エンペラーはヤバい奴だった
無事、ダンジョンの魔力を封印し、壁の穴も塞いだので私達はギルドマスターに報告することにした。
「どうやら無事に終わったようだな。……一応は」
ギルドマスターが私の顔を見て言った。
「………」
彼には私が少しむくれているのに気がついたようだ。
(ギルドマスターにはなんでか直ぐにバレちゃうんだよね)
「まぁ、兎に角これでオーク討伐とダンジョン魔力の封印、共に完了だ。ご苦労だった」
私の様子に気づくもギルドマスターはそれ以上は聞いてこずに、オーク討伐とダンジョン魔力の封印の完了を皆に告げたのだった。
因みに、チッチャと私の土魔法VS左官の勝負は繰り広げられることは……勿論なかった。
そして、後は大部屋と通路のオークを私達、兄妹のアイテムボックスへ入れて運ぶということになっているので、小部屋から大部屋へと移動しようとした、その時。
「ちょっとぉ~ナニよこれ、オークエンペラーじゃないのっ!!」
野太い叫び声が小部屋の中にまで響く。
小部屋の扉から覗くとバキバキなオークの側にしゃがみこむ大きな背中が見えた。
しゃがみこむ方もバキバキだ。
「全く。うるさい奴だ」
覗く私の横をギルドマスターが通り抜ける。
小部屋の隅ではグロウ君がウォルターさんの後ろに隠れて、震えながら息を潜めていた。
「マティアス、どういう事? これってエンペラーよね」
「ああ、見ての通りだ」
「エンペラーまでいるとはな。あっちでキングが転がってるぞ」
アランさんとギルドマスターの会話に、首に手を当てゴキゴキと首を鳴らしたアダムさんがやって来る。
アランさんが「キングはやっぱりブヨブヨねぇ」と遠目で確認していた。
そうなのだ。
何を隠そう、私が倒したのはオークエンペラーのだったのだ。
私はてっきり、あのブヨブヨがエンペラーで筋肉バキバキがキングだと思っていた。
なので、その後、兄達とクリスが小部屋に入ってから、こっそりとバキバキオークに鑑定をかけたところエンペラーだと分かり、思わず声が出そうになったがなんとか耐えた。
オークエンペラー
【状態】 死
《オークキングの上位。
オークの頂点であり、キングを圧倒的に凌駕する強さを持つ》
(やってもうた……)
それからクリスと兄達が戻るまで、これ以上目立たないように大人しく黙っていた。
「これもダンジョン魔力の弊害かしら」
少し前の事を思いだし後々、厳しい追及がないように心の中で祈っていたら、アランさんが私の隣を見て問い掛けている。
『んにゃ?』
私の隣、大部屋への入口にいたのはチッチャ。
チッチャは前足を揃えてピンと姿勢を正して座る所謂、エジプト座りでアランさんの質問に可愛く首を傾げている。
「……まぁ、いいわ」
アランさんもチッチャに聞くのは無駄だと分かったのか肩を竦めた。
「だが、あの時のオークエンペラーより段違いの強さだったようだな」
「みたいね」
アダムさんがオークエンペラーを見下ろして言うとアランさんが同意する。
「?」
「うふふ。昔ね、あたし達のパーティーとマティアスとグレンで、一度オークエンペラーを討伐したことがあるのよ」
私の心を読んだ、というより顔に聞きたいと出ていたようでアランさんが教えてくれた。
「だけど、あたし達が討伐したオークエンペラーは、ここまで筋肉が発達していなかったわ」
「我々が討伐したオークエンペラーのランクがB級そこそこなら、このエンペラーはA級でもS級に届きそうな強さだろうな」
(ヤバ、私とんでもないのを倒しちゃったのね)
アランさんとギルドマスターの話に、じわじわと血の気が引きそうになった。
チャッチャ『読んでくれてありがとな』
チッチャ『ぼく達の座り方に名前があるにゃんて知らなかったにゃ』
チャッチャ『他にも香箱座り、横座り、スフィンクス座り、エジプト座り、尻尾巻き座り、スコ座り、なんてのがあるな』
チッチャ『なんだか、よくわからないにゃ』
チャッチャ『お前がしてたのがエジプト座りで、その状態から尻尾を身体に巻いたのが尻尾巻き座りだ』
チッチャ『にゃっ! 尻尾巻けないにゃっ』
チャッチャ『はは、俺は巻けるけどな!』




