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煙は上に昇らない。  作者: 森永盛夏
4/4

「はるか」1

 それは艶めかしい景色。一人の女声が、衣服を脱ぎ捨てることで景色の一部に昇華した姿。彼女は裸のまま、キッチンの換気扇の下でタバコを吸っている。換気口に吸い込まれていく重たい煙は、くるくる渦を巻いている。


 そばに置いておいたスマホが鳴って、メッセージの到来を告げる。彼女はニヤリと笑って手にとった。左手にタバコ、右手にスマホ。まだ朝は早く、窓の外では小鳥が必死に鳴いている。


『今日、大学何時限目からだっけ?』


バイクのアイコンから送られてきたメッセージ。続けてかわいいスタンプも。


『2時限目からだよ!』


返信はすぐに返すタイプ。ハートの絵文字は早すぎる。そんな気がしている。

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