そして、それは甘くて、ほろ苦い。
ジャジャーンッ!!
と、お腹のポッケから道具を出す猫型ロボットのように、兄達にアイテムボックス偽装のために持たされたマジックバッグに手を突っ込み取り出したのは可愛いガラスの瓶。
テーブルの真ん中に置いたガラスの瓶の中には茶色の固形物。
勿論、変なモノではない。
ルナティオースの道具屋で見つけた、本当なら乾燥させた薬草などを保存する瓶にぎっしりと詰まっているいるモノ。
「…これは?」
「これは…チョコレートですッ」
テーブルにちょっと前のめりになって答えるが、フェリシアお嬢様はとても驚いたように目を見開いていた。
勢いで出してしまった後から、この世界にチョコレートが存在しているのかと考えるも、時既に遅し。
だけど、どうしてもフェリシアお嬢様を笑顔にしたい。
「ほ、本当にチョコ――――」
「シィーです、お嬢様ッ」
このテントは私達のテントと違い普通のテントであり蒼兄さんの防音魔法は付いていないので、大声は禁物である。
これが兄達にバレたらお説教の追加は間違いない。
「あの、お嬢様。チョコレートを召し上がったことは…」
「昔、幼い頃に…こくおぅ…伯父様が帝国からの頂き物のチョコレートを持ってきてくださって、一度だけ口にしたことがありますわ」
何だか一部に不穏なワードが聞こえたが今は置いといて、帝国にはチョコレートがあるようで、高位貴族らしいフェリシアお嬢様が一度しかチョコレートを口にしていないことから、この国ではチョコレートは大変珍しく高価な物で間違いないだろう。
(…腹を括ろう)
私はマジックバッグ(アイテムボックス)から今持ち得る一番綺麗な小皿を三枚取り出し、それぞれにチョコレートを一つ乗せフェリシアお嬢様とクリス、そして自分の前に置いた。
「では、これはお嬢様と私とクリスの秘密ということで…」
フェリシアお嬢様はこくこくと頷き約束してくれた。
このチョコレートは言うまでもなく地球産の物で、スーパーで買える大袋の個包装された四角い形の甘めのミルクチョコレートだ。
なので毒の心配はないけど、先程のホットミルクと同じく毒見をかねて目の前のチョコレートを口に入れた。
やっぱり高級なチョコレートより安くても食べなれた、いつもと変わらぬ味に安心する。
『なぁーん』
クリスが食べさせてと甘えてきたので、自分の手の上にチョコレートを乗せて食べさせる。
クリスが食べることにより更に安心したのかフェリシアお嬢様も「えいっ」と小さな声でチョコレートを口に入れた。
「…――甘い」
花が咲くような笑顔になるフェリシアお嬢様。
「こんなに美味だなんて…あの時頂いたのより、とても甘くてまろやかで……本当に美味しいですわ」
「良かったです」
フェリシアお嬢様は青い瞳をキラキラと輝かせチョコレートを堪能している。
これ程まで喜んでいるなら、もしバレたとしても悔いはない。
目を閉じてチョコレートを味わっているフェリシアお嬢様を横目にホットミルクを飲み気付く。
これはチョコレートをホットミルクに入れちゃうしかないと。
「お嬢様。ちょっと失礼しますね」
私はお嬢様のホットミルクにチョコレートを三つ入れティースプーンで混ぜる。
目を丸くして驚きの表情のフェリシアお嬢様。
仕草や表情、全てが可愛らしく、私も思わずニマニマしてしまう。
「どうぞ、ホットミルクチョコレートです。美味しいですよ」
「そ、それでは……っ~~~~」
ホットミルクチョコレートを一口飲み、あまりの美味しさに悶えるフェリシアお嬢様を見て満足する。
それから、やっと落ち着いて距離感が縮まったフェリシアお嬢様と、馬車の修理が終わるまで話に花が咲いたのだった。
チャッチャ『読んでくれてありがとな』
チッチャ『にゃぁ~! ずるいにゃ麗ねぇちゃ達が内緒でチョコレート食べてるにゃ!!』
チャッチャ『俺達に内緒だなんてムダだし! テントの中の会話なんて丸聞こえなんだぜ!』
チッチャ『後で麗ねぇちゃからチョコレートもらうにゃっ!!』
チャッチャ『あっと、ここで注意事項だ。俺達はケットシーだからチョコレートを食えるけど、普通の猫にチョコレートを食べさせたら絶対にダメだぜ!』
チッチャ『後、玉ねぎもダメにゃ』
チャッチャ『他にも色々猫に食べさせたらダメな物があるから、しっかり調べて注意してくれよな』




