呪いの銅像
よろしくお願いいたします。
「えーと…ギ、ギルドマスターはこの後はどうされるんですか?」
「どう…とは?」
「ですから! …私達、この後は買い物に行くんですけどっ」
話題を変えようと必死になる私を楽しそうに眺めて、分からないふりをするギルドマスターにヤキモキする。
「なら私も付き合おうか」
「久しぶりのお休みなのにいいんですか?」
「休みと言ってもやる事もないしな。こっちの方が面白そうだ」
こうしてギルドマスターも一緒に買い物に行くことになったのだが。
【深紅の薔薇】の面々にギルドマスターが加わることによりその注目度はとてつもないことになっている。
上級冒険者に目をキラキラさせる少年もいるが、ほとんどは女性が占めていて下は小さい女の子から上はご年配の女性まで、時々黄色い声も上がっていた。
まぁその中に兄達がいても見劣りしないのは鼻が高いんだけど、私に対する視線がなんというか…珍獣を見るよう目で見られている。
アビスマーダーキャットを連れた珍獣って所かな。
「わぁ、綺麗…」
「ポーションだが…見たことないのか?」
「!! ち、違います! そうじゃなくて…た、棚にこんなにいっぱい並んで綺麗だなって思っただけです!」
私がギルドマスターにしどろもどろに言い訳をしていると蒼兄さんが目で「余計なことを言うな」と言っているので黙っていることにする。
買い物は兄達に任せ黙りながらもキョロキョロと色々見て回っていた。
「あ、あの、レ…「レイちゃん、何か良い物でもあった?」
「あ、ヨアヒムさん」
「色々な物があるけど、この首飾りとかレイちゃんに似合うと思うな。ほら…」
私に窓に映る姿を見るよう促し首元に首飾りをあてがい耳元で囁く。
「―よく似合ってるよ…それとも耳飾りの方がいいかな…」
「悪いが妹に餌付けは遠慮願おうか」
固まっている私に蒼兄さんが助け船を出す。
「ごめんごめん。ついつい…ね」
ぐっ、最後の「ね」のウィンクが心臓に悪い。
そこでウィンク出来る人って少ない。
てか餌付けって本当に珍獣扱いなんですけど。
兄達に連れられ道具屋を出るとクリス達とウォルターさんが待っている。
ウォルターさんはクリス達に何かない様に見張り役を引き受けてくれていた。
「ウォルターさん、クリス達を見てくれて、ありがとうございます」
「いや…どうという事はない…」
お礼を言いウォルターさんを見上げると彼はフードを深く被り直してしまう。
かなり恥ずかしがり屋のようだけど、ちらりと見えた顔はとても優しい雰囲気を纏っている。
「はぁ、ゴウやソウ、従魔達の次はまさかのヨアヒムかよ…」
「あはは、ごめんね。グロウ」
「お前らあまりレイを困らせるなよ」
「…何だよ、ギルマスが一番困らせてるクセに……イテテテッ」
グロウ君がまたギルドマスターにグリグリされ「騒がしくてすまないな」とマクシミリアンさんが謝ってくる。
「いえいえ」と苦笑いしつつ、この後は数件の道具屋を見て回り今日の所は解散となった。
そして今、私は何故かソファーの上で正座をしている。
街から冒険者ギルドに戻り訓練場にテントを張り、晩ごはん
を食べお風呂に入りベッドでゴロゴロし、最後の剛兄さんがお風呂から上がった時だった。
「麗、ちょっと話があるからここに座れ」
「えぇ…」
兄達の〝ちょっと〟は説教か話が長くなる合図だ。
「で、何?」
「あの銅像での一件、説明出来るか?」
(あっ、そっか昨日はお風呂から上がってすぐに寝ちゃったから銅像の話は出来なかったんだよね)
雰囲気的に私はソファーの上で正座に座り直す。
「えーとですね…その…あれは自分でもよく分からなくて…上手く説明出来ないかも…」
「分かる所だけで良いから話せ」
私は自分の身に起こったこと、覚えていることを話した。
「じゃあ、お前は自分の名前を呼ばれた気がして、あの銅像を見てから少しの間記憶が無いんだな?」
「うん…あの銅像に呼ばれた気がして…」
「「…………」」
「何だか…聞き覚えがある声で…凄く…懐かしくて……「麗」
「な、何…?」
「これからは絶対あの銅像には近付くな。いいな?」
何時に無く蒼兄さんの顔が真剣なので少し怖くなる。
「うん…わ、分かった…」
『大丈夫。麗ねぇちゃは僕達が絶対守るからね』
いつの間にかクリスがすぐ横に座りスリスリと身を寄せるので、クリスに抱きつきモフモフな毛に顔を埋め「クリス、ありがと」と呟く。
「……ったく、声が聞こえるとか呪いの銅像かよ」
言い知れぬ不安で怖くなっていた私の耳に蒼兄さんの声は少し遠くに聞こえた。
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