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覇者の導べ  作者: 桃巴


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死地

***死地


 船の上では綿密な計画が練られていた。

「薬草と武器の行商人を装い、五人が陸地で移動。まずは紅の陣地に向かえ。必ず呼び止められるであろう」

 支援隊の隊長はそう言って、五人の伝令隊を選出した。

 ニイヤが出した支援隊である。

「陣地を偵察しろ。バレるなよ。陣地の行商が終わり次第、死地に向かえ。紅に行くふりをして、陣地から離れろ」

 青の国からの申し出で、本物の薬草は貰っている。それを使い行商人のふりをするのだ。

「ニイヤ様の読みが正しければ、藍が放った馬がそこかしこにいるはずだ。上手く回収して死地に連れていけ」

 五人は頷く。

「残りは、海を北上! 慣れない海域である。皆、気を引き締めよ! 我らは支援物資を死地に運ぶぞ。おっ、そうだ。伝令隊は船より数日早く着くであろう。出来れば簡単な港、桟橋を頼む」

 薄暗くなる海を船は進む。

 闇に紛れ、船は藍の大陸に着けた。出発した時と同じその場に。

 五人の行商人が降りる。

「では」

 闇に消えた五人。支援隊は動き出す。

 その五人が死地に到着するのは二日後。船が到着したのは六日後であった。

「サンキ様、青の国から伝令隊が到着しました」

 サンキの元にその報せが入ったのは、ちょうど黒が湖に土砂の注入をはじめた頃であった。まだテント張りの住居しかない死地では、生活の基盤を興すことで手一杯である。だが、その基盤も資源の乏しい死地では難航していた。そこに伝令の一報が入る。

「そうか! 通せ」

 離れた兄達との伝令は、サンキの心を上昇させた。

「失礼します。サンキ様お久しぶりにございます。青の国からニイヤ様の伝令です」

 サンキは手渡せた文を読む。

 ニイヤの婚儀、イチリヤの向かった先、支援の内容、……盛り沢山の内容に頭は一杯になるものの、婚儀と支援には嬉しさが込み上げた。

「あの、サンキ様。馬を八頭回収してきました。それと、支援隊長から簡単な港、桟橋があればと」

 サンキはさらに気持ちが高ぶる。

「馬か! よく回収できたな?」

「見ての通り、行商人の格好ですから。馬を引き連れても違和感がなかったようです。ニイヤ様の読みが当たりました。藍の馬は他国になびかなかったのでしょう」

 誇らしげに行商人、いや、伝令隊が報告する。サンキもそれには胸をはり頷く。

「これで、基盤作りも早く進むであろう」

 サンキは拳に力を込めた。

 そう、この時はまだ藍の孤島は隆起していない。青龍が護っていたのだ。偵察隊からも、そう報告されていて、サンキもヨシアも安心していた。

 伝令隊もそれは認識していた。紅の陣地での情報収集で、青龍の話が出ていたからだ。霊獣使いの藍王は、今だ健在であると。紅の陣地であるため、顔には出せないものの、伝令隊は心踊ったのである。

「支援隊のために、すぐに桟橋の準備に入ろう!」

 テントから出たサンキは、基盤作りをしているヨシアの元に駆け寄る。

「サンキ兄さん! 聞きました。物資が来るそうですね」

 サンキとヨシアは、声を張り上げた。

「物質が数日後に届くぞ! 馬も伝令隊が回収してきた。皆、港を! 桟橋を作ろう!」

 と。


 支援隊は伝令隊の到着から四日後に海上に現れた。死地で苦労をしている民には、希望の到着である。

「松明を」

 昼ではあるが、サンキは船に松明の灯りで合図を送る。船からも応答があり、徐々に陸地に近寄ってくる。だが、その時、藍の大地が震えた。

「な! なんだ?!」

 揺れる大地はナーシャの力。

 だが、揺れは止まった。青龍がナーシャを止めた時である。

「何かあったのか?」

 サンキもヨシアも藍の孤島の方を見る。

「偵察隊からの報告を待ちましょう」

 ヨシアの言葉にサンキを頷き、海を見る。まずは、支援隊の受け入れであると。

 だが、サンキの心はざわめいていた。得体の知れない不安が胸にのし掛かる。

 それはヨシアも、そして民も同じであった。

 大地の震えが意味することは、人柱となった導であるナーシャの異変ではないかと。

 そう……その後、藍は隆起する。その揺れは死地にも見えた。そうである、見えたのだ。隆起した孤島が死地からも。

次話火曜5/1更新予定です。


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