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漆黒のヴァルキュリア  作者: 月之黒猫
21/161

ランクアップ

よろしくお願いいたします。




「毎日ギルドマスターが来るのね」


「俺も毎日お前を起こさないといけないのか…」


 蒼兄さんの言葉が聞こえないふりをして朝の支度をする。




 テントを出るとギルドマスターが壁を背にもたれかけていて、私達の姿を見つけるなり手を振る。


「すまないな。また話があるから私の部屋に来てくれ」




 ギルドマスターの部屋に入ると一人の眼鏡をかけた背の高い男性がいた。


「君達は初めてだったな」


「初めまして。私はここの副ギルドマスターを勤めるグレンです」


 グレンさんはプラチナブロンドの髪とブルーグレーの瞳の端正な顔に銀縁眼鏡をかけた長身で細身の男性だ。


 グレンさんと目があった。


「なるほどね…」


「あ、あの、何か」


「いや、何も…気にしないでください」


 爽やかな笑みでかわされて話は本題へと入る。






「君達は冒険者ランクが上がる事になった。FからCにランクアップだ」


「どういう事ですか?」


「詳しい説明は私が…」


 私はいつも通り兄達に挟まれソファーに座り、目の前にギルドマスター、その斜め後ろに副ギルドマスターは立っている。

 副ギルドマスター、グレンさんの説明によるとC級へのランクアップは主にゴブリンの件だという。


「でも、いきなりFからCだなんて大丈夫なんですか?」


「ギルドマスターの権限でどうにでもなる。心配はない」


「はぁ…その代わり私の仕事が増えるんですけどね…大体貴方はですね…」


 ギルドマスターを睨みながらグレンさんの説教が始まった。

 色々と溜まっているらしい。



「あー、わかったわかった。小言なら後でいくらで聞くから今は説明を頼む」


「全く…では説明の続きをいたします」


 グレンさんは改まり、こちらに向かい直す。


「今回の巣はゴブリンが233匹、ジェネラルが9匹、ロードが3匹、キングが1匹と大規模にも関わらず貴方達だけで壊滅させました。通常この規模の巣だとC級冒険者以上が数十名、A級冒険者も数名が必須なのですが…」


「貴方達だけで、です」


 ニコニコと妙に綺麗な笑顔で言われる。

 …ギルドマスターも笑顔だ。


「緊急討伐依頼案件をF級冒険者三人だけで片付けるなんてな」


 いや、二人とも目が笑ってない。


「わ、私達はそんな…ほとんどは私の従魔達が…」


「昨日、貴方達が壊滅させた巣の痕跡を調べるためと他に異常が無いか調査に向かわせましたが、大規模なゴブリンの巣を討伐した場所とは思えない、まるで何も無かった様だったと。ゴブリンを埋めた穴もとても人が掘れる物ではないと報告を受けました」


 確かに蒼兄さんの水魔法で血洗い流すのも、あまり綺麗過ぎると後々面倒だとかで血の跡を少し残したんだけど、あれでも綺麗過ぎるのね。

 ゴブリンを埋めた穴も人が掘った物でなく魔法で作った物だ。

 

「ゴブリンジェネラルもゴブリンロードも従魔にやられたのがあるが、中には明らかに人の手によるものもあった。どんな得物を使ったか知らんが、とてもF級冒険者の代物とは思えんな」


 つまり蒼兄さんの魔法も剛兄さんの剣の腕もF級ではあり得ないってことね。



「君もだぞ。レイ」

「!?…えっ」


「アビスマーダーキャットを従魔にできる人間なんて今まで聞いたこともない。それがF級だなんておかしいだろ。ゴブリンキングにもどんな弓矢を使ったのか、それとも余程の腕があるのか」


「っ………」


「…あるいはまだ…何かあるのか――……」


「……………」



 うぅ…怖くて顔を上げられない。

 兄達をちらりと見れば平然とギルドマスター達と対峙している。


 暫く沈黙は続き、ソファーの後ろでチャッチャとチッチャのじゃれ合う音だけが部屋に響く。



 沈黙を破ったのはグレンさんだった。


「…そういう訳です。貴方達の実力がC級が妥当と判断したのはギルドマスターと私ですので、とやかく言う者はいないでしょう。そこは心配要りませんよ」


 恐る恐る顔を上げるとグレンさんは先程とは一転して優しい笑顔を向けてきた。

 別の意味で下を向きたくなったが、安堵からか深く息を吐いた。


「新しいギルドカードは直ぐに作れるようにしてあります。受付に行って手続きをお願いします。それとC級冒険者になると【指名依頼】と【緊急依頼】の対象になります。【指名依頼】は断ることもできますが【緊急依頼】は強制です」


「強制ですか…」


 グレンさんは私の問いに少し困り顔になり続ける。


「はい。今回のゴブリンの件はありましたが緊急依頼はそう滅多にはありませんので大丈夫ですよ」


「だが君達程の力がある者達は貴重な戦力だ。滅多にないとはいえ、またいつ何時があるか分からないからな。一応覚悟はしておいてくれ」


 ギルドマスターの言葉に気を引き締める。


「それと指名依頼の方だが…物珍しさで君達を指名する輩が増えるだろうから、指名は受けていないとこちらで断りをいれておく」


「大丈夫なんですか? その…色々と…」


 私はチラリと視線をギルドマスターからグレンさんに移すもすぐさま元に戻す。



「私の権限だ」


 ギルドマスターは私の視線の意味を知りながらニヤリと笑う。




 その後ろでグレンさんは大きくため息を吐くのだった。









お読み頂きありがとうございました。

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