いいお肉といいお酒
「おっ、やっと来たな!」
「今日の主役達のお出ましだ」
酒場に着くなり盛大な歓迎を受け、あちらこちらで「酒が飲める~」等も聞こえてくる。
「さぁさぁ、こっちに来て飲みましょ」
いつも私達が座る酒場の奥の一角は、すでにアランさんとアダムさんにより占領されていた。
二人の大男が座ると私達が座る場所などないように見える。
だけどアランさんはニコニコと笑顔で「座って座って」と自分とアダムさんの間を指し示す。
アランさんとアダムさんの間……けして広くはない、その空間は蒼兄さん、私、剛兄さんといつも通り座ると何とかギリギリ座れるくらい。
(あれ、これって逃げられない?)
周りを見れば、一斉に酒場の全員に目を背けられた。
「「「………」」」
私達兄妹は諦めたようにいつもの席に無言で座る。
その後ろで、チャッチャとチッチャがいい匂いに鼻をフンフンさせる音が辺りに響くのだった。
「残念ねぇ。本当にお酒飲まないの?」
「この間、仕入れた良い酒があるんだがな」
「す、すみません。あの…私達の分のお酒は皆さんで、どうぞお飲みになってください」
それを聞いた冒険者達は「ありがとよっ ねぇちゃん!!」と大いに盛り上がる。
「それで、その代わりと言いますか、よろしければお肉を多めに頂けたら…」
私はチラリとクリス達の方を見やりながら提案する。
「ああ。俺達は構わない」
いの一番に答えてくれたのはマクシミリアンさん。
ヨアヒムさん、グロウ君が「賛成」と答え、ウォルターさんも同じく賛成と言うように頷く。
【深紅の薔薇】に続き、皆が賛成してくれて「そうだな。ケットシーに酒を飲ませるわけには……いかんよな」とラウルさんが呟けば、酒場の全員がクリス達を見て無言で頷いた。
◇◇◇◇◇◇◇
「「よーし、それじゃあ……」」
「「「「「乾杯!!」」」」」
それぞれのテーブルに美味しそうなお料理やお酒が運ばれ、お騒がせ二人組、名前はラウルさんのパーティーのフラックさんと別B級パーティーのジョンソンさんが息ぴったりに音頭を取るとお酒を片手に皆で乾杯をする。
私達はいつも通りの果実水。
乾杯の後は飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎだ。
皆がお酒を飲みまくる中、私や兄達、クリス達は食事を堪能。
それから暫くするとギルドマスターがフラフラと、その後ろをグレンさんがニコニコしながら酒場へとやってきた。
ギルドマスターはふらつきながらカウンター席に座り、グレンさんも少し離れたカウンター席に座った。
「酒を頼む…」
「は、はいっ」
ギルドマスターが酒場のカウンターにいた店員の女性にお酒を頼むと、店員の女性は返事と同時にチラチラと視線をグレンさんへ送る。
あの視線は「副ギルドマスターは何にしますか?」っていうには挙動不審すぎるので、さしずめ「ギルドマスターにお酒出してもいいんですか?」って感じかな。
視線を送られたグレンさんは微笑を湛えると頷いてみせる。
「それなら、ジェニー。先日仕入れた一番良い酒をギルドマスターにお出ししてくれ」
剛兄さんの隣でグレンさんと店員の女性ジェニーさんの視線のやり取りをしっかりと見ていたアダムさんが言ったことに酒場中が沸く。
酒場のあちこちから聞こえる「俺達にもいい酒をくれっ」にアダムさんは嫌な顔をしつつも、「まぁ、今日は特別だ。だが少しだけだからな!」と言って皆に良いお酒を振る舞うことになった。
『にゃっ いい匂いがするにゃ』
いいお酒が飲めると更に騒がしくなった酒場に、チッチャがそんなことを言えばクリス、ジル、チャッチャも鼻をフンフンさせ厨房に釘付けだ。
少しすると美味しそうなお肉が次々と、それぞれのテーブルへ運ばれてくる。
「この肉は三兄妹からです。大皿はオークジェネラル、もう一つの小皿はオークキングの肉です」
グレンさんの説明にあれだけ騒がしかった酒場がシーンとする。
「オークキングは滅多に口にすることは無いから、よく味わって食うことだな」
グレンさんの後に続けて話すギルドマスターに言葉に、早速食べようと大口を開けていた数名は、口元まで持ってきていたオークキングの肉が刺さったフォークをそっとお皿へ置いた。
そして、その後は直ぐに運ばれてきた良いお酒が皆に行き渡り、オークジェネラル、オークキングの肉と良いお酒をよく味わうべく、あれほど騒がしかった酒場が少し間だけ静かになるのだった。
因みに振る舞われた良いお酒は、本当に少しだったらしい…。
チャッチャ『読んでくれてありがとな』
チッチャ『お肉美味しかったにゃ。でもなんかまだ食いたいにゃ』
チャッチャ『ふー、確かに結構食ったけどまだ食い足らないな。じゃあテントに戻ったらケーキでも食おうぜ』
チッチャ『賛成なのにゃ! 剛にぃちゃと麗ねぇちゃも誘ってみんなで蒼にぃちゃから隠れて食うにゃっ』
チャッチャ『…まぁ、絶対バレるけどな』




