遠出の依頼
「ねぇ、蒼兄さん。ここを左に行って後は道なりに行けばいいの?」
「ああ、目的地は隣の領地だからな。道もあまり要り組んではいないしギルドマスターの言っていたように、寄り道をしないでこの道を行けば俺達なら数時間で着くはずだ」
ルナティオースの町から少し北に進んだ先にある分かれ道。
今、私達は冒険者ギルドで受けた依頼の真っ最中である。
◆◆◆
昨日、騎士団から冒険者ギルドへ戻った後、私達はすぐにギルドマスターに呼ばれた。
ギルドマスターの部屋の扉を三回叩くと「入れ」と入室許可が降りたので、部屋に入ると窓辺に立ち外を見ていたギルドマスターにソファーへ座るよう促され、いつもの通り兄達に挟まれ座る。
「話は聞いている。大変だったな。怪我はなかったと報告がきていたが……本当か?」
もし、あの時、私が怪我をしていても蒼兄さんが来た時点で怪我はキレイさっぱりなくなるだろうから、本当に怪我をしていなかったか気になるらしい。
「はい、大丈夫です。おかげさまで怪我はありませんでした。ご心配お掛けしてすみません」
「いや、怪我がないのならいい」
それから報告内容が事実と合っているか確認してほしいと言われて頷き、確認が終わるとギルドマスターがいつもより真剣な表情で話し出した。
「今回の事だが、これからも同じような事が起こると思ったほうがいいだろう」
「それは…」
「「………」」
言葉が詰まる私と無言の兄達。
「何せ、あの神獣ケットシーが人前に姿を見せた上に、その神獣ケットシーを従魔とする魔獣使いまで現れた。…まず放って置かれることはないな」
あんな人拐いにクリス達や兄達、何なら私だって負けやしないけど、しょっちゅう来るのは勘弁してほしい。
「君達ならどんな輩が来ようとも心配はないと思うが……ふっ、そんな顔をするな」
知らぬうちに顔に出ていたようでギルドマスターに笑われて、慌てて顔を隠すも時すでに遅し。
(えっ、やだ。私、どんな顔してたの!?)
「今回の裏にいる黒幕はまだ判明していない。だが、レイやケットシー達を狙うのは主に従魔専門の奴隷商だろう。……そして、これは私の推測であって確かなものではないが……」
ギルドマスターはそこまで言うと、少し間を置いて言葉を続ける。
「…ルブタス王国に気を付けろ」
◇◇◇
ギルドマスターの話を聞き終わり部屋を出る。
従魔専門の奴隷商も、そしてルブタス王国の事も、これから始まる兄妹会議で議題に上がるだろう。
この後、テントに戻るなり速攻で始まった兄妹会議は日を跨ぐ直前まで続いた。
◆◆◆
そして今、なぜ依頼の真っ最中かというと―――。
朝は少し遅く起きてギルドホールに行く手前で、グレンさんに呼び止められて「ダンジョン探索が十日後に決まりました」と告げられた。
詳しい説明は後日という話で、今日は何をしようかと依頼書を眺めていて……見つけてしまった。
「状態回復ポーションをリースニスの冒険者ギルドへ届ける依頼」
何故か、とても気になった。
この依頼を受けなければ…。
それこそ、一生涯後悔するような……そんな気がしたのだ。
チッチャ『読んでくれてありがとにゃ』
チャッチャ『従魔専門奴隷商にルブタス王国、なんか、きな臭い話になってきたな。確かルブタス王国にはケットシー信教が……』
チッチャ『きな粉臭いにゃ』
チャッチャ『きな臭いだ!』




