可愛いワンピース
よろしくお願いいたします。
「起きろ」
「んー…」
クリスとジルのもふもふに挟まれ起きることのできる者は果たしているのだろうか?
「早くしないとギルドマスターが来るぞ」
「…はーい」
何とか魔性のもふもふから抜け出し身支度を始める。
身支度が終わる頃にギルドマスターに動きがあったので、少し心にも余裕ができた。
私達がテントを片付けているとギルドマスターが現れる。
「三人ともおはよう」
「おはようございます。ギルドマスター」
いつものようにギルドマスターに連れられギルドの酒場まで来ると既に【深紅の薔薇】の皆が揃っていた。
マクシミリアンさんに「今日はどこを案内しようか?」と聞かれたので服を見に行きたいと伝える。
「えーと、レイのだから女性物だよな…」
明らかに戸惑うマクシミリアンさん。
「なら俺に任せてよ。レイちゃんに似合う可愛い服を選んであげるからね」
ヨアヒムさんから思わず後退りしてしまいそうな程の妖艶な眼差しで微笑みかけられ、変に上擦った声で返事をしてしまった。
◇◇◇◇◇◇
「――で、またギルマスがいるんだけど…なんで?」
「今までずっと働き詰めだったからな。その分自由に休みが取れるんだよ」
「うゎ…職権濫用……うぎゃー…」
「グロウのくせに難しい言葉知ってんなぁ」
この前のようにグロウ君がギルドマスターにこめかみをグリグリされて悲鳴をあげている。
「イテテ…前は休みなんていらないって言ってたのに…」
「知らんな。それに町に異常が無いか見ておくのもギルドマスターの仕事だ」
「ギルマスにそんな仕事ないし! …って本当はレイが可愛い服選ぶ所を見たいだけのクセに…」
「ああ?」
私達がギルドを出て屋台で朝ご飯を食べる途中で「今日は休みだ」と言うギルドマスターが現れて今に至る。
「さぁ、あんなのほっといて行こうね」
「大丈夫…なんですよね?」
「大丈夫さ。いつもの事だからな」
何かさっきよりも大分強めにグリグリされてるけど…。
ギルドマスターにしたら年の離れた弟みたいな感じなのかな?
確かにグロウ君は同い年だけど凄くワンコっぽいし…。
弟みたいでカワイイよね。
「ここのお店もオススメの一つだよ」
案内されたのは先程紹介されたお高そうなお店よりは大分庶民的な雰囲気で少し安心する。
貴族御用達の高級店に連れていかれた時は本当に焦った。
もちろん全力でお断りしましたよ。
町の北側は高級住宅やもっと奥には貴族達のお屋敷があり、北通りは高級なお店が数多く並んでいて通りを奥に行くほど高級になっていく。
今いるお店は広場の入口近くなんだけど最初からここに案内して欲しかった。
「さぁ、入ろうか」
「はい」
ヨアヒムさんに連れられお店に入る前に私は羽織っているマントを脱いだ。
「「「「「!!?」」」」」
あれ? なんか皆の視線が私の下の方に向いている。
足下を見るがなんともない。
「えーと、あの…」
私が戸惑っていると蒼兄さんに引っ張られ、剛兄さんがギルドマスターやマクシミリアンさん達から隠すように私の前に立つ。
「えっ、ちょっと何?!」
「何じゃない! お前ワンピースの下はどうした?」
「えー ズボン? だって履いてたら暑いだもん」
今の私の服装はミニのワンピースに太ももまであるロングブーツという格好である。
いつもはズボンも履くのだけど今日は暑いので脱いでいる。
「あっ! でも大丈夫。ちゃんと下はショートパンツだし」
「ばか! お前っ! スカートを捲るな!!」
「…蒼、声を落とせ…」
「――っ…」
珍しく蒼兄さんが慌て口元を手で押さえている。
「「「………」」」
「レイの太もも……す…スカート…捲る…」
「グロウ、鼻血出てるよ」
どうやらこのフィデンリーザ王国を含め他の多くの国々では女性が人前で足を出すことは無いらしく結婚した旦那様にでさえ普段は見せないとか。
そういえば、町の女性はみんな足首までのスカートかズボンだった。
元の世界での学校の制服感覚があったので足を出すことに抵抗はなかったんだけど、あんなに凝視されると流石に恥ずかしくなってくる。
「…麗、マントは羽織っておけ…」
「うん、わかった」
またマントを羽織るが中が見えないようにがっちり前を閉じているか兄達のチェックが入る。
OKが出たのでそろそろとギルドマスター達の元に歩み出る。
「あの、お騒がせしてすみませんでした……あ…グロウ君、大丈夫?」
「へ? あっ、だ、大丈夫だから大丈夫っ…」
「で、でも…」
「本当にっなんともないからっ…」
「平気だ。ほっといたら止まる」
グロウ君の側に行こうとしたがギルドマスターに引き止められる。
「大丈夫だって。それに今、レイちゃんがグロウの側に行っちゃうともっと酷くなると思うよ」
「え…」
「さっきのレイちゃんの姿を思い出して血が止まらなくなっちゃうかも…。ふふ…俺はレイちゃんのカワイイ太もも…もっと見たかったんだけどなぁ…」
また背後からヨアヒムさんの声がして案の定最後の方は耳元で囁かれた。
町中で気配感知や魔力感知を使うと人が多過ぎてクラクラしちゃうし、索敵は敵意がないと意味がない。
元の世界と違い、この世界来てから気配感知等のスキルを使わずとも多少なりに気配を感じる力が上がっているみたいで、誰かが背後にいれば気配が感じられるのにヨアヒムさんだけ気配も何も全く感じられない。
「どうかした? レイちゃん」
「い、いえ、何でもないです」
ちらりとヨアヒムさんの方を見やれば、直ぐにこちらに気付き妖艶な笑みを向けてくる。
きっと何を聞いても全てこの笑みでかわされそうだから何も聞かないでおこうと思った。
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