解体
よろしくお願いいたします。
「…魔獣使い…」
「マスター、これって…」
酒場からもひそひそと聞こえる。
「おい、魔獣使いって聞いたことあるか?」
「いや…ねぇな」
「魔物使いなら知ってるが…」
……どうしよう、なんかヤバいのかな? ちらりと兄達を見るが、剛兄さんも蒼兄さんも難しい顔をしていた。
ふと、視線を感じ顔をゆっくりと正面に戻すと…
ギルドマスターと目が合う。
と、すかさず目を逸らす。
「はぁ……魔獣使い…大昔、英雄時代に一人いたといわれている。後にも先にも現れた記録は残っていない。君のように隠れていたかも知れないがな」
「え、えへへ…」
私は頬を人差し指で掻きながらひきつった笑みを浮かべた。
エクレアが『昔にも魔獣使いはいたので大丈夫なのです』って言ってたので、そのままにしたけど魔物使いに偽装するべきだったか。
話が違うぞエクレアよ…
「まぁ、魔獣使いならアビスマーダーキャットも従魔にし得ることは可能かもしれんが…」
ん? これはもしかして結果オーライってやつ?
お姉さんが慌てながら私のカードを作り渡してくれた。
私がカードをまじまじと眺めていると、お姉さんが色々説明してくれる。
「冒険者ランクはF、E、D、C、B、A、Sとあり、Fが低ランク、Sが高ランクとなっています」
「受けられる依頼はソロだと自分のランクまで、パーティーだとパーティーランクのひとつ上までです」
「依頼の失敗は違約金が発生しますのでお気をつけください」
「犯罪を犯した場合はギルドから除名処分されます。冒険者同士の争いは禁止となります」
後、依頼の内容も色々教えてもらった。
依頼は【採集依頼】【討伐依頼】【指名依頼】【緊急依頼】となっていて初心者は採集依頼からこなしていくとのこと。
「と、いうことでクエスト、クエスト~」
「…駄目だ…」
「えぇ~どうして~?」
「まだやる事があるし、依頼を受けるのは明日だな」
剛兄さんに首根っこ掴まれ掲示板の前から連れ戻されてしまう。
「魔物の買い取りを頼みたい」
「では、こちらでお願いします」
「いや、ここでは出せないかもしれない」
「ならこっちだ、全員付いて来い」
ギルドマスターが奥へと行くのでついて行くと、大きな倉庫の様な場所だった。
「おう! ギルマスじゃねーか…って、うぉ?!」
「大丈夫だ。話は来てただろ?」
「あ、あぁ…来てたが…ホントだったんだな…」
私達、主にクリス達を見て驚いていたのは元冒険者だったろう厳ついオジサマ、名はグラードさんという。
「買い取りだろ? ここに出してくれ」
剛兄さんが解体台の上に次々と魔物を出していく。
「アイテムボックス持ちだとは思ったが…かなり入るんだな」
「…………」
ギルドマスターの言葉を聞いた剛兄さんは魔物を出し終えた振りをした。
「もう無いのか?」
「…無い…」
うわーギルドマスター怪しんでるな。
「こ、こいつは…全部〝深淵の森〟の魔物じゃねーか?! ジャイアントホーンラビット、グレートファングウルフ、ビッグレッドアント、それにフォレストグリーンサーペントなんて久しぶりに見たぞ…」
「この首と体が別れてるのはアビスブラックボアか」
殆どネコパンチ一発だっから気にしてなかったけど、どの魔物もヤバい奴なのね…
「えーと、全部うちの子達が仕留めたもので…えーと…」
ギルドマスター、そんなに睨まないでください!
そこへ倉庫の奥から数人がこちらにやって来た。
「グラードさん俺達そろそろ帰り…うぉぉっ!?」
「ヒィィッ」
「っっ!?」
「ッ!? かっ可愛いっ!」
「おめーら落ち着け。さっき話が来てたやつだ。」
「…いや…だけど…」
「あの! 大丈夫です! この子達…私の従魔は絶対に人を襲わないので…その…」
「怖がらないでください」と最後まで言えなかった。
「おらっ! 従魔のご主人が大丈夫だつってんだから大丈夫だ。さっさと仕事するぞっ」
「は、はいっ!! って、うぉ! こっちもすげぇ!」
「見たこと無いのがいる…」
「でけぇ…」
「…可愛い子がご主人様…従魔になりてぇ…」
「アホ言ってねぇでやるぞっ!!」
「悪いな兄ちゃん達、解体が終わるのは明日の夕方になりそうだ。それと全部買い取りで良いのか?」
「食べれる肉はあるか?」
「ウルフとアント以外は食えるぞ」
「それぞれ半分貰いたい」
「半分でいいのか? そいつは正直ありがたい。久しぶりの高級肉で市場が沸くぞ」
高級なのね、大きいから大味なのかと思ったよ。
お肉貰ったらクリス達に食べさせてあげなきゃね。
買い取りの用事も終わりギルドカウンターまで戻って来た所で、マクシミリアンさんから声をかけられた。
「お疲れ様。良かったらこっちで少し話さないか? 何か奢るよ」
私達はお言葉に甘え同席することにした。
マクシミリアンさん達は奥の席に座っていたので奥の壁際にクリス達をいさせてもらい、私達も席に着く。
マクシミリアンさんに誘われたおかげか他の冒険者達はチラチラと見るだけでいちゃもんを付けて来る様なことはなかった。
「さて、自己紹介はしてなかったな。俺は冒険者パーティー【深紅の薔薇】のリーダーで剣士のマクシミリアンだ」
マクシミリアンさんは20代半ば程で190cmはあろう体躯である筈なのにそれを感じさせないのは、紅い髪、紅い瞳、そして美しい顔立ちのせいだろう。まさしく深紅の薔薇の様な人だ。
「俺は槍使いのヨアヒム、よろしくね」
こちらに手を振り微笑む銀髪碧眼で、こちらも190cmはいきそうな20代前半の爽やかな美形さん。
「つ、次は僕、斥候のグロウだよ」
茶色の髪、茶色の瞳、身長は180cmはあるが、まだ少し少年っぽさが残り、私と歳の差が無さそうなイケメン君。
「魔術師のウォルターだ…」
195cm以上はあるウォルターさんはフード被っているが、ちらりと見えた顔はやはり美形、歳は20代半ば程だろうか? 恥ずかしがり屋なのかフードを脱ぐ気配はない。
なんでこんなに男女共に美形で身長が高い人達ばかりなの? 周りの冒険者達も平均より上が多いみたい。
おっ! あっちに世紀末ヒャッハーっぽい人発見! 何故か安心する。
兄達が自己紹介を済ませ私の番だけど、どうも昔から自己紹介は慣れない。
「ぇーと…レイです、よろしくお願いいたします」
「じゃあ自己紹介も済んだし、とりあえずエールでも飲む?」
ヨアヒムさんの言葉に私は大きく首を降った。
やっぱり17歳だしお酒はちょっと飲めない。
「レイは歳いくつなの?」
「グロウ、女の子に失礼だぞ」
グロウ君が興味津々に聞いてくるがマクシミリアンさんに怒られている。
「いえ、大丈夫です。17歳です」
ガヤガヤ騒がしかった酒場が一瞬静まり返り、数秒後またガヤガヤしだす。
あんなに飲んで騒いでいるのに、ちゃんと私達の話も聞いているようだ。
みんな器用なんだね。
って、私一体何歳に見られてるんだろう?
お読み頂きありがとうございます。
深紅の薔薇、パーティー名というよりビジュアル系バンドみたいになっちゃいましたね。




