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漆黒のヴァルキュリア  作者: 月之黒猫
123/161

いいわけ


 ルナティオースの町は相変わらず賑わっている。

 丁度お昼時なのもあって屋台が並ぶ通りの賑わいは特に凄い。



 賑わう通りの中を、私の後ろをぴったりと寄り添うクリスと歩く。


 その足取りは重い。





「おや、珍しいねぇ。今日はお兄さん達は一緒じゃないのかい」


 お肉料理の多い屋台で、数少ないお野菜中心の料理を出す屋台のおばさんが声を掛けてくれる。

 ここの常連客は私達というよりはシオン達が常連客なのだ。


「あ、は、はい。今日はちょっと…」


 苦笑いで答えつつシオンに食べさせるサラダと、兄達の元にいるアジサイとカスミのサラダも買っておく。


 この後も屋台通りを歩いていると、あちこちから声を掛けられ挨拶で答え、お目当てのお肉の串焼き屋台で自分とクリス、そしてジル達と兄達の串焼きを買い込み広場のベンチに座った。





「はぁー…」


 串に刺さった大きな四つのお肉のうち一つをシオンに食べさせて、残りのお肉を半分ほどを食べ進め、出てきたのが先の溜め息。


 クリスは既にお肉を食べ終わり顔を洗っていて、シオンも深めの木の器の中で大量のサラダに埋もれている最中だ。



「言い訳をさせてほしい…」


 などと呟いてしまったが誰に聞かせる言い訳ではないのだけど。



「だって…普通聞かない単語だから、いきなり聞いても急には気が付かないし、渡された紙にはこっちの文字で書いてあったし…」


 蒼兄さんが持っていた紙を横から覗いていたけど、勿論全てこちらの世界の文字だから〝それ〟が〝あれ〟だなんて気付かなかった。


「あれが漢字で書かれてたなら、そりゃー私だってちゃんとすぐに分かったのに…」



「はぁぁ…」



 ひとりごとからの、もう何度目か分からないほどの溜め息が漏れる。


 気付けばシオンもサラダを食べ終わっていたので、気分転換にまた町をぶらぶら歩くことにした。







 シオンが眠たそうにしていたので鞄で寝かせて、私とクリスは賑わいのある通りを歩いていた。


 ここの通りは雑貨やアクセサリーの屋台が並ぶ通りで普段は通らないのだけど、前からちょっと気になっていた場所なのだ。



『……麗ねぇちゃ』

「…分かってるよ」


 時々、気になったアクセサリーをゆっくり見ながら歩いていると、後方で私達と同じ速度で付いてくる人物が数人。


「…全部で六人か」

『…うん、他はいないよ』


 気配感知と索敵を使い調べると私達の十メートル後方に三人、それよりも後ろに三人と二組に別れて動いているらしい。

 クリスは私より、かなり広範囲を調べていたようでこの六人以外他はいないそうだ。



 狙いは私達。


 それなら、と私はスタスタと歩きだす。


 先程、アクセサリーを見る振りをしてチラリと後方を盗み見れば、フードを被った冒険者風の三人の男達が、一人は雑貨を見ていて後の二人は雑貨を見ている男を二人で会話をして待っている。

 といった感じで私達から一定の距離を保ちながら付いてきている。


 更に後ろの三人組は人の多さと距離的にも確認は出来なかったが、想像するにおおかた彼らと同じフードを被った冒険者風だろう。



 通りを暫く歩くと屋台の並びも終わって、人通りも減り寂しくなる。


『いいの? 蒼にぃちゃと剛にぃちゃに怒られるよ』

「うん。人の多い所で襲ってきて暴れられても困るし、誰もいない方がこっちも色々出来るでしょ」


 クリスは私がやろうとしている事が分かっているようだ。


 普通なら人通りのある所では襲わないだろうが、相手がどんな人物なのか分からないし町の人を傷付けたくないので、危ないけど今はこの方法が一番だと思う。



「それに私にはクリスがいてくれるから絶対に大丈夫…でしょ?」


『なぁ~ん』

 



 私達は歩みを進め、人通りの無くなった通りを外れて更に人気の無い路地裏に入った。










チッチャ『読んでくれてありがとなのにゃ』



チャッチャ『超ヒマなんだけど』

チッチャ『つまんないにゃ』


チャッチャ『俺達も麗ねぇちゃに付いてけばよかったな。言い訳にもツッコミ入れれたし』


チッチャ『ほんとにゃ。この部屋どんよりしてるし、メガネの人も話が長いから寝るにゃ』


チャッチャ『だな。俺も寝よ』


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