「作り過ぎちゃったからお裾分け♪」と、隣に住む女子大生が持ってきたのが何故か毛ガニだった件
──ピンポーン
「あ?」
土曜日の夕方、俺はオンラインゲームに勤しんでいた。
1人暮らしのアパートのインターフォンは新聞の勧誘か保険の勧誘か怪しい宗教の勧誘でしか鳴らず、今回も出る気は更々無い。
──ピンポーン
(ムシ、ムシ……)
「あ、あのー……隣の倉木です」
──ドドドドド!!
──ガチャ!!
「……ハァ……ハァ……す、すみません……!」
俺はオンラインゲームをほっぽり出し、イリュージョンさながらの早業で玄関のドアを開けた。
「あ、居たんですね。良かったぁ♪」
思わずキュン死しそうな爽やかな笑顔の倉木さん。隣の部屋に住む彼女は女子大に通う21歳。俺と同じ1人暮らしだ。
「あ、あの……これ…………」
倉木さんが両手で差し出したのは小さな段ボール。口は閉ざされ中身は見えなかったが、中からはカサコソと何かが蠢く音が聞こえていた。
「作り過ぎちゃったから……お裾分けです♪」
「……!?」
カサコソと聞こえるって事はどう考えても動いている物体であろう。それを作り過ぎたとはこれ如何に……!?
「お口に合うか分かりませんが、私の得意料理なんですよ?」
──カチカチ
段ボールの取っ手から赤いハサミの様な物体がニョキッと現れた。……どう見てもカニだ。
「そ、そうですか……ハハ」
はにかむ倉木さんの顔より段ボールから見え隠れするカニに気を取られそれどころでは無い。カニを『作った』と言うのだから倉木さんは只者ではない。
「あ、ありがとうございます……」
作ったカニを受け取り、手を振って倉木さんを見送った。玄関のドアを閉め段ボールを開けると、そこには案の定カニが居た。しかも毛ガニだ……。
──ピンポーン!
──ピンポンピンポンピンポンピンポピンポンピンポンピンポーーーーン!!!!
「うおっ!」
突如鳴り響いた激しいインターフォン攻撃に驚き、ゆっくりとドアを開けると、そこには段ボールを持った倉木さんが息を切らして立っていた。
「す、す、すみません…………間違えました……ハァハァ……」
「…………ですよねー(笑)」
どうやら渡す段ボールを間違えたようだ。新たに渡された段ボールの中には、カレーが入っていた。
ぶっちゃけカニの方が良かった
読んで頂きましてありがとうございました!
(*´д`*)