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はじまり
***『はじまり』
血に染まりし両手は力を失い、その指先から朱が滴る。
朱に染まった床には、動かぬ者達。
「すまぬ」
哀しみと怒りが混じった言葉がこぼれ落ちる。
「オギャアーオギャアー」
ずっと耳に届いている赤子の泣き声。
「ああ、そうだ。わしを責めてくれ」
赤子を抱き上げる。
泣き声は止まらない。
朱色の手が赤子を色付けた。
だが、その朱色よりもさらに際立っているのは藍の赤子だ。
「オギャアーオギャ……ぁ」
突如止んだ泣き声を不思議に思い、赤子の瞳を見る。
頬に流れた涙をそのままに、赤子は弱々しく笑った。
「お前を守る。私は来るべきその時まで、お前を守る。我が藍の娘よ」