防具屋
よろしくお願いいたします。
「ふんっ こいつを選ぶたぁ、あんちゃん良い目持ってんな」
「…いや…」
剛兄さんが選んだ剣は目につく所で綺麗に並べられた剣ではなく奥の方の隅に雑多に置かれた剣の中から選んだ物だ。
後で聞いたら鑑定を使わなくても分かるくらいの名剣だという。
私は使わなきゃ分からなかったけど。
「後、こいつぁオマケだ。持ってきな」
そう店主さんから渡されたのは、これまた名剣らしき短剣だった。
オマケと言うには釣り合わない良い物なので直ぐ様お断りを入れる。
「これはそこのお嬢ちゃんにだ…さっきの詫びだと思ってくれたらいい…」
「良かったね。あの照れ方だとレイ達こと気に入ったみたいだから受け取ってあげてよ」
「っ!? うっせーぞ!グロウ!」
私達は剣を受け取ると店主さんにお礼言いお店を後にした。
お店を出ると店先の端の方でクリス達とウォルターさんが待っている。
「ウォルターさん、ありがとうございました。この子達は大人しくしていましたか?」
「あぁ…ケッ……従魔達は至って大人しかった…」
『『『『にゃー』』』』
「こらこら、いきなりどうしたの? もう一軒残ってるから、もう少し待っててね」
待つのに飽きたのか急に甘えに来たクリス達を宥めつつ、次のお店に行く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここの店主も腕は文句は無いが…まぁ、行けばわかるかな」
マクシミリアンさんの微妙な言い回しに疑問を抱きつつもお店の中に入ろうとした時だった。
「あー僕、今回はウォルターと一緒に残るよ…ほ、ほら! ウォルターだけじゃ従魔達を見てるのも大変だろうし!」
「私は別に…「大変だよねっ!! ね! ウォルター!」
私がグロウ君の必死な様子に声をかけあぐねていると、ヨアヒムさんがグロウ君の肩を組み何か話しかけ始めた。
「………………」
「………!? やっぱり僕も行くよ!」
先程とは打って変わって防具屋に行く気満々のグロウ君と悪い笑みのヨアヒムさん。
「ヨアヒム、何を言った?…」
「流石のウォルターも気になっちゃう? グロウはここ、凄く苦手だからねぇ。ふふ、ちょっと言っただけだよ。〝店主はゴウとソウの方に行くから兄達に邪魔されずレイと一緒にいられるかも〟ってね」
「はぁ…グロウも災難だな…」
二人の会話が聞こえたが私にはよく分からず首を傾げていると、マクシミリアンさんは苦笑いをしながら「気にしなくて良いから」と防具屋に入っていく。
私達もよく分からない緊張と共にマクシミリアンさんの後に続いた。
「いやーん! マクシミリアンじゃなーい!」
「「「…………」」」
筋骨隆々のオネエが出迎えてくれた。
「ヨアヒムもグロウちゃんもいるじゃなーい! あら、ウォルターは?」
「ウォルターは訳あって今は店先にいる」
「それってまさか…」
オネエがこちらにロックオン。
「…噂の三兄妹…」
あぁ、兄達を見てスッゴい目が輝いてる。
心の中で兄達に合掌。
これは私がどうにか出来るモノではないと二、三歩下がる。
と同時に店主さんが凄い勢いで迫っていて兄達は身構えるが
あっさりと壁際まで追い詰められていた。
あの兄達を二人同時に追い詰めるなんてただ者ではない。
そして追い詰めからの質問攻めにされてる。
私じゃ助けられそうにないし、防具でも見てようかなと思い一番手近にあった防具を眺める。
「レイ、あの…」
グロウ君に呼ばれて後ろを振り返ると横から太い腕が伸びてきてグロウ君をさらっていった。
「えぇー…」
今の状況が理解出来ず声が出てしまう。
グロウ君は店主さんに抱きかかえられて真っ青になり固まっていて、当の店主さんは何も無かったかの様に未だ兄達に質問攻めをしている。
「ここの店主はグロウが大のお気に入りで、いつもああなんだ」
「そういうことだから気にせずに、何か掘り出し物がないか見て回ろうよ」
マクシミリアンさんとヨアヒムさんに防具の説明を受けながら見て回る。
「………」
「レイ、どうした?」
「っいえ、何でもないです…」
ちょっと前からチラチラと変な視線を感じ、背中に冷や汗をかく。
「あなたが妹ちゃんね」
「ひゃうぅ」
思わず変な声が出てしまう。
恐る恐る後ろを振り向くと分厚い胸板が目の前に、そしてその少し横には生気のない顔のグロウ君が空を見つめている。
店主さんはギルドマスターと同じくらいの身長で青空の様な瞳にウェーブがかった金髪の物凄いマッチョ、顔は整ってるのだが濃いお化粧のせいで男前さはあまり感じない。
これは私も合掌案件なのだろうか…
冷や汗が半端ない。
「……ィわ…」
「?!っ………」
抵抗する隙もなく店主さんに抱きつかれる。
「あぁ…カワイイわっ」
「ま、待てアラン、その子は女の子だぞ」
「アランは男にしか興味がないと思ったけど…」
マクシミリアンさんとヨアヒムさんはあまりの事に驚いていて、兄達も今まで見たことも無いくらい顔色が悪く、相当精神的にダメージがあったみたいで助けを頼めそうにない。
もう、覚悟を決める。
「…実はねアタシ、妹が欲しかったのよっ!」
「ふぇぇ…」
太い腕と分厚い胸板に抱きすくめられて死にそう…にはならなかった。
右腕にグロウ君を抱え、左腕で私を大切な人形の様に優しく抱えている。
因みにグロウ君はかなりキツく抱かれているらしく動く様子はない…ちゃんと生きてるかな…
「ゴウとソウが羨ましいわ! こんなカワイイ妹がいるなんてっ」
「あ、あの…」
「子供の頃からの夢だったのよ。妹ができたら毎日カワイイお洋服を着せ替えてあげるのが」
「ひぇぇっ」
「……」
「麗!!」
「そんな殺気立たなくても大丈夫よ。立派なレディにそんなことしないから」
殺気立つ兄達を物ともせず軽くあしらう様はやはりただ者ではなさそうだ。
「麗が立派なレディなら、そろそろ解放して欲しいんだが」
「一本取られたわね。ごめんね。レイ、あぁ、名前までカワイイのねっ」
「あはは…アランついでにうちのグロウも解放してあげてよ」
「んー、仕方ないわね。もうちょっとグロウちゃんを堪能したかったけど…」
解放されたグロウ君はまともに立つことが出来ずひっくり返ってしまった。
「あ~あ、せっかく解放してもらったけど、もう一度アランに介抱をお願いしようかな?」
ヨアヒムさんが面白そうに呟くとグロウ君がガバッと飛び起きた。
「だだだ大丈夫ですぅぅっ!!」
悲鳴の様な叫び声をあげながらお店を飛び出していった。
「もうっ、失礼しちゃうわ」
でも悪い人ではなさそうだ。
買い物どころではなくなったのでお店を出る事となり別れ際、アランさんに「ちゃんとお買い物が出来なかったので次は必ずお買い物しますね」と伝えると「んもうっ ホントになんてカワイイ子なのかしら!!」とまた抱き締められてしまう。
「あらっ この子達思ってたよりデカいわね」
店先まで見送りに来たアランさんがクリス達を見て呟く。
大して驚かずに言うものだからこちらが驚いてしまった。
それからグロウ君はというと…
遥か遠くの路地から怯えながらこちらを覗き、私達がアランさんのお店からかなり離れるまで合流することはなかった。
お読み頂きありがとうございました。




