壁に突き刺さる矢
バキバキのオークがクリスに向かって拳を振り下ろすと、轟音と共に砂塵が舞う。
「クリス!!」
蒼兄さんがクリスを呼ぶも砂埃が酷くてクリスの姿もオークも見えない。
数秒の間、静寂が辺りを包むもそれは直ぐに破られる。
『僕は大丈夫だよ。まぁオークの方は、そうでもないみたいだけど…』
砂埃からクリスが出てくると、少し離れた場所からオークらしき影が見えたのだが…。
―――ドサッ。
そんな音を立てて砂埃から姿を現したオークが崩れ落ちた。
「クリスッ!!」
私はクリスに駆け寄り抱き付く。
『麗ねぇちゃ、ありがとう』
「ううん。クリスが無事なら…」
「弓矢か」
いつの間にかギルドマスターが、こめかみに穴が空き倒れているオークの側で深々と壁に突き刺さる矢を見て言った。
そして、私はそーっと弓をアイテムボックスにしまう。
痛い程の視線が壁の矢と同じく、自分に深々と突き刺さっているのが分かる。
クリスの胸のふかふかな毛に顔を埋めながら思考を巡らすが、答えはこれしか浮かばなかった。
――こりゃ、お目玉確定だな――と。
少し遠くでは、でっぷりとしたオークがチッチャとチャッチャにコロコロと転がされていた。
「それで…この状況の説明をお願いしたいところですが、今は置いておきましょう」
「先ずはその部屋の片付けだ」
グレンさんとギルドマスターの言葉で、この場での追及は免れて少しほっとした。
先程と同じく索敵スキルを使うも小部屋の中には、もう危険なオークの反応はなく普通のオークより弱い反応しかない。
きっとこの中にいる殆んどが雌のオークだろう。
『じゃあ、麗ねぇちゃ。僕と蒼にぃちゃ、剛にぃちゃがいいと言うまで部屋に入っちゃダメだからね』
「…うん。大人しくここで待ってる」
結局、小部屋に入るのはクリスと蒼兄さんと剛兄さんになった。
剛兄さんは、これから受けるであろうクリスと蒼兄さんの心身の負担を減らす為に一緒に中に入るようだ。
剛兄さん本人は何も言ってはいないけど。
兄達はアジサイとカスミを私へ預けて、クリスと小部屋へと入っていった。
◇◇◇◇◇◇
クリスと兄達が小部屋に入ってから数分が経ち、私もジルもギルドマスターとグレンさん、皆が無言だ。
私達から離れたところではマクシミリアンさん達が少なくなったオークを倒している。
チッチャとチャッチャはコロコロ転がしていた、でっぷりオークが動かなくなって飽きたのか、今は粋の良いオークを見つけては追い掛け回している。
実のところ、マクシミリアンさん達【深紅の薔薇】が倒しているのは、チッチャとチャッチャが追い掛け回した後のオークで死んでいるか、いないかを確認して息があれば止めを刺すというものだ。
(後でマクシミリアンさん達にお礼と、何かお詫びの品でも持っていこう)
お詫びの品は何がいいかと考えていると、ジルとギルドマスターが小部屋の扉に視線を向けたのは、ほぼ同時だった。
チッチャ『読んでくれてありがとなのにゃ!!』
チャッチャ『なんか麗ねぇちゃがやらかしたみたいだぜ』
チッチャ『だにゃ。でもクリスとジルに任せておけば問題ないにゃ』
チャッチャ『ま、蒼にぃちゃと剛にぃちゃの雷が落ちるのは確定だな。こりゃ』
チッチャ『間違いないにゃ。ご愁傷様なのにゃ』




