この騒動の元凶
ジルとギルドマスターがほぼ同時に扉を見ると扉が開き、蒼兄さんと剛兄さんが小部屋から出てきた。
「お帰りなさい。…終わったの?」
「ああ、中のオークは片付いた。後はダンジョンの魔力だけだ」
少し疲れた感じの蒼兄さんが答える。
開いている扉を覗けば、クリスが部屋の一ヵ所をじっと見ている。
「クリス、入るね」
『うん』
兄達にもう一度部屋に入って良いか確認して、クリスに声をかけた。
クリスの隣に行き、少し上を見上げる。
壁には縦に大きな亀裂が入り、その真ん中辺りに二十㎝くらいの縦長の穴がぽっかりと空いていた。
穴の奥は真っ暗で何も見えない。
真っ暗な穴はちょっと怖くて、嫌な感じがした。
「確かにダンジョンの魔力だが、不快だな」
いつの間にかギルドマスターが私のすぐ横にいて呟いた。
(ギルドマスターも私と同じこと思ってる?)
『何としてもここを侵食しようとしているからね。オークの事も意図的みたいだし』
「…ここにそれほど迄に執着する理由が?」
『さぁ。…どうだろうね』
私を挟み、その私の頭上でのクリスとギルドマスターのやり取り。
この隠し通路にはダンジョンが欲しがる〝何か〟があるというのだろうか?
それ以降〝何か〟を知っていそうなクリスに、ギルドマスターは何も言うことはなかった。
◇◇◇◇◇◇
『こっちも終わったぞ』
『麗ねぇちゃ、楽しかったにゃ~』
それから十数分後、チャッチャとチッチャが私の元へと戻ってきた。
特にチッチャはスリスリと甘えてきて、その様子からオーク討伐に大満足したようだった。
「へぇ~。ここからダンジョンの魔力が漏れてるって訳か」
「ギルマス。大部屋のオーク討伐、全て完了した」
「ご苦労だった」
久しぶりにヨアヒムさんに背後を取られ驚きつつも、その横ではマクシミリアンさんがギルドマスターにオーク討伐完了を告げていた。
「……くっそ…ヨアヒムの奴……。――レイ、大丈夫だった? そ、それにしても凄いね。こんなの初めて見たよ」
「グロウ君、私は大丈夫だよ。……って、あれ? ウォルターさん?」
最初、不機嫌な顔のグロウ君が聞き取れない音声で呟いた後、いつもの尻尾を振る子犬のグロウ君に戻り声を掛けてくれたのだけど、ウォルターさんが小部屋の開いたままの扉を、一歩入っては出て入っては出ての奇行を繰り返している。
「あー…。ウォルターはこのいつもと違うダンジョンの魔力が苦手みたいで、こっちに来たくても来れないんだよ」
「ウォルター。嫌なら無理はするな」
「………」
ウォルターさんも私やギルドマスターと同じく、穴から漏れ出るダンジョンの魔力が不快だとグロウ君が教えてくれて、ギルドマスターもウォルターさんを気遣っている。
そのウォルターさんは今、チャッチャとチッチャから物凄い目で見られていて、あの動きが面白いのか、チャッチャとチッチャはウォルターさんにジリジリとにじり寄っている。
あ、突撃した。
(前にもウォルターさんってクリス達にどつかれ…じゃなくて、懐かれてたし…)
―――…まぁ、大丈夫だよね。
チャッチャ『読んでくれてありがとな』
チッチャ『にゃにゃっ 魔術師のおにぃたんが変にゃ』
チャッチャ『ははーん。ダンジョンの魔力が嫌なのか。魔術師のにぃちゃん敏感だからな』
チッチャ『うんにゃ、あの魔術師のおにぃたんはりゅ…』
チャッチャ『あーあーあー』
チッチャ『そ、そうだったにゃ、これは秘密だったのにゃ』
チャッチャ『まぁ兎に角、いっちょ遊んでやろうぜ』




