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001 帰宅は慎重に



「ねぇ。あんたたちは隣国から来たのかい?」


「いや、その予定だったが途中で連れが体調を崩して引き返してきた」


 隣国の王都の外壁にへばりついて拝聴することになった事件から既に3週間近くの時が流れていた。

 隣国の王都から、親友のハーヴィーが住むこのガナッシュ国の首都までは早馬で約1週間で、普通に馬車で移動して約2週間という距離に位置しているのだが、私ともう1人はまだ首都まで到着していなかった。


「そうだったのかい。それは引き返してきて正解だったかもね」


「隣国で何かあったのかい?」


「おや? まったく知らないのかい? なんでも隣国の王太子の婚約者が城壁から身を投げて亡くなったそうだよ?」


 この噂は当然知っている。

 このガナッシュ国の首都まであと1つという街まで来るのに、慣れない公爵家のご令嬢を連れての完全に人目を忍んだ旅をする事になり、遠回りをしてかつ十分な休息をとりながらの移動だった。

 それだけ時間を掛ければ、噂の方が私たちよりも先に到着する。この噂も何度も耳にしたが新しい情報がないか確認したくて聞いている。


「その噂は本当かい? 王太子の婚約者といえば次期王妃様じゃないか。よほどの事がない限り身投げなんてしないだろ?」


「いや、それが何でもその婚約者である王太子が突き落としたんじゃないかって噂だよ。現に2週間ほどまでに隣国からの早馬が来た直後に毎年この国の創立記念パーティーに参加していた隣国の王様が慌てて帰っていったんだから」


 この話は初めてだ。やはり遠回りした街での噂と人通りの多い街での噂の精度があきらかに違うもんだ。


「へぇ………。そうすると王太子は廃嫡かな?」


「本来休憩していくはずのこの街を素通りしてまで慌てて戻っていったみたいだからね。隣国は相当混乱しているんじゃない? まあ、馬鹿王太子がこれで消えてくれるなら私たちの国としても良いから、是非廃嫡にしてもらいたいものだね」


「そうだったのか。我々はここを素通りしてまで慌てて帰る用事はないから、しっかり宿泊させて貰うよ」


「ハッハッハ! 国の一大事じゃないかぎり、旅なんてのんびりしながら行くのが良いさ」


 こうして宿屋兼食堂を営むおばちゃんから、情報を仕入れて現在の状況をある程度把握した。


「ねぇ。あんたたちは隣国から来たのかい?」


 私が宿泊費と食事代の支払いを済ませると、おばちゃんは次のお客に私たちへ投げかけた質問と同じ質問を投げかけていた。

 噂好きのおばちゃんのようだから、噂としての鮮度は良さそうだ。


 ここへ来るまで、暗殺対象とその婚約者以外の人物は噂に登場してきていない。

 あの日に、私の姿が見られた可能性は低いと考えても良さそうだ。もし、暗殺対象に見られていたら、絶対に騒ぎを起こしているはずだからな。


「予定通り明日にガナッシュ国の首都へ到着。その夜に私が仕えているブリオッシュ家であなたを保護して頂けるように準備を整えます。あと1日か2日だけご辛抱下さい」


「お気遣いありがとうございます。(わたくし)のせいでこのように遅れている事は承知致します。(わたくし)は何も出来ずに申し訳ございませんが、よろしくお願い致します」


 部屋に入ってそう会話したのは、エクレール=ノワール公爵令嬢。

 暗殺対象だった隣国の王太子の元婚約者だ。噂では既に亡くなっている事になっている人物だ。


「では、エクレール様。本日もお先にお休み下さい。体調を崩されながらも無理をされて旅をして下さっているのですから、身体をお安め下さい」


「………はい。いつもありがとうございます」


 私とエクレール公爵令嬢は、ずっと旅の間ずっと同じ部屋で寝泊りしている。

 正確には、私が見張りとして部屋の外で一晩を過ごしている。


 河に落ちた直後はやはり風邪をひいてしまい、旅の疲れが貯まると体調を崩しやすくなっていた。看病する為に一時的に部屋に入る事はあっても、あくまで侍従の範囲で対応した。

 一応、公爵令嬢が国元へ無事に戻れる時の為に、貴族として最低限の気遣いとして行なっていたが、不可抗力とはいえ、男との2人旅の噂が広がってしまえばあまり意味がなくなってしまう。


 この公爵令嬢はガナッシュ国の首都が近づくに連れて、体調は良くなるのに段々と元気がなくなっていった。

 この先、自信がどうなるのかは予想は出来ても、実際にどうなるのかは分からないのだから当然だろう。


 そうそう、ブリオッシュ家は(あるじ)兼親友のハーヴィーの家だ。

 ハーヴィーはなんだ………。一応、次期当主様だ。


 失敗の報告をすれば、責任をとって処刑されない為に色々と手を尽くしてくれるのは分かっているが、このまま逃げる訳にもいかない。

 逃げれば、きっと家族に危害が及ぶ。失敗して死体になった後なら、それはないのだが行方不明が一番危険だ。暗殺任務なんていうのはそういうものだ。


 はあ………。いっそ死体で発見される方が確実に家族に迷惑が掛からないのだが、そうも言って居られない。

 あの場では仕方がないとはいえ、1人の人を助けてしまったのだ。その責任は最後まで果たさないといけない。


 私もガナッシュ国の首都へ戻るのがとても憂鬱だった………………。





「エリオット! 戻ったか!!」


「ハーヴィー様。今は深夜でございます。お静かにお願い致します」


「そうだったな。任務の中止の命が間に合ったようで良かった」


 ん?


「中止でございますか?」


「なんだ。連絡を受けて戻ってきたのではないのか? まあ、あれだけの騒ぎが起これば潜入など出来ないからな。戻ってきたのは良い判断だ」


「騒ぎとは暗殺対象の婚約者殺害の件ですか?」


「そうか。噂ではもう殺害まで広がっているのだな。その噂の通りだ。その婚約者のエクレール公爵の令嬢が馬鹿王太子に我が国の誕生祭を祝う為に開かれたパーティーの席で庶民を苛めたという罪で婚約破棄をして処刑をされた」


 うん。知っています。旅の途中で本人から詳細をお聞きしました。


「今朝届いた連絡だと、馬鹿王太子は王都外壁からその公爵令嬢を突き落としたとの事だ。その件で公爵令嬢の捜索協力の依頼が我が国に来ている」


 どうやら、私がその場に居た事はバレていないようすだ。


「エリオット。お前の率直な意見を聞かせてくれ」


 ハーヴィーが私を見つめる目は、苦悶に満ちていた。

 バレていないと思ったが、誰かがいたという事は分かっているのかもしれない。そしてハーヴィーだけが私の潜入方法を知っている。つまりはそういう事だ。


「一介の貴族の令嬢が、あの崖の下を流れる河に飛び降りて助かる確率はあるのか? 実際に脱出に使おうとしたお前なら分かるのだろ?」


 ………………深読みしすぎた。


「ただのお嬢様が助かる可能性ですか?」


「あぁ。今エクレール公爵夫人が我が国に留まって、せめて遺体だけでも捜して欲しいと申し出ている。あの河は我が国の領土へ流れ込んできているからな」


「さようでしたか………。もし、ただのお嬢様がお1人であれば助かる事はございません」


 私と一緒なら50%の可能性で助かると思うよ。実際に助かったわけだし。

 いや、本当にあの時は危なかった。


「そうか。実は隣国との国境付近の森にある浅瀬で高級なドレスと血の付いた毛髪が見つかっている。仮に遺体が流れ付くとしたら、国境までたどり着くものなのか?」


 うん。そのドレスと血の痕跡は私が細工したからね。

 丁度国境付近まで来た時に、騎馬の大部隊が移動しているのを目撃したから、暗殺対象から捜索隊を差し向けられたと思って、細工をした。


 今考えれば、あれは国王のお迎えだったのだろう。


「私が立てた計画では、もっと隣国の王都に近い浅瀬で河から抜け出す算段でした」


 まあ、実際には予定通りのその浅瀬で抜け出したのだが………。


「つまり、その先に流れ着くかは分からないという事か?」


「はい」


「そうか。分かった。今度はお前の報告を聞こう。移動に時間が掛かったという事はお前も捜索でもしていたのだろう?」



-後書き-

インフルエンザが流行っております。

インフルエンザは死ぬ病気だという事を忘れずに、手洗いとうがいをして下さい。


何が言いたいかというと、死ぬ病気だと知らない人が多く、正しい知識を持っていない人が病気を拡散させるという事です。


対策としては、怪しい人には近づかない。マスクは自己防衛の為に付ける。

インフルになってしまったときの為に、すぐに食べれる食事を用意する。


家族がいる方は自分がインフルに掛かると一家全滅の恐れがあります。

本当に気をつけてお過ごしください。


あれ? 何が言いたかったのか忘れた………ʕ•ᴥ•ʔ

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