ぶっ壊れスキル
よろしくお願いいたします。
『パクッ―――うまー』
「あっ、チャッチャ!」
テーブルの端にあったハンバーグをチャッチャがパクリ。
「ちょっと大丈夫?! このハンバーグ玉ねぎ入ってるのに…」
『ケットシーは神獣なので、玉ねぎやチョコぐらい大丈夫なのです』
「うーん…エクレアが言うなら、大丈夫なんだろうけど…」
『それに戦乙女の加護を頂いたので絶対大丈夫なのですよ』
私の固有スキル【戦乙女の加護】は《状態異常無効》《取得経験値三倍》《経験値共有》。
状態異常無効のさその中には病、病気も含まれていた。
そして【戦乙女の祈り】《全てを癒す》とだけで、よく分からないので置いておく。
最後の一つ【戦乙女の恩恵】このスキルを使うと私の持つスキルを他者、物に譲渡する事ができるので、家族全員に戦乙女の加護を渡した。
「でも次はテーブルから勝手に取っちゃダメたからね、チャッチャ?」
『はーい』
母がクリス達の食べたい物を次々と出し、皆で嬉しそうに食べているのを横目に、私達も食事を済ませる。
結局クリス達は物凄い量をペロリと平らげていた。
それからは兄達は自分のスキルの検証し、私と母、ジル、エクレア、おたまは女子会と称し、暫し密談。
この間、わらわらと寄ってくるクリス、チャッチャ、チッチャをジルが『女子会だから男の子はダメ』と追い払っていた。
密談の内容?女の子には色々あるのだ、とだけ言っておく。
そしてこの後、母のスキルは完全にぶっ壊れていると思い知らされる事となる。
「さぁ、そろそろ3時のおやつの時間ね」
母がお菓子やスイーツをスキルを使い大量に出している。
「お母さんそんなにスキル使って大丈夫?疲れたり頭痛がしたりしてない?動悸とか息切れは?」
「全然大丈夫よ、疲れどころか、すっごく調子が良いのよ」
「25歳若返ったおかげかしら」
とか言っているけどスキルって魔力とか精神力とか使わないのかな? まぁ私も何度かスキル使ったけど疲れはしなかった。
「さぁさぁ、そんな事よりおやつよ、おやつ」
そんな母の前には美味しそうなパンケーキ。
「お母さん、そのパンケーキって…」
私は気づいてしまった。
そのパンケーキは最近出来た人気のお店のパンケーキ。
先週、母と二人お忍びでその人気店のパンケーキを食した。
だがしかし! 私が頼んだパンケーキは色んなベリーが乗った生クリームたっぷりのミックスベリーパンケーキ。
母のは二種類の桃がてんこ盛りの二つの桃のまるごとパンケーキだった。
なのに目の前にあるのは生クリームにバナナにチョコがたっぷりの、生クリームチョコバナナパンケーキである。
「お母さんもしかして、あのお店一人で行ったの!?」
「一人で行ってないわよ、麗ちゃんと二人で行ったっきりよ」
「じゃあ何で食べてないチョコバナナが出てくるの?」
「あの時ほら、お母さん、桃とバナナで悩んだでしょ?結局桃にしたけど次はバナナが良いなぁと思ってて…それを思い出したら」
「出てきちゃった♪」
食べたこと無いのに出てくる…
写真で見ただけでも出せちゃうの? とか色々考えてると…
「…あの店…行ったのか?…」
「えっ!…ぁ…えーと…」
剛兄さんは無口で表情変えないけどすっごくスイーツ好きなんだよね。
普段は一人で女の子いっぱいのスイーツ店に行けないから(一人で行ったら高身長イケメンの剛兄さんは大変なことになります)私や母とスイーツ巡りをしていた。
蒼兄さんはまた甘い物か、とブツブツ言うけど、じゃあ私達だけで…というと、行かないとは言っていないと結局ついてくる。
蒼兄さんが加わると周りの女子の目が怖いのなんのって(蒼兄さんも背が高く知的系イケメン)私だけだと、それに構わず突撃する肉食系女子がいるんだけど、流石に母が一緒だと来ないんだよね、遠巻きで見てるけど。
「………………」
剛兄さんの無言の圧力が凄い。
見兼ねた母が色んなパンケーキをどんどん出してくる。
「剛ちゃん、これでご機嫌直してね」
テーブルに乗りきらない大量のパンケーキに無表情の剛兄さんが喜んでいる。
分かるんです。妹だから。
「…ってことで、母さんのスキルは極秘、絶対に周りに知られないようにするぞ」
蒼兄さんの言葉に皆で頷く。
あれから兄達が母のスキルを調べたのだが、これがとんでもないスキルだった。
写真でしか見たこと無い物も出せる、それどころか名前も何かも知らない物でさえ出せる。
蒼兄さんが何か分からない言葉を母に教え、出してみてと促すと母は何か民俗料理を出したのだ。
母はどこの民俗だとか、ましてや料理だということすら知らなかった。
その後も母が名前もなんなのかも分からない物を正確に出していた。
後、存在しない物、名前がデタラメな物は出なかった。
意味が分からなかったので途中で考えるのをやめた。
スキルがいい仕事をしてるのを理解するのにとどめる。
これがぶっ壊れスキルなんですね…
そしてまた、とんでもないことが幾つか発覚する。
「…居間の広さがおかしい…」
最初に気づいたのは剛兄さんで、蒼兄さんと部屋を見渡し、ひそひそと話していたのはこの事だった。
それと電気である。
外から供給される電気、もちろん外には電柱、電線は無いにも関わらず電気がつくのだ。
それ以外にも水道、トイレ、お風呂全て正常に動いている。
「こういう時こそ鑑定じゃない?」
「もう鑑定してる」
さすが蒼兄さん。
鑑定結果は魔道具と出た、家電製品もキッチン、お風呂、トイレも全部魔道具だった。
どの家電製品もとい魔道具には綺麗な石の様な物がはめられていた。
もしかしなくても魔石だ。
エクレアによると、やはり魔石は魔物から取れるとのこと。
ランクが高い魔物からしか取れない貴重な物で、しかも全ての魔道具にはまっている雷の魔石は今は取れないらしく、世に出れば国王の献上品だという。
「これ、知られちゃいけないよね、それに使ったら減るだろうから、今後どうやって手に入れ「父さん…何で雷の魔石二つ持ってんの?」
私の言葉を遮った蒼兄さんの声に振り返ると、父が両手に魔石を持っている。
先ほど私は父に雷の魔石を一つ渡した。調べるだけだったので魔石は一つしか取り出していないのに父は何故か雷の魔石を二つ手に持っている。
嫌な予感がする。
「いや、手に入らないなら母さんのように出せたら便利だな、と思ったら…できたみたいだ」
結果、父のスキルもぶっ壊れてました。
作った方の魔石も難なく使え火の魔石、水、風、土、氷の魔石も作り出せた。
氷の魔石も最近はもうほとんど取れず、これも見つかれば国宝級らしい。
父のスキルは母のスキルとほぼ同じだった。
そう、ユグガルドの物が出てくるのだ。
エクレアが言う物、薬草やポーションなんかを出していた。
因みに父も母も武器や防具といった物騒な物は出なかった。
そこは剛兄さんの担当なのだろうか。
「これで父さんも極秘だな」
私達、兄妹は頷きあった。
「後、さっき剛兄さんが言っていた居間の広さがおかしいって、どういうこと?」
確かに…広くなってる? こういう時、鑑定ってどこに使えばいいのかな? 鑑定を使いながら見渡せば…あぁ…壁とか天井とか色々入ってくる。
家全体で見るのかなと思った瞬間…
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【名前】 家
【レベル】 1
【固有スキル】 亜空間 絶対防御