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恋人になりたい!  作者: 蒼井真ノ介
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愛のセレナーデ

ちひろの一途な気持ちが可愛いですね。こんな女の子がいたら一生大切に、大事にしたくなりますね!ちひろの純粋な気持ちと裕貴くんの純粋な想いを優しく見守ってくださいね!「恋人になりたい!」、最終回まで残り2話となりました。最後までよろしくお願いいたします!!

 ちひろは約束の時間の30分前に来ていた。


 待ち合わせ場所は美術館の入り口の手前にあるハートをモチーフにしたストロベリー色のベンチだった。

 このベンチは前衛芸術家の坂崎志摩(さかざきしま)が作ったものだった。

  彼女は現在パリに住んでいる。29歳の女性で若手の有望株だ。このベンチは女子高生の間で密かなブームになっていた。


 ベンチに座ってから好きな人、片想い、意中の人の写真を両手で挟むように持って「両想いになりたいです!!」と心で7回唱えると願いが叶うというのだ。


 成功確率は驚くなかれ、なんと98パーセント! かなりのカップルが誕生していて見事にゴールイン、結婚に結び付つくカップルも数多くいた。


 学校帰りの中学生、女子高生、大学生、休みの日などはOLや若い女性、様々な年齢層を問わずに並ぶほどの賑わいとなっていて、ファッション雑誌の特集で何度も組まれていた。今年だけですでに5回も掲載されていた。


 さらには、好きな人と一緒にベンチに座ることが出来れば、確実に愛が深まり永遠に結ばれるという伝説まで存在していた。


 坂崎志摩がある雑誌のインタビューで、


 「このベンチを作っている間、心から愛を込めたので、見ているだけでも幸せになれるし、座ればもっと幸運が舞い込んでくるという気持ちを込めて制作をしたんです。『皆が幸せになって欲しいなぁ』というのが今の私の率直な気持ちなんです。制作期間は5ヶ月掛かりました。題名は『愛のセレナーデ』と言います。ぜひ座ってくださいね」と話していた。


 今日、運良く、ちひろはベンチに座れて微塵とも動かないでいた。


 愛する裕貴くんと一緒に座れたなら、両想いは永遠に続くと強く信じていた。

 ちひろは『裕貴くんにそれとなく、さりげなく、絶対に座らせよう!』と考えていた。ちひろの胸はいつになく高鳴っていた。


 約束の10分前に裕貴くんがやって来た。


 「やあ!ちひろちゃん」

 「裕貴くん」


 「ごめんね。待たせてしまったかい?」 「ううん、今、来たところなの」


 「そう、良かった」


 「私ね、緊張して昨日の夜は寝付けなかったの」


「僕もなんだよ! あははは」


「本当に!? あははは」


「うん、あははは。ところで、ちひろちゃん、凄く可愛い服だね! とても似合っていて素敵だよ! ちひろちゃんは黒が似合うんだね! 可愛いなぁ」


 「え〜っ! いやだあ。恥ずかしい〜! 照れますよっ!タハハハ。どうもありがとうございます。とても嬉しいです!」


 「ちひろちゃん、凄く凄く可愛いよ」


 「ムフフフフ」


 ちひろはドキドキしながら裕貴くんをなんとかベンチに座らせようと目論むのだが裕貴くんはチケット売り場に行こうとしていた。


 「あら!? ちょい、ちょっと裕貴くん!」とちひろは思わず声が裏返ってしまった。


 「うん? なに? ちひろちゃん、どうしたの?」

 「裕貴くんさあ、今、疲れていない?」


 「疲れていないよ! 元気100倍だよ! ほら!」と裕貴は言って右腕で力こぶを出した。服の上からでも逞しい二の腕が確認できた。


 「おおーっ! これは凄い筋肉だ! ……。じゃなくてさ、裕貴くん、足とか歩き疲れていない?」


 「全然」と言って裕貴は2、3回ジャンプをした。


 「あのさあ、腰とか、股関節がダルかったりとかしていない? または、太ももや脹らはぎに違和感はない?」


 「なんともないよ?」と不思議そうな顔をしながら裕貴くんは腰に手を置き、グルリと回したあと、スクワットを5回披露した。


 「腕とかはなんともないの?」


 「なんともないねえ」


 「裕貴くん、赤血球や白血球や脈とか順調?」


 「全然問題なしだね」


 「じゃじゃじゃ、じゃあさあ、じゃあさあ、喉が渇かない?」


 「そういえば…、渇いたかな。何か飲もうか?」

 「ちょいさあ、ちょっと待ってよ!さっきさぁ、コンビニでメロンソーダを買ってきたの」とちひろは言って慌ててバッグからメロンソーダを2本取り出した。


 「ありがとう! 嬉しいなぁ! ちひろちゃんは気が利くんだ! 本当にありがとうね!」と裕貴くんは顔を真っ赤にして喜んだ。

 チャンス到来だ!とちひろは逸る気持ちを抑えて、「こちらへどうぞ」とベンチに促して見事に座らせることが出来た。


 大成功だった。ちひろは素早く裕貴くんの隣に座り込んだ。

 2人の距離は5センチもなかった。ベンチの周りにいた若い女性たちが一斉に「オーッ!凄〜い!」と言いながら拍手をしていた。

 中には手拍子をするものもいて「オメデトー♪ よかったねえ〜♪」と祝福の言葉を掛ける者もいた。


 裕貴くんはキョトンとしていた。


 ちひろは目頭を押さえて泣きそうになっていた。




つづく

ありがとうございます!

素直な気持ちが大切なんですよね。

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