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漆黒のヴァルキュリア  作者: 月之黒猫
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事後報告

よろしくお願いいたします。



「――それで…

薬草を取りに行ったらゴブリンに遭遇して、ついでに巣も見つけて全て討伐したと…」


 私達は今、ギルドマスターの部屋で彼からの尋問を受けている。





 あれから倒したジェネラル、ロード、キングをアイテムボックスへ、そしてゴブリンの右耳を手分けして集め残った死骸は土魔法で地面に穴を開けて埋めたのだが、数が数なので討伐よりも時間がかかってしまった。


 町に戻ったのは日が傾きかけた頃で、ギルドに報告に行った所こんな事態になっている。




「最初に遭遇した群れの中にジェネラルがいたのに何故その時すぐギルドに報告しに来なかった?」


「えっと、それは…」


「レイ、君が狙われたんだろ?」


「…は、はい…」


「それなのに一緒に巣に行き討伐に加わったと?」


 状況は前と一緒でソファーに兄達に挟まれて座り、目の前にギルドマスターが座る。

 前回のトラウマなのか私は下を向いたままでギルドマスターを見ることが出来ない。


「報告の事は知らなかった。麗は俺達やクリス達で守るから心配は無用だ。それに麗自身、ゴブリンごときにやられはしない。キングをやったのは麗だしな」


「!? 本当か?」


「ホ、ホントウデス…」



 私達はギルドマスターの部屋から裏の解体所に移動した。


「よぉ、兄ちゃん達、来たな。これが頼まれてた肉だ」


 グラードさんから肉を受け取ると蒼兄さんは次々とアイテムボックスに入れていった。


「本当便利だな。後、報酬は受付の方で受け取ってくれ」


「グラード、少しいいか?」

「あ? なんだよギルマス…何か嫌な予感がするな」


 ギルドマスターはグラードさんに耳でいっぱいになった袋を渡す。


「はぁ!? こいつがこの量ってことは巣か?」

「ああ、それとまだだ。ゴウ出してくれ」


 剛兄さんは台の上にジェネラル、ロード、キングを出していく。


「待て! ロードどころかキングまでいたのか!!」



「グラードさん、キングって何の…キング!!」

「ゴブリンキング初めて見た…」

「ゴブ…」

「あぁ…俺のクイーン…」




「レイ!!」

「えっ、グロウ君?!」


 グロウ君達が慌てた様子で解体所に飛び込んで来る。



「レイちゃん、良かった…無事だったんだね」


「ゴブリンの群れと遭遇したと聞いたが本当か?」


「?!…ゴブリンキング…」


「「「!?」」」



「お前ら落ち着け、らしくないぞ」


「ギルマス、これはどういう事だ」







「―――…という訳だ」


 ギルドマスターの説明に一同沈黙する。


「君達だけでゴブリンの巣を全滅させたのか?」


「あぁ、俺達でやった」



「キングを倒したのはレイだそうだ」


「「「「はぁ!?」」」」


 皆、私とゴブリンキングを見比べている。


「そいつぁすげぇな。お嬢ちゃん何を使うと眉間にこんな穴が開くんだ?」


「えっと、弓です」


「矢が貫通とかって、どんな怪力かよ!」

「キングが一撃か…」

「リン…」

「君の愛の矢で俺のハートも貫いてくれ…」


「アホどもが…で、こいつらから肉は取れないから全部買い取りでいいか?」


「あぁ、それで頼む」



 蒼兄さんとグラードさんとのやり取りの最中もギルドマスター達の視線が痛いので今回もまた、剛兄さんの陰に隠れる。


「昨日の報酬を受け取ったら、町から出て野営だからな」


 蒼兄さんはわざと皆に聞こえる様に大きな声で言う。


「わざわざ町を出る必要はないだろう」

「いつまでもギルドに迷惑はかけられないからな。それにゴブリンを相手にするより、今ここにいる方が麗には辛そうだ」



「…それは…すまなかった。…昔、近く村で小規模だがゴブリンの被害が出てな…それが思い出されてね。こいつらもそうだろうから許してやってくれ」



 ギルドマスターに謝られ【深紅の薔薇(クリムゾンローゼス)】の皆にも謝られて、心配してくれていたのに申し訳なく思ったが、精一杯の笑顔で大丈夫と言い続け何とかその場を切り抜けた。



 そして結局この晩もギルドの訓練場に泊まることになり、疲れていて直ぐにでも眠りたかったが、シオン達を連れお風呂にだけは入り、ベッドに倒れ込んだ後のことは記憶になかった。




 今朝も蒼兄さんに起こされ、昨日の夜は何も食べていないことを思いだし何か口にしようとするも、ギルドマスターが動き出したので急ぎ身支度を済ませる。



 ギルドマスターと挨拶をかわしテントを片付けていると冒険者が訓練場に数人やって来て訓練を始めている。


「おい、あれが噂の三兄妹か?」

「そうだ。アビスマーダーキャットを連れてるだろ」

「昨日のゴブリン騒ぎもあいつらなのか?」

「ああ、話によるとキングをやったのは妹らしいぞ」

「マジか!?」


 もう噂になってる。

 内緒話をする冒険者達の横を通り過ぎるが、声が大きいので内緒話になっていなかった。

 ギルドマスターが一緒にいるので声をかけられなかったのは幸いなのかも知れない。






◇◇◇◇◇◇



 今日も町を見て歩くので案内役のマクシミリアンさん達と合流し、広場まで来ている。


 のだけど…。



「……でさ、何でギルマスがいんの?」

「あ? 久しぶりの休みだよ」

「休みって、昨日のゴブリン討伐で色々忙しいはずだよね?」

「うるせーな黙っとけグロウ」



 ギルドマスターにこめかみをグリグリされているグロウ君。


「痛そう…」


「あはは、あれは死ぬほど痛いらしいから食らわない方がいいよ」


「グロウの言う通り多忙なはずなんだが…副ギルマスに押し付けたな」

「うゎー、これ以上押し付けられたらハゲるとか言ってたけど…副ギルマス可哀想…」



「さて、まずは腹ごしらえと行くか。お前ら奢ってやるぞ」

「よしっ! さっきの分まで食べてやるっ」


 ギルドマスターが奢ってくれるというので皆で屋台へと足を運ぶ。

 食べる量が多いのでとお金を自分達で出そうとしたがギルドマスターは私達の分まで本当に奢ってくれた。




「すみません。こんなに奢って頂けるなんて…」


「気にするな。あんまり金を使うことが無いんでね」


「うぅ…動けない…」

「グロウ、お前は食い過ぎだ」




 一休みするため広場に向かう。


(今日は銅像何でもなかったな)



 クリス達やシオン達も屋台に満足したので休憩場所の木陰で一休みする。


 甘えるクリスを撫でていると背後に気配を感じ振り返るとギルドマスターと目が合う。


「撫でても?」

「は、はい、良いですよ」


 ギルドマスターが撫でるとクリスは目を細めてゴロゴロと音を大きくする。

 まさか、いきなりクリスを撫でるとは思わなかった。


 チャッチャとチッチャは可愛らしい顔をしているが人見知りが激しく家族以外を嫌がるが、反対にクリスとジルは人懐っこいのだがこの二匹とても目つきが悪く、その上これだけ大きいのだから威圧感も物凄く普通なら近づくことも出来ないだろう。


「…怖くないんですか?」

「君が扱っていると猫の様だからな。…やはり私が相手をしたヤツとは違うな…」



「あはは…」

(ヤバ…話題を変えなくちゃ…)








お読み頂きありがとうございました。

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