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漆黒のヴァルキュリア  作者: 月之黒猫
129/162

みんな大好きっもふもふ


 とてつもなく不機嫌な蒼兄さんと、()()()()()()()()()剛兄さん。



 そう、〝()()()()()()()()()〟なのだ。


 応接室の扉が開かれた瞬間にビリビリは綺麗に消えていた。





「…………」


 気付くと蒼兄さんが私のすぐ隣まで来ていて無言で見下ろしている。


 この状態が暫く続くのだが大丈夫、これは私に怪我や不具合がないか確認しているのだ。



 これが昔からの蒼兄さんの癖で、小さい頃は私に何かあるたびにこんな感じだったのだけど、ここに来て久しぶりに蒼兄さんの無言見下ろし確認の発動である。



 鑑定で見れば一発じゃん、と思われるかも知らないが蒼兄さんのことだから鑑定も使っている筈だが、あの蒼兄さんでも癖なので無意識なのだろう。





「はぁ……」


 蒼兄さんの溜め息が無言見下ろし確認の終了の合図。



「えーと…コレニハデスネ…」

「話は騎士団の方から聞いている」

「えっ、じゃあ」

「詳しくは後で聞く。いいな?」

「…はぃ」



 兄妹会議の開催決定だ。



 剛兄さんも私の側まで来ると頭を撫でる。

 今の剛兄さんを見るとあのビリビリはまるで嘘のようだ。


 きっとあのビリビリも人拐いへ向けたものだろう。



 なので兄達が私に怒っていないのは分かっているけど、この後の兄妹会議を思うと気が重かった。

 




 思わず溜め息が出そうになっていると、廊下の方が騒がしくなる。



「あっ! この子らは君の従魔だねっ どうにか止めてくれないか!!」


 応接室を出ると廊下ではイケオジ騎士団長様と強面ムキムキマッチョ騎士様達が、廊下の奥へ進もうとするチャッチャとチッチャを必死に押さえている。

 私に質問していた優しそうな騎士様はムキムキの間に入れずオロオロしていた。



「チャッチャ、チッチャどうしたの!?」


『この奥に麗ねぇちゃとクリスが()()()()()()悪いヤツラがいるから、ちょっと俺らも遊んでやろうかと思ってんだ』

「ダメよ。チャッチャとチッチャが遊んだら…」


『大丈夫にゃ。死にゃにゃいように遊ぶにゃ。ちょっとグッタリするだけなのにゃ!』


「いや、グッタリって」

『違うにゃ。ちょっとグッタリにゃっ』



 私とチャッチャ、チッチャが不穏な話をしていると、そこかしこから「本当にしゃべっているぞっ」「は、初めて見た…」とか「亡くなったじい様とばあ様にも見せたかった」とか「…か、かわいい…」だとか、仕舞いには「…もふもふ…もふもふ…」等も聞こえてくる。



 どうやら強面ムキムキマッチョ騎士様達のほぼ全員が、ケットシー好きと言うか猫好きのようで、チャッチャとチッチャを止めている騎士様達は皆一様に口元が緩んで今は強面が取れた、ただのムキムキマッチョ騎士様になっている。


 そして先程からオロオロしていた優しそうな騎士様はやっとムキムキの間に入りニヤニヤしながらチャッチャを止めていた。



 因みに、もふもふもふもふ言っていたのはイケオジ騎士団長様だった。








◇◇◇◇◇◇


「ねぇ、ジル。さっきはどうしてチャッチャとチッチャを止めてくれなかったの?」



 私は聞き取りが終わり、もう帰っても問題が無いと言われたので冒険者ギルドへと向かっている途中に、チャッチャとチッチャを止められる筈のジルが何故、二匹を放っておいたのか聞いてみた。


『あたしが止めなくても、あのムキムキ達が止めるかと思って。それで無理ならあたしが行ってたわよ』


『……本当はチャッチャとチッチャを止めるふりをして一緒に遊ぼうと『クリス。なんか言った?』


『何も言ってないよ』




(まぁ、大方予想はついていたけどね…)





 まだ日は傾いていないけど、この後はテントに籠り速攻で兄妹会議が始まるだろう。




 何だか今日は短いようで、長い一日だった。








◇◇◇



 その頃、騎士団では―――。




「団長……どうしましょう…」


「……あの長兄の方の殺気に当てられたな…」


殺気(あれ)をまともに食らって生きてるとは…」


「一応は手加減をしたようだな。だが、暫くは動けんだろう。放っておけ」


「「了解」」







「…冒険者ギルドから〝あの兄妹〟ついて報告は上がっていたが…」


 一人、自らの執務室に戻ってきた騎士団長は、椅子に座り書類が整理された机に向かい溜め息を吐くと、ぼそりと呟いた。



「やはり目立つ次兄と妹よりも一番危険なのは長兄か……マティアス殿の目に狂いはなかったな」



 最後に騎士団長は今日一番の深い溜め息を吐いた。






 そして、剛の殺気により人拐い達が気絶していた事を、麗が知る事はついぞなかった。











チッチャ『読んでくれてありがとにゃ』


チャッチャ『チクショー。あいつら俺達を止めていることを口実にベタベタ触りやがってっ』


チッチャ『ぼくにゃんてオジサンに顔埋められてもふもふされたにゃ…』

チャッチャ『麗ねぇちゃ曰く、イケオジな』


チッチャ『イケオジも結局はオジサンなのにゃ』



チャッチャ『悪いヤツラとも遊べなかったし、ムキムキ野郎どもにも触られて最悪だぜ』


チッチャ『もふもふオジサンにゃ…』


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