転移魔法
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「えっ! 転移魔法陣?!」
聞き間違いでなければ転移魔法陣、そう聞こえた。
「で、でも、転移魔法って……」
『大丈夫なのですよ。この魔法陣はどうやらこのユグガルド内だけを往来可能な魔法陣のようなので転移魔術のように災害の心配はないのです』
部屋の入口からエクレアがトテトテと魔法陣の前まで来て覗き込む。
『とても美しい魔法陣なのです。これ程、複雑難解で完成された魔法陣は神の物と匹敵するのです』
「そいつはどうも」
エクレアが褒めると蒼兄さんがぶっきらぼうに返した。
「それに転移魔術と転移魔法は至極似ているようで、だがその実、構造は全く違う物なんだ。だからエクレアの言うように心配はない」
私達がそんな話をしているといつの間にか開け放たれている部屋の入口からは、クリス達やシオン達がこちらを覗いていて後ろの方にケルベロスもいるようだ。
そして少し目を離した隙にシオン、アジサイ、カスミが魔法陣の前まで来たかと思ったら、魔法陣の上に乗りぴょんぴょんと飛び跳ねて遊びはじめてしまった。
ヨモギとサクラは魔法陣の近くでぷるぷるしながら心配そうにシオン達を見ている。
「シオン、アジサイ、カスミなにやってるの! 危ないからこっちに来て!」
「大丈夫だ。俺が発動させない限りひとりでに動くことは絶対にない。後、この魔法陣一つでは意味がないから心配するな」
「一つでは意味がない?」
「この魔法陣は二つ揃わないと意味がないんだ。俺達が何時でも家に帰って来れるように一つここに置いて、もう一つは俺がその場で発動させることになる」
「ってことは蒼兄さんがいないと魔法陣は使えないし、家にも帰れない…ん? でも魔法陣で帰って来ても出かける時はまた森を抜けるの?」
「いや、一度行ったことのある所なら魔法陣をここからでも発動させられる」
それなら家に魔法陣なくてもいいんじゃない? と思ったが蒼兄さん曰く、魔法陣を外に置くと見つかった時が厄介なので外には置かないが家なら問題無いし、置いておく方が魔法の発動も楽らしい。
後、この魔法陣は何をしても消えないのでシオン達が遊んでいても大丈夫とのことで、それには母が「それじゃあ、おもいっきり掃除しても大丈夫ね」と喜んでいた。
それともう一つ、魔法陣を試したのか気になったので聞いてみることにした。
「ねぇ、蒼兄さん、この魔法陣って試したことあるの?」
「あぁ、物で試したが…自分でも試した」
「えっ!!」
「俺は平気だ。なんともないだろう? ふっ……俺の転移魔法陣は完璧だ」
蒼兄さんは当然だという態度で話す。
「まぁ、心配ならもう一度試すが…」
「ううん、心配はしてないよ。蒼兄さんのなら全部大丈夫なのは分かってるから」
「……お、おう」
「でも、もう一度試すなら私やりたい!」
「はい! お母さんもやりたい!」
私が魔法陣を試したいと挙手したら、母が真似して挙手して自分もやりたいと言い出した。
「いや、母さんまで…」
グイグイ来る母を半ば呆れながら蒼兄さんは助けを求めて父を見るが、父は諦めろと言うように首を横に振る。
こうなった母を止められるのは誰もいないのだ。
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