オークの異常繁殖
奥の方では大きな音とほぼ同時に断末魔のようなものも聞こえた。
『にゃにゃ?! 豚さんにゃ!!』
慌てて先に進もうとするチッチャを剛兄さんが制止する。
『チッチャ。慌てなくても大丈夫だよ』
『でも早く行かないと全部やっつけられちゃうにゃっ』
言い聞かすクリスと、早くオークをやっつけたいチッチャ。
『心配すんなって。流石にあの数じゃあ、直ぐにはどうこう出来ねぇだろ』
チャッチャの言葉にグレンさんの表情が強張り、ギルドマスターも眉を顰める。
「…オークが今、どのくらいの数なのか分かるんですか?」
『まぁね』
グレンさんの問いにチャッチャが素っ気なく答えた。
「一日前の通路内部の最終報告でオークの数は百を超えた所だった。今はどのくらいの数か教えてもらえるだろうか」
『まぁ、俺よりもクリスに聞いた方がいいぜ』
ギルドマスターがチャッチャからクリスに視線を変えた。
『……今、この階に四十一匹、下の階には二百五十匹はいるかな』
「なっ…」
「…やはり繁殖が早すぎるな」
言葉に詰まるグレンさんと考え込むギルドマスター。
「これはあまりにも異常だな」
「……成長促進の魔道具でしょうか」
「成長促進の魔道具?」
私の問い掛けに答えたのはグレンさん。
「はい。今は消失した魔道具の一つで、家畜を早く育てるための魔道具と伝えられています。三百年前に一つだけ発見され文献に書き残されているものです。先刻、王宮の魔道具師がこの成長促進の魔道具を再現したのですが、三百年前の物より効果は遥かに少ない物で、未だ改良中です」
「ということは、この遺跡に昔に作られた成長促進の魔道具があると?」
「このオーク達の繁殖力と成長は文献の三百年前の物より強力なようだ。まず魔道具では無いだろう」
この遺跡に成長促進の魔道具があるかと言えば、ギルドマスターが否定する。
「――それに…」
「それに?」
「……微かに異質な魔力を感じる」
『………』
ギルドマスターの発言にチッチャが僅かに反応する。
それをギルドマスターは見逃さなかった。
「レイ。君の従魔は何か知っているようだな」
『し、知らないにゃ! ダンジョンの魔力が隠し通路に漏れてるにゃんて知らないにゃっ』
『あちゃー』
「「『『………』』」」
「ダンジョンの魔力?!」
「やはりそうか…」
(ダンジョンの魔力が漏れてる?! なにそれ!)
驚くグレンさんと薄々感付いていたようなギルドマスター。
ちらりと兄達を見やると驚いている様子はない。
「どうやら、ゴウとソウは知っていたようだな」
険しい表情の蒼兄さんと変わらない剛兄さん。
『あにゃにゃにゃ…やっちゃったのにゃ』
チッチャの呟きが薄暗い通路に響いた。
チッチャ『読んでくれてありがとにゃ!』
チャッチャ『ありがとにゃ! じゃないだろッ』
チッチャ『ゴメンにゃ。思わずペロッて言っちゃったにゃ』
チャッチャ『お前なぁ~』
チッチャ『てへぺろっにゃ』




