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漆黒のヴァルキュリア  作者: 月之黒猫
31/161

ただいま

よろしくお願いいたします。



「麗ちゃ~ん、お帰りなさ~い」



「お母さん、お父さん、おたま、ただいま!」


「剛ちゃんも蒼ちゃんもお帰りなさい」


「剛に蒼、麗もお帰り」


「…ああ…」

「ただいま」



 ルナティオースの町を出てから家に着くまでほとんど魔物が出る事がなく、家への道すがら依頼対象の魔物が出てくれば狩りながら帰ろうと言う話になったのだが、結局アビスブラックボアもフォレストグリーンサーペントもジャイアントホーンラビットすら遭遇しなかった。




「クリスちゃん達もお帰りなさい。さぁさぁ、みんなお家にお上がりなさいな」



 クリス達みんなを撫でながら家に入ろうとする母に妙な違和感を覚える。


「…ねぇ。お母さん、…なんか前と違くない?」


 なにか違う…というか。


「あらっ やっぱり麗ちゃんには分かっちゃったかしら!」




 私はぐいっと母に近寄る。


「――お肌がぷるぷる…髪がつやつや」


「ピンポーン♪ 正解!」



「お肌がぷるぷるも気になるけど髪がつやつやってどういう事?!!」


 この世界(ユグガルド)に来た時に母は父と若返ったんだけど、私達が町に行く前と後では明らかに違っていた。



「剛兄、わかった?」

「…わからん…」



 色々とハイスペックな兄達もこういう所は苦手の様で気づいたのは私だけらしい。


「剛ちゃんと蒼ちゃんってそういうとこ、お父さんとそっくりなのよね~」



「「「…………」」」



 黙り込んだ黒守家の男達は放っておき、私はその艶やかな髪の秘密を探るため母に詰め寄った。


「うふふ、とにかく一度お家に入りましょ。お話はそれからよ」









「―――で、コレがそれなのよ」


 と言いながら母がテーブルの上にポーションの液体とは異なる色合いの瓶を置いた。

 それを見るなり蒼兄さんが頭を抱えている。


「お母さん、これは?」


「…エリクサーだ」


 蒼兄さんは一言だけ言うと長いため息を吐く。


「せいか~い♪」


 母の声と同時に額に手を当てソファーに背を預け倒れ込む蒼兄さん。




 エリクサー・改《黒守匠の手により作り出された新たなエリクサー。元の効果に加え、混ぜた物の効果を高めることに特化。》



「それで、これ(エリクサー)を化粧水やシャンプーに混ぜて使ったら、お肌ぷるぷる、髪がつやつやになった訳なのね…」


「麗ちゃんも使ってみる? あなたの分もちゃんとあるわよ」


「本当!? ありがとう! お母さん、お風呂いいよね?」


「そう言うと思って、さっき用意しといたわよ」

「さすがお母さん!」


 私は急ぎお風呂に向かうと私の鞄が激しく動き出し勢いよくシオン達が飛び出してきた。



「麗ちゃん! これは何?!」


 私の〝お風呂〟と言う言葉に寝ていたけど飛び起きて出てきたみたい。

 父と母もいきなりのことで驚いて私にくっついているシオン達を呆然と見つめている。


「えーとね、実は…」



 急にシオン達を家族として連れてきても、両親、特に母ついては問題ないと思っていたので安心して二人に経緯を説明しシオン達を自己紹介した。


 現に今…


「ぷにぷにでぷるぷるで可愛い~。本当凄いわ。このぷるぷる具合なんて私なんかより数段上だわ!」


 と、シオン達5匹を抱き抱えて離さない。


 シオン達も両親が気に入ったようで、あっという間に仲良くなっている。

 特にサクラは母に、ヨモギは父に懐いたようだ。


「なんだかサクラちゃんとヨモギちゃんって桜餅とよもぎ餅みたいねぇ」



「………」


「まさかお前、桜餅とよもぎ餅みたいだからサクラとヨモギにしたのか?」


「べ、別にお餅に見えたからとか、そ、そんなじゃないし!」


 蒼兄さんは呆れたように見てくるが、本当にそんなじゃないもん。




 …ホ、ホントにそんなじゃないんだからね!








「それじゃあ私はお風呂に入るけど、シオン達も入るの?」


『『『『『はいるー』』』』』



「あらっ シオンちゃん達もお風呂に入るの?!」


「うん、毎日一緒にお風呂に入ってるの」


「うふふ、じゃあ今度、お母さんと一緒に入ろうね」


『『『『『はーい』』』』』


 ちなみに両親にはすでに【意思疎通】のスキルを渡したので

シオン達と会話が可能。




 母とシオン達が遊んでいる間に私はすでにシャンプーや化粧水と色々な物に父特製のエリクサーを混ぜていた。


「みんな行くよー」


 私は自分の髪がつやつやさらさらになることに期待を膨らませお風呂に急いだのだった。








◇◇◇◇



「はぁ……」


「蒼、どうした?」


「いや…これ以上、麗が…」


「麗がなんだ?」

「………」


 普段、優しく温厚で怒らない父、匠の少し怒気を含んだ声に言葉が詰まる蒼。


 父、匠は麗の事となると、いつもこうなるので驚くことはない。

 が、正直厄介だと皆は思っている。



 蒼は町の事と麗の事、主に麗の事は差し障りなく話した。

 詳細に話すとややこしくなると踏んでの事だ。


 知り合った男が皆、麗に()()()好意的なんて話したらどうなるか、さすがの蒼にも見当をつける事が難しかった。



「麗ちゃん可愛いもんね~」

「………」


「大丈夫だ。俺と剛兄、それにクリス達も麗を守ってる」


「…心配はない…」


「まぁ…剛と蒼がそこまで言うなら…だが、麗に変な虫がつかないよう頼むぞ」


「…あぁ…」

「了解」


『『『『はーい』』』』



 クリス達も元気よく返事をしたのだった。









お読み頂きありがとうございました。

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