私は怒る蒼兄さんから逃げる母に盾にされながら「はいはい」適当に母をあしらいつつ魔法陣の上に乗った。
結局、魔法陣を試すのは私と母、クリスにシオン、アジサイ、カスミだけで、ジル、チャッチャ、チッチャとケルベロス、エクレアは庭で待機中だ。
「じゃあ、始めるぞ」と蒼兄さんの言葉と共に魔法陣が光り魔法陣の外にいる剛兄さんと父、その父に抱きかかえられているヨモギとサクラが光で見えなくなっていったと思ったら…。
「あら…もう終わり?」
「…みたいだね」
光が収まると目の前にはジル達がいて場所は庭、ウッドデッキには大きな欠伸をしているおたまがいる。
転移魔法は成功したようだけど母はシオン、アジサイ、カスミをかかえながら呆気なく終わった転移魔法にがっかりしていて、でもそれとは正反対にシオン達は母の腕の中で興奮してワキャワキャして喜んでいた。
それから、父と兄達が庭に来ると母が蒼兄さんに「こう、もっと面白くならないの?」と魔法陣に文句を言っている。
どうやら母は魔法陣をアトラクションだと思っているのか蒼兄さんに何か色々と注文をつけているみたい。
まぁ、蒼兄さんは聞き流してるけど。
暫く魔法陣の要望を述べていた母だったけど、突然思い出したかのように「あっ! そろそろ晩ご飯ね。みんな何が食べたいのかしら?」と言い出したはいいが結局は「なんだか、すき焼きが食べたいわ」と自分で決めて準備のため忙しなく家に入っていった。
蒼兄さんの長いため息が聞こえた…―――かと思えば、今度はシオン達に群がれている。
『ソウちゃ、さっきの魔法またやりたい』
『やりた~い』
シオンとカスミがピョンピョンしながら訴え、アジサイは蒼兄さんの足にしがみついている。
ヨモギとサクラもぷるぷるしているので、同じく遊びたいようだ。
「あーっ、もう分かったから纏わりつくなって!」
蒼兄さんが諦めると庭の端と端に先程より小さめの魔法陣を出すと。
『『『『『わーい』』』』』
シオン達は魔法陣を見るや否や駆け出していき、楽しそうに遊び始める。
魔法陣は同時に乗っていると発動はしないらしく、片方が降りると発動して目の前に向こうの魔法陣の相手が現れる。
それがとても面白いのか、五匹で行ったり来たり転移して暫くすると、いつの間にかチャッチャとチッチャが加わり遊んでいた。
なんだかんだとブツブツ言いながらも蒼兄さんは母から「晩ご飯よ」と声をかけられシオン達が遊び終わるまで、まるで保護者のように片時も目を離すことはなかった。
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