雨
よろしくお願いいたします。
「麗、いつまで寝てるつもりだ。そろそろ起きろ」
「…うーん…わかった…」
暫くベッドの上でぼーっとして起き上がる。
昔からスッキリと起きられた試しがない。
「おはよー…」
「みんなお前と朝飯食べるって言ってるぞ」
「あーごめんね…顔洗ってくるから、それが終わったらご飯にしよ」
『『『『はーい』』』』
ふらふらと歩きながら洗面所まで行く。
この状態は異常では無いのかスキルは発動していないようだ。
でも顔を洗えば少しは楽になる。
「いただきます」
『『『『いただきます』』』』
とはいえ、お腹は空いていたのでがっつりお肉にしてしまう。
私は和風ハンバーグとご飯、兄達は牛丼にカツ丼にしている。
クリス達もエクレアも私と一緒が良いとみんな和風ハンバーグだ。
シオン達も何でも食べてくれるがサラダ、主にレタスやキャベツが気に入ったみたい。
次に町の外に行ったらシオン達の好物のお花や薬草も探しておこうかな。
いつもよりゆっくり朝ご飯を食べ兄達は食後のコーヒーを飲んでいる。
私はというとコーヒーより紅茶派である。
別にコーヒーが苦いから飲めないとかじゃないんだからねっ!
「ねぇ、外ってまだ雨なの?」
「あぁ、まだ止みそうにないな」
◇◆◇◆◇
アランさんのお店を出てグロウ君が合流して直ぐにウォルターさんが立ち止まり空を見上げたかと思うと、いきなりこんな事を言い出した。
「もうそろそろ…雨が降る…」と。
【深紅の薔薇】の皆がウォルターが言うなら必ず雨が降ると力説するので、一度冒険者ギルドに戻ることになった。
するとギルドに入るや否や、あんなに晴れていたのに雷が鳴り始めバケツをひっくり返したような雨が振りだした。
蒼兄さんが訓練場にテントを準備をしに行き、私は窓からどしゃ降りの雨を眺めていた。
「すごい、本当に雨降ってきた」
お礼を言うためにウォルターさんに駆け寄った。
「あの…ウォルターさん、ありがとうございました。うちの子達、雨が苦手なのでウォルターさんのおかげで助かりました」
身長差があるので、また前のように見上げる形になってしまう。
「あ…いや……役に立てたなら…良かった…」
やはりウォルターさんは横を向きフードを深くし顔を隠しながらも答えてくれたが、本当に恥ずかしがり屋なのか、それとも…。
「ウォルターは誰にでもあんな感じだから気にしないで、レイちゃん」
私の背後からの耳元の囁きと心を見透かされたようなヨアヒムさんの言葉に心臓が飛び出そうになった。
「ヨアヒム! またレイに…ズルい…じゃない、離れろって!」
デジャヴな光景に思わず笑ってしまう。
でもヨアヒムさんには何故か背後を取られてしまうのはなんでだろう。
ともあれウォルターさんの話では明日も一日中雨だと言うので、それならば明日はずっとテントで過ごすことになるのでマクシミリアンさん達にその旨を伝えた。
「ずっとテントにいるのか?」
「はい、この子達は外が雨だとテントから出ないので…」
側にいるクリスを撫でながらマクシミリアンさんの問いに答える。
他の冒険者達も雨の日は訓練場をほとんど使わないので本格的に一日中テントに籠ることにして、マクシミリアンさん達に「それじゃまた明後日に」と挨拶をし別れた。
グロウ君が子犬のようにシュンとしててちょっと可愛かった。
受付のエリーナさんに今からテントに戻ることと明日は一日テントから出ないとのギルドマスターへの言伝てを頼み訓練場へ向かうのだった。
◆◇◆◇◆
それから、今は自分のベッドでゴロゴロしながらポテトチップスを食べ、横からおねだりするチャッチャの口にポテチを入れている。
昨日の半日もやる気がなくてダラダラしてたけど今日も何だかやる気が出ない。
きっと雨だからかな。
「…いつまでダラダラしてんだ。もう少しちゃんと…「わかってるー」
いつもように蒼兄さんに怒られながらもダラダラはやめない。
「はぁ…全く……昼は狩った魔物の肉にするからな」
「本当に? やったぁ」
ガバリと起き上がると背中で寝ていたシオンが転げ落ちる。
「あっ! シオンごめんね」
落ちたシオンを拾い、私の横で寝てるクリスのその上に固まって寝るアジサイ、カスミ、ヨモギ、サクラと一緒に寝かせた。
「私も手伝うのにぃ」
「ダメ」
「なんでー」
「絶対焦がすから」
「むぅー」
速攻で断られる。
「じゃあ、お肉切るくらいなら…」
「お前の切り方は雑すぎる」
「うぐぅ」
結局何もさせてもらえず兄達が肉を焼く姿を眺めていた。
「いただきます」
『『『『『いただきます』』』』』
まずはジャイアントホーンラビットのお肉を食べてみる。
ウサギのお肉も蛇も猪も元の世界でも食べたことないのに、初めてが魔物だなんて変な感じだけど思いきって食べる。
ジャイアントホーンラビットは味も感触もどちらかというと旨味の強い鶏の胸肉な感じで、
フォレストグリーンサーペントは鶏肉というか白身魚のような感触でラビットよりも薄味であっさりしている。
アビスブラックボアは臭みがあるのかなと思ったけど全く臭みもなくて豚肉に近いけど味が濃くて凄く美味しい。
どれも塩と胡椒だけの味つけ
にしてお肉の味を確かめたけど、どのお肉もとても美味しくてまた狩りに行こうと思う。
次は色々な味付けで食べてみたいな。
「これ、お父さんとお母さんにも食べさせたいね」
「ああ、クリス達に沢山食べさせても大丈夫な量があるからな。母さん達にもちゃんと持って帰れる」
この後、兄達とクリス達はお肉をおかわりし、シオン達はサラダを食べ始め、私とカスミは卵スープで昼食を終えた。
明日は私の希望で普段着を買いに行くことになっているので、午後からは前からやりたかったクリス達のブラッシングをすることにした。
「でかすぎる…」
2m60㎝はあるクリスを筆頭に
一番小さなジルでさえ2m20㎝以上なので、とてつもなくブラッシングには時間がかかる。
ブラシを持つとチャッチャが期待の眼差しで見つめてくる。
チャッチャはブラッシングが大好きで他の子達をブラッシングしていても我先にと割り込んでくるのだ。
汚れは浄化スキルで大丈夫だけどブラッシングはやっぱり別のようで…。
「流石にみんなはキツいなぁ」
『見てて。麗ねぇちゃ』
クリスが小さくなっていく。
「えぇっ、ク、クリス?!」
クリスだけでなくジル、チャッチャにチッチャまでもが小さくなる。
「みんな小さくなっちゃった…」
みんな元の猫の大きさに戻っていた。
『大丈夫なのですよ。これはケットシーの能力の一つなのです』
エクレアが言うにはこれはケットシーの能力の一つで大きくなったり小さくなったり出来るらしい。
『やっとこの能力のコントロールが出来るようになったんだから』
ジルが私の腕の中に飛び込んでくる。
「大きいのも可愛いけど元の大きさもやっぱり可愛いわ。さぁ、いっぱいブラッシングしてあげるからね」
元の大きさのクリス達を満足するまでおもいっきりブラッシングしてあげることができた。
「いいか、お前達。これから人前で大きくなったり小さくなったりするのは絶対にしたら駄目だからな」
『えぇーどうしてにゃのー』
『バッカだな。普通の魔物が大きくなったり小さくなったりできる訳ないだろ?』
『僕達ケットシーだからできることだから、人前でそんな事したらケットシーだってわかっちゃうよ』
「チャッチャとクリスの言う通りだ。後、俺達以外の人前のおしゃべりも駄目だぞ。チッチャ」
『わかったにゃ』
蒼兄さんがみんなに、特にチッチャに強く言い聞かせる。
「みんないい子だから大丈夫だよね?」
『『『『うん!』』』』
「はぁ…あんまり甘やかすなよ。麗」
みんな頭も良くていい子達だから大丈夫なのに…。
蒼兄さんはホント心配性なんだから。
お読み頂きありがとうございました。




