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漆黒のヴァルキュリア  作者: 月之黒猫
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猛獣か、魔獣か。

よろしくお願いいたします。


「いえ、アビスマーダーキャットですよ」


 よしっ、意外と冷静に受け答え出来たことに内心ガッツポーズする。

 こうなることは予測していたので入念に話し合いをしていたのだ。

 かなり予定より早いけど。



「昔…アビスマーダーキャットを討伐した事があってね。多大な被害と多くの仲間を犠牲にして、やっと討伐したんだが…」


 ギルドマスターが言いたいことは何となく分かる。

 討伐したアビスマーダーキャットとクリス達は違うぞ、と。


 その間、ギルドマスターの視線は私から外されることはなく美しいエメラルドグリーンの瞳は変わり果て、月の無い深い夜空の様な瞳の猛獣が私の一挙手一投足を注視している。


 そう分かった瞬間、身体が硬直する。



 いや、負けちゃダメ! 怖いけど絶対に私がクリス達を守るって決めたんだから!!


「私の従魔のアビスマーダーキャットは亜種の特殊個体なので、ギルドマスターが討伐した個体とはかなり違うと思います」


 極力冷静を装い、話すことに集中する。


「亜種で特殊個体、ね…」


 ギルドマスターは少し微笑んでいる様に見えるが、その猛獣の瞳で探るように見つめているので、目だけが笑っていない。


 私は魔獣使いだ。


 だけど、目の前にいる今にも食らいつこうとする猛獣の瞳を持つ男を手懐ける自信はない。


「上級の魔物の亜種で特殊個体なんて、一体どんな確率なのか……それが四匹も…」


 探るような瞳は今や猛獣のそれではなく魔獣の瞳と化している。

 兄達もかなり警戒しているから大丈夫、大丈夫。


 だけど…


 魔獣の瞳は私の目をずっと捕らえて離さない。

 恐ろしい筈なのに…


 ―目を逸らすことができない。



「――ふっ…まぁ、そういう事にして置こうか」


 そう言うと、もうギルドマスターの瞳は綺麗なエメラルドグリーンの瞳に戻っていた。



 なにかのゲージを完全に削られ燃え尽きた私を横に兄達、主に蒼兄さんがギルドマスターの質問の殆どをぼかしながら答えていた。

 これが意外とすんなりといけた。

 これでいいのか?


 私の時と大違いなんですけど。


 これ以上蒼兄さんに質問しても無駄なのがギルドマスターも分かっているので、そうそうに質問を切り上げていた。


 まぁ、従魔の件を含め全て納得はしていないだろう。



「手間を取らせて悪かった……それとレイ、さっきから君の鞄が動いているんだが…」

「あっ! これはその…この子達です」

「…スライムか?」

「はい」


 マクシミリアンさん達と出会う前に眠くなったというシオン達を鞄に入れ寝かせていたのだ。

 鞄の中でシオン達五匹が起き出してモゾモゾしていた。


「アビスマーダーキャットとスライムか…君の従魔達は極端だな」

「あはは…」


 起き出したシオンは私、カスミは剛兄さんの肩に飛び乗ってきたが、アジサイだけは蒼兄さんの顔めがけ飛び込むも見事にキャッチされていた。

 ヨモギとサクラは大勢の人が苦手ならしく鞄から出なかった。



 私が部屋を出るとギルドマスターに声をかけられた。


「先程はすまなかった」


 一瞬何のことだか分からなかったがあの質問のことだと気づく。


「いえ、大丈夫です。これもギルドマスターのお仕事なんですよね? だから謝らないでください」


 ギルドマスターは少し目を見開くが直ぐに表情が戻る。


「本当はあそこまで君を問い詰める筈じゃなかったんだが…君の反応が可愛くて、ついやり過ぎてしまった」


「?!!」


 思わず顔を逸らせてしまう。


 あれ職務上の質問じゃなかったの?! 私からかわれてた?


 ギルドマスターにむくれた顔を見られ、笑われてしまった。

 ちょっと悔しい。





 一階に着くと、また私達に注目が集まる。

 ギルドマスターが睨みを利かせているので先程の様な視線ではなく、もう怖くはなかったけど兄達の陰に隠れながら受付カウンターまで行く。

 クリス達は私の後ろに控えているので受付の美人なお姉さん達を怖がらせてしまった。


 すると奥から、さらに綺麗な雰囲気からしてベテランのお姉さんが来た。

 クリス達に少し緊張はしたが直ぐ普通に対応してくれた。



「冒険者登録と出来れば魔物の買い取りを頼みたい」


「冒険者登録と魔物の買い取りですね? 分かりました。先ずは冒険者登録の方からですね。では登録を行いますので、この魔道具に手をかざしてください」


 おっ、あれがエクレアの言っていた魔道具かな? 種類が少ない魔道具の中でも比較的数が多い、名前と年齢と職業(ジョブ)しか分からない鑑定魔道具っていうのは。


 蒼兄さんが水晶のような物に手をかざすと、水晶の下の金属プレートに文字が浮かぶ。

 へぇーあんな風なんだ、と眺めていたら、お姉さんが驚きながら固まっている。


 横目で見ていたギルドマスターが受付のお姉さんに声をかけると、お姉さんは我に返り困った顔でギルドマスターと蒼兄さんを往復しながら見る。


 ギルドマスターがプレートを覗き込むと、眉間にしわが寄りため息をつく。


「…この国から賢者様の誕生だ」



 ギルド中がざわめきだちまた視線が強くなる。


 個人情報じゃないのかと思ったが、名前、年齢、職業はギルドカードに記載され、どの道知れるので隠すことは意味がない。


 カードは直ぐに出来上がり、次は剛兄さんの番。

 剛兄さんが手をかざすと、またお姉さんが固まり、ギルドマスターは既にプレートを覗いている。


「今度は神聖騎士様か…」



 ざわめきが一層強くなる。


 あーヤバい、次私じゃん。

 すんごい緊張してきた…


 案の定剛兄さんのカードは直ぐに出来上がり、私の番となる。


 私の姿が見えるとあれほどのざわめきが一瞬で静けさに変わる。


 私も一瞬で胃が痛くなる。


 これに状態異常無効は効かないのか?!



「…で、では、こちらに手を…」

「は、はい…」


「「……………」」


「…あのー……」



 ギルドマスターとお姉さんが沈黙する。





 …私、やらかしちゃった?






お読み頂きありがとうございます。

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