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漆黒のヴァルキュリア  作者: 月之黒猫
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ケルベロス

よろしくお願いいたします。



 六つの鋭く光る眼が睨みつけ、三つの口からは大きな牙が覗く。

 しかし、身体は一つしか無い。


 一つの身体に三つの首……。



 ケルベロス。




 昔からゲームが大好きだった私は格闘やアクションゲーム、特にRPGが好きでそれが高じて世界中の神話に興味が出て色々調べたりもした。


 

 目の前にいるのは鑑定を使わずとも間違いなくケルベロスで

、一応鑑定で調べてもやはり同じ答えが返ってくる。


 それにしても怪我がかなり酷そうだ。


(出血が凄いし早く治さないと手遅れになっちゃう)



「えっと、傷を治し…」



――…甘い匂いがするぅ――



 私が近づき傷を治したいと言い終える前に、声が聞こえて気がつけば私は彼らに押し倒されていた。




「麗!!」

「!…」




「―――あははっ、ちょっと…そんなに舐めちゃダメだって」



「「………」」



 私は今、右のケルベロスに物凄い勢いで舐められている。

 兄達は飛んできたけどクリス達はケルベロスが私を傷つけないのを分かっていたかの様に微動だにしていなかった。


 私を舐めているのは右側のケルベロスなのだが、たまに真ん中と左側のケルベロスもベロリと舐めてくる。



「…大丈夫か」

「うん…なんとか」


 ケルベロスも落ち着いたのか、真ん中、左、右と最後にベロリと一舐めして大人しくなった。

 蒼兄さんに大丈夫かと聞かれ、うんと答えるが正直ケルベロスのよだれでベトベトなのであまり大丈夫ではない。


 だけどケルベロスが大人しくなった今がチャンスと、よだれまみれの身体を放っておきケルベロスに手を伸ばす。



「安心して。怪我治すだけすだからね」


『『『………』』』



 ヒールを使うとケルベロスが金色の光に包まれる。

 見る見るうちにケルベロスの顔や身体の小さな傷、そして一番酷かった横腹の傷も綺麗に治ったようだ。




 回復魔法と聖魔法のヒールの違いは回復魔法は普通の白い光だけど聖魔法は金色なので、どちらで回復したのか色で分かってしまう。

 今のところ聖魔法の使い手は次の聖女の出現とお歳を理由に引退した元聖女様と新しい聖女様のお二人だけらしい。


 だから私と蒼兄さんが聖魔法が使えると色々とややこしくなるので、特に私の聖魔法は使用禁止なのだが、兄達も何も言ってこないし、今は他に誰もいないから聖魔法を使う。



「うん。良かった。ちゃんと治ってる」


 後は血で汚れたケルベロスの身体を浄化スキルでキレイにし、ついでに自分の身体もキレイにしておく。



『…先ズハ礼ヲ言ウ』


「えっ?!」


 今まで〝声〟と違い明らかに耳から聞こえてきた声にケルベロスを見やり、兄達の方へと顔を向ける。


 兄達も驚いた表情でケルベロスを見ているので声が聞こえたという事だろう。



『彼らは魔獣ケルベロスなのです。上位魔獣や長い年月を生きた魔獣の中には人語を解し話す者達がいるのですよ』


『ケットシー カ。何故ソナタラガ人間ト共ニイル』


 ケルベロスはエクレアや私の斜め後ろのクリス、後方のジル達を見ている。


『今、私は違うのですが、この者達は彼女の従魔なのです』



『ケットシーガ…?! マサカ…』



 ケルベロスは何かを思案すると彼らの視線が私の方へと集中する。



『……何故 我々ヲ助ケタ』



「…皆さんの、とても苦しそうで…辛そうな声が聞こえて…」


『声…』


「はい。あっ! そうだ。そのもし良かったら、これ…」


 最初の声はお腹が空いたと聞こえたので、きっと声の主は私を舐め回していた右のケルベロスだろう。

 アイテムボックスから袋を取り出すとケルベロス達の鼻がヒクヒクと動いたのを見て〝これ〟だと確信した。


 私から甘い匂いがしたのは多分、昼前に母と作ったこの蜂蜜クッキーのせいだ。



「お腹空いてるんだよね? 良かったら食べ…」



 バクンッ!!



 一瞬、手まで食べられたかと思ったが右ケルベロスは掌の三枚のクッキーだけを器用に口にしていた。

 あまりの早業に悲鳴すらあげる暇さえなく、兄達も私の手を確認し安心しているようだった。


『オイシイィ! モット欲シイヨォ!』

『『………』』


「だ、大丈夫。ちゃんとみんなの分もあるから焦らないで」


 右ケルベロスは蜂蜜クッキーがお気に召したようでおかわりを催促し、真ん中と左も食べそうにそわそわしている。


 急いで木製の器を三つ取り出しクッキーを分け、ケルベロス達の前に置くと勢いよく食べ始めた。

 どうやら、とてもお腹が空いていたようで夢中でクッキーを食べている。




『娘 スマヌ マダ食ベタイ』


 器は三つとも空になっていた。


「ごめんなさい。もう蜂蜜クッキーはないの。でも他のなら…」


 ケルベロス達は甘い物が食べたいそうでパンケーキやシュークリーム、菓子パンなど出すとペロリと平らげて、お腹が満たされ落ち着いたのか大人しくお座りし、こちらを見下ろしている。



「もう大丈夫? ちゃんとお腹いっぱいになったかな?」


『ナッタヨォ』

『…ウム』

『感謝スル……所デ娘ヨ 我々ハ ソナタガ気ニ入ッタ』


「えっ?! 私を?」


『ソウダ ソナタニ ツイテ行キタイ』



『『『我々ヲ従魔ニ…』』』



「本当にいいの?」


 ケルベロス達は頷く。


「……分かったよ。でも従魔じゃなくて家族になって欲しいの」



『家族ゥ?』

『従魔デハナク…』

『ククク…家族 家族カ…面白イ』



 私がケルベロスに触れるとシオン達の時の様に光を放ち、そして光はすぐに収まった。


 ケルベロス達は伏せをして私に顔を近づけた。









『『『主ヨ 今後トモ ヨロシク』』』













お読み頂きありがとうございました。

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