街へ
よろしくお願いいたします。
「麗、起きろ」
「うーん…蒼兄さん…後5分…」
「駄目だ。起きろ」
「えー…お願い、後10分…」
「増やすな。ギルドの奴が来るぞ。…ギルドマスターがな」
「……はぁっ?」
蒼兄さんの言葉に頭がはっきりしガバッと飛び起きると、シオンがベッドから転がり落ちてしまい「シオンごめん」と言いつつ慌て拾いあげる。
『『麗ねぇちゃ、おはよう』』
「クリス、ジル、おはよう」
クリスとジルは既に起きていてヨモギとサクラは今起きたらしく「おはよう」と声をかけてあげる。
「もう来るぞ」
気配感知でもう、こちらに向かっているのが分かる。
「もっと早く起こしてよ!」
「起こしてたぞ。起きない方が悪い」
蒼兄さんがニヤニヤしながら言うが蒼兄さんがこの顔の時はあまり信用ならない。
「剛兄さんも起こしてくれていいのに!」
「…ふっ……」
剛兄さんに至ってはいつも通りだが微妙に微笑んでいるのでこの件に関しては楽しんでいるようだ。
「もうっ!」
顔を洗いたいけど時間が無いので浄化スキルで済ませて、私は急いで身支度を済ませた。
その間に兄達はテントから出てギルドマスターを待ち構えている。
「お二人さん、おはよう。君達が待ち構えているのは想像できたが…」
ギルドマスターがちらりとテントを見やる。
「麗なら寝坊「ちゃんと起きてましたからっ!!」
蒼兄さんの言葉を遮りテントから出ていく。
蒼兄さんを睨むがニヤニヤ顔でかわされる。
「レイ、おはよう」
「お、おはようございます」
やっぱり緊張する。
マクシミリアンさん達の前でもだけど、ギルドマスターだと緊張感が半端ない。
それが確実にギルドマスターにもバレていて、面白がっている笑みを向けられ、思わず目を逸らす。
く、悔しくなんてないもん。
ギルドマスターが話があると言うので、テントを片付けギルドマスターの部屋までついていく。
皆、昨日と同じ形でソファーに座った所でギルドマスターが話を切り出した。
「今日の予定だが、あるならば聞かせて欲しい」
「これから街を見て回る予定だ」
蒼兄さんが答えるとギルドマスターは答えをある程度予測していたのか、笑みを浮かべある提案をしてきた。
「この町は初めてだろう? 案内が必要じゃないか?」
「案内とは体がいいな。監視だろ?」
「ちょっと蒼兄さん!」
それはちょっと失礼ではと蒼兄さんを小突く。
だがギルドマスターは余裕な笑みで続ける。
「とんでもない。案内兼護衛だと思ってくれていい」
「断ることは出来るのか?」
「余りオススメはしない」
蒼兄さんもギルドマスターも笑みを張り付けて無言のままだ。
この状況が耐えられなく剛兄さんに何とかして欲しくて目で訴えかける。
今の蒼兄さんは私が何を言っても聞き入れてはくれないから、ここはもう剛兄さんしか頼れないのだ。
「…蒼…」
蒼兄さんが剛兄さんを見やり私を見る。
蒼兄さんにも目で訴える。
「―――っ……あーもう分かったからそんな目で見るな」
蒼兄さんは頭を掻きながらため息を吐いた。
「分かった。案内を頼む」
昔から蒼兄さんはこのうるうる攻撃だけは弱いんだよね。
さっきもこれが分かってて絶対私を見ようとしなかったし。
今回は剛兄さんにも効いたけど成功率は半々、私が何か企んでいたら必ずと言っていいほど失敗するんだよね。
案内を受け入れることになりギルドの酒場の壁際で兄達やクリス達と案内役を待っていると聞き覚えのある声に振り向く。
「ゴウにソウ、レイもおはよう」
もしかしたら…と思っていたけど、どうやら当たっていたらしい。
【深紅の薔薇】のマクシミリアンさんの笑顔の挨拶から始まり、皆の笑顔の挨拶が眩しすぎてつらい。
笑顔の太○拳とか凄い。
「…ちっ…やっぱりか」
蒼兄さんの舌打ちが聞こえたので私が慌て挨拶を済ませる。
「暫くは俺達が案内役を務めるからよろしく」
マクシミリアンさんの暫くの言葉に蒼兄さんが眉をひそめた。
「あの、そんなには大丈夫ですよ。街の大体を案内してもらえれば後は自分達で何とかしますから。それに皆さんは他にもお仕事があるんですよね?」
「レイちゃん、俺達の仕事のことは気にしなくていいよ。先日、長期の依頼が終わったばかりで、当分の間は仕事を休みにすることにしたんだよ」
「そんな貴重なお休みなのに悪いですよっ」
「いやっ大丈夫だよ! 逆にその…僕はレイと街を歩けるとか…「俺達も一緒だからな」
『にゃ~ん』
蒼兄さんが笑顔でグロウ君の言葉を遮るが目に見えて不機嫌だ。
その上、クリスが私の前へ出てお座りしてしまうのでグロウ君が思わず後退りしている。
「ううっ…」
「グロウ君、ごめんね」
「い、いや、うん…大丈夫…」
「レイちゃんは最強の騎士達に囲まれているね」
「あはは…」
もう苦笑いしか出てこない。
◇◇◇◇◇◇◇◇
巨大な石造りの城壁に囲まれた町はテレビで見たヨーロッパの様な町並みだった。
海外経験は全く無く映像や写真だけだから、どの国とかはよく分からず何とも言えないのだけれどヨーロッパには一度は行ってみたかったのでテンションが思わず上がってしまう。
「あまりキョロキョロしていると何処の田舎娘だと思われるぞ」
「はいはい、どうせ私は田舎娘ですよー」
蒼兄さんにニヤリ顔で言われたので、私は膨れっ面で言い返す。
今、歩いているのは私達が通った東門の主要な大通りだという道を歩いているのだが。
「なんか悪い気がしてきた」
通りにいた人は路地裏やお店に逃げ込んだりして今は誰一人いない。
冒険者にも出会ったが私達のことは知れ渡っているのと、マクシミリアンさん達が一緒にいるのもあり警戒はされたが挨拶をしてくれる人もいた。
この通りは冒険者ギルドが近く冒険者達の行き交いが多いからか武器屋や防具屋、道具屋が多く建ち並ぶ。
そこを抜けると中央に噴水がある大きな広場に出た。
「ここがこの町の中心だ。今の時間なら広場南と南通りでまだ朝市をやっている」
マクシミリアンさんの見ている方に向くと多くの食材と人々の姿があり、中にはチラチラとこちらを伺う人も少なくない。
私達はこの世界の人達がどんな生活をしているのか、どんな食材や料理が、地球には無かった物を色々知るためにここまで来たのだけど…。
「うーん…私、やっぱりここで待ってた方がいいかな…」
「どうして? レイちゃん」
「私が行ったら町の人達も怖がっちゃうし、お店の人にも迷惑かけちゃうから…」
朝市には行きたいけど先程の逃げていく通りの人達を思い出し迷ってしまう。
「レイ、この町の者達はそんなにやわじゃない。ルナティオースは深淵の森の一番近くに位置しているのもありこの国で最も危険な町と言われている。最初こそ怖れるかも知れないがすぐに慣れてくれるさ」
「特にご年配の方々は大丈夫かも知れないよ。かなり昔この町にも魔物使いがいたらしいからね」
マクシミリアンさんとヨアヒムさんの言葉に勇気を貰い少し元気が出てきた。
「ありがとうございます。じゃあ、行ってみようかな」
「レイ、それじゃ一緒に行こうよ」
グロウ君が私の手を取るのより一瞬速く剛兄さんに引き寄せられ蒼兄さんが私とグロウ君の間に入り遮った。
「?! 剛兄さん? 蒼兄さん?」
あれよあれよという間に私は兄達に挟まれながら朝市へ歩きだしていた。
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