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39話 双子の弟 ~序~



 1人の男が、グガンナ城の門を潜った。


 海の底のような濃青の髪と瞳をはじめとした、男らしく端正な顔立ち。筋肉質の恵まれた体を黒い衣服に包み、両肩をマントで覆い、腰には長剣をさげている。


 為政者一族として人を惹きつける相貌と、1人の戦士として鍛えられた長躯は、容姿体格共に、この国の第1王子と酷似していた。



 まるでそこに至るのが当然というように躊躇(ためら)いなく、悠然と入城した彼だったが、周りを見て残念そうにため息をついた。

 誰かに驚き、そして喜んでほしいのに、タイミングが悪かったのか人の姿がなかったのだ。

 せっかく手土産を持って帰って来たというのに、これでは興ざめだと肩を落とす。気を取り直して先へ進もうと思った矢先……明るい髪色の、三つ編みの兵が歩いてくるのが見えた。三つ編みの兵は、手元の書類に視線を落としているので、男の存在に気づいていない。


 “あいつ”のくっつき虫ではないか、と内心喜んだ男は、その兵士に声をかけた。


「よぉ。元気そうだな。ヨルカ」


 前方からの声に顔をあげたヨルカは、その姿に瞠目した。


「あ、なたは━━」


 瞬く間に言葉を失い、足も止まる。

 主人と同じ色の瞳に射抜かれて━━いざ目の当たりにすると、ヨルカは何も出来なくなった。身動ぎも出来ず、ただ、後ろに引っ張られるような眩暈だけを感じていた。


 動かず、はじめに(うめ)いたきり何も言わなくなったヨルカに、男は気さくに話しかけながら1歩ずつ距離を詰めていく。


「どうした、ヨルカ。まるで(かたき)でも見るような目をして」


 狼狽するヨルカをそんな風にたとえながら、男は楽しそうな笑う。

 それでも硬直したままのヨルカに、男は何かを感じたのか、彼のすぐ前まで寄ると口角をふと下げた。


「お前はいつもそうだ。オレも一緒に育ったというのに、お前はオレではなくあいつを主人に選んだ」


 声音に憤りや嘆きはない。ただ抑揚がない、事実を噛み締めるような呟きだった。

 そして、顔をぐっと、ヨルカの顔間近まで近づけた。


「もっと喜べよ━━王子(オレ)の帰還だぞ?」


 低い声で、近距離にまで接近させた目を()らさずそう言って、男は再び笑う。

 ラスフィングそっくりに笑うが、目の奥には獰猛なものが潜んでいた。




次の投稿いつになるか分からんので

めちゃくちゃ短いですが序章ということで…

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