孤児院
よろしくお願いいたします。
「……レイを…す…すきにする…レイを……すき……」
あれからグロウ君がぶつぶつと呟きながら全くの上の空になっている。
「あ~、いくらレイちゃんにあんなカワイイこと言われたからって…情けないなぁ」
「まだまだ青いな」
「あぁ。あれは動揺しすぎだ」
「………」
様子のおかしいグロウ君の心配もせずヨアヒムさん、ギルドマスター、マクシミリアンさん、ウォルターさんは広場の休憩所で食事中だ。
因みにギルドマスターは今日もお休みらしい。
グレンさん、お仕事大丈夫かな。
「あの、グロウ君は…」
「アレのことは気にするな」
「大丈夫。きっとレイちゃんをどこに連れて行くかで必死なだけだよ」
ギルドマスターとヨアヒムさんはそんなことを言うがやはり気になってしまう。
クリス達はご飯を食べ終わり人の邪魔にならないように広場の休憩所の木陰で寛いでいる。
私はやはりグロウ君が心配だったので数本の串焼きを手に彼の元に行く。
「グロウ君」
「すっ……」
「す?」
「なっ何でもないっ…どうしたのレイ…」
「グロウ君、まだ何も食べてないんだよね? なにか食べておかないと後で動けなくなっちゃうよ」
「後で…うご…」
「そうだよ。ここで食べておかないとレイちゃんをグロウの好きな所に案内出来なくなるよ。まぁ、その時は俺がレイちゃんを好きにしちゃう「ぼっ僕が連れてくからっ!」
グロウ君は串焼きを受け取ると勢いよく食べ始めて、気づくとあっという間に串焼きは無くなりかけていた。
「グロウ君、おかわりは…」
「いる!」
その言葉を聞き私はおかわりを取りに戻る。
「やっと…頭が切り替わったか…」
「グロウはもっと女慣れさせといた方がいいな」
「アランにお願いしよっか?」
「いや、さらに酷い事になるぞ」
ウォルターさんが珍しく喋ったかと思えばギルドマスターとヨアヒムさんが聞いちゃいけない様な事を言い、マクシミリアンさんがそれにツッコミを入れていたのだった。
◇◇◇◇◇◇
「レイを色んな所に連れて行きたいし、たくさん悩んだけど…結局、最後はここしか思いつかなかった…」
グロウ君にそう言われ連れてこられた場所は孤児院だった。
ここは教会であり孤児院でもあるらしい。
敷地内では子供達が元気に走り回り遊んでいる。
「あらあら、いらっしゃいグロウ君」
「あっ! グロウだ!」
「グロウにーちゃん」
「にーちゃん」
シスターと子供達がこちらに気づき、男の子達が走り寄るがクリス達が目に入るなり急ブレーキで立ち止まり、奥の方では女の子達が固まっていた。
私は子供達を怖がらせたと思い急いでクリス達を下がらせようとする。
「かっけぇ!!」
「ホントにでけぇ!」
「だから言っただろ? 冒険者ギルドのギルマスよりでけぇって!」
「ふっ…」
私は思わず吹き出して笑ってしまい慌てて口を塞ぐ。
「あいつら、冒険者ギルドに来たら少しキツ目にしごいとくか…」
ギルドマスターは不機嫌そうな声色で恐ろしい事を言っているが、子供達を見るその眼差しはとても柔らかだ。
その子供達のクリス達を見る目が怖がるというよりは興味の方が勝るのかキラキラと輝いている。
「みんな、この子達は私の従魔で大人しいから大丈夫だよ」
「…ほんとに?」
「本当だよ」
「近くに行っても大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫。こう見えてこの子達とっても優しいの」
私がクリスとジルを撫でながら話をしていたから少し安心したのか、男の子達がそろりそろりと側までやって来た。
男の子達が側まで来ると人見知りな上、子供が苦手なチャッチャとチッチャは兄達の後ろに隠れてしまう。
大きいから丸見えなんだけど。
クリスとジルは逃げずに私の両側に優雅にお座りをしている。
それを好奇心いっぱいの目で見上げる子供達に私は聞いてみた。
「撫でてみる?」
「「「いいの?!」」」
「うん、いいよ」
一番大きな男の子が、撫で安いよう香箱座りになったクリスに恐る恐る手を伸ばす。
「…もふもふ」
それを合図に後の男の子二人もクリスを撫でだした。
気づくと回りには女の子も他の男の子もみんな集まって来ている。
「耳や尻尾、毛を引っ張ったらダメだよ。とっても大きいけど猫さんと同じく優しく撫でてあげてね」
子供達は皆良い子で優しくクリスとジルを撫でている。
「みんな良い子達でしょ?」
「うん、とっても良い子達だね」
グロウ君は私の隣に来ると子供達を見守りながら話し出した。
「僕、孤児院で育ったんだ。ここの孤児院じゃないんだけどね」
「…そう…なんだ」
少し戸惑う私に優しく微笑みかけて話を続けるグロウ君。
「ここには暇がある時によく来るんだ。遊んでやったり、冒険者の話をしたり…」
その上グロウ君はどうやらここだけではなく各地の町や村、都市の孤児院に行き寄付もしているらしい。
(凄いなグロウ君。日本で平和に暮らしてきていた私からしたら、何だか申し訳なく思ってしまう)
子供達を見守るグロウ君の横顔がとても頼もしく見える。
と思っていたらグロウ君と目が合った。
「――レ…レイ、ど、どうしたの?…僕の顔にな、なんかついてる?」
「ううん? ついてないよ?」
「えっ…じゃあなんで…」
「ふふ、何だかグロウ君が優しくて頼もしいなって思って」
「っ………」
◇◇◇◇◇
「おい、グロウとあの魔獣使いのねーちゃんいい感じじゃね?」
「だな、だけどマクシミリアンさんにヨアヒムさんがいるしな…ウォルターさんだって意外と…」
「そうなんだよなぁ。あの様子だとギルマスもだよなぁ」
「でも、あのお姉ちゃんあんまりそういうこと興味無さそうだよね」
「「えっ?」」
何とも言えない顔でグロウ達を見る男の子達三人。
「うわぁー何だかなぁ…」
「兄貴達のガードも固そうだしな…」
その表情はいつの間にか憐れみに変わっている。
「「「大人って大変だな」」」
子供達に憐れまれている事に気づく者達は誰もいなかった。
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