運命のめぐり逢い
最新作の連載小説です。第7話までの物語になります。ちひろの恋を応援してあげてください!恋はね、本当に、本当に、本当に素晴らしくて、毎日が幸せに感じます。皆も恋をしよう!人を好きになる気持ちを大切にしよう。
ちひろは買ったばかりの赤いダウンジャケットを着て街の本屋にいた。文庫本のコーナーに行く。探している本をメモした紙をポケットから取り出す。足早に向かう。本が無かった。ちひろは「チェッ」と言い頬を膨らませる。
『もう一冊に賭けよう』と急いで向かう。探している本とメモを照らし合わせて「あったよぉ! 」と安堵の表情を浮かべた。ちひろは本を速読のようにぺらりと捲るとカゴに入れた。
『そうだ !モネの画集が欲しいなぁ』とちひろは思っていた。以前、テレビでモネの〈印象・日の出〉を見た時、真っ赤な太陽が素敵で「いつまでも見ていたい」
とちひろは感動していた。ちひろは視力を失う恐怖を抱えながらも描き続けたモネに敬意を抱いていた。
ちひろはモネが『孤独の中で、視力を失うかもしれないという戦いに必死にだったし、怖かったんだろうなぁ〜』と思うと胸がいっぱいで堪らない気持ちになった。
ちひろはモネの画集を見つけて買った後に本屋を出た。
外は薄暗くなっていて、雪が優しく降っていた。
ちひろは信号待ちをしている間、モネの画集が入った袋を優しく撫でて『ずっと画集を大切にしよう』と思っていた。
ちひろは雪を眺めているうちに、突然、フッと本屋で見掛けたあの人の顔が頭に浮かんできた。
私はあなたに会いたい。
本屋で見掛けた素敵な人。笑顔が魅力的な人。
ハンサムで美男子な人。
良い匂いがした人。
カッコよくて爽やかな人。忘れられない大切な人。
ちひろは彼を本屋で見かけて見とれているうちに、『私の視線が強すぎるかもしれないなぁ〜』と我にかえり、本を見ているフリをしてさりげなく黙って見つめていた。
彼は友人と談笑しながら本を読んでいて、彼の時おり見せる笑顔が太陽の輝きみたいで凄く魅力的だと思った。『私の心を溶かす笑顔だわ』とちひろは思ったし、彼の憂いだ瞳がカッコよくて切なくて、ときめく胸が抑えられなくて、どうすることも出来きなくっていて、彼を見ているだけで涙が溢れてきた。
ちひろは『凄く惹かれてしまうわ。絶対に彼はちひろの運命の人だよ!』と小声で囁いてみて、又しても夢心地から我にかえり、慌てて頭を振った。
『彼は背が高い。178センチくらいはあるのかも!?私の理想のタイプだし、私好みのハンサムだし。本当に素敵な人だなぁ。ハンサムは勿論のことだけど、「綺麗な人」と言った方か彼には相応しい言葉かな?』とちひろは見つめながら思った。彼は何処と無く、無名の画家、無名の俳優、無名のアーティストといった面持ち、雰囲気を体全体に宿していた。
彼は『ただ者ではない』という気がした。彼の後方にいた他校の女子高生も、ちひろと同じ様に彼をウットリとして眺めていた。 『う〜ん、やっぱりライバルがたくさんいるなぁ。これは太刀打ち出来ないかもしれないなぁ〜』とちひろは落ち込み始めていた。
ちひろは彼が本屋を立ち去るまでの30分間の間、ずっと気づかれぬようにと静かに見つめていた。
雪は煌めきながら緩やかに優しく舞い降りていた。ちひろは彼の事を考えているだけで、自分の顔が赤くなっているのが分かった。胸が全力でダッシュをした時のようにドキドキとしている。
ちひろはそっと胸に手を当てると「もう一度だけ、彼に会いたい。名前は何て言うのかな?どこにいるんだろう?どんな声をしているのかなぁ?本当に会いたいよ」
とちひろは寂しそうに呟いていた。
信号が青に変わった。
ちひろは横断歩道を渡った先にある映画のレンタル店に向かって歩いて行く。
ちひろは二階の恋愛コーナーに向かった。今日は2本借りたい映画があった。先ずは、トム・ハンクスとメグ・ライアンの『めぐり逢えたら』を探した。
「あったぁ!!良かった!」
ちひろは、もう1つ、前から借りたいと思っていた本命の映画があった。それはモンゴメリー・クリフトとジェニファー・ジョーンズのネオリアリズモの恋愛映画の名作『終着駅』だった。
ちひろは前に映画館で再上映を観た時、烈しく愛し合う2人の愛に夢中になった。「もう1回観たい!!」と今日は探しに来たのだ。
ちひろは探すことに夢中になるあまり、僅か1メートル先いた若い男に全く気付いていなかった。
隣の男もちひろと同様に真剣な眼差しで映画を探していた。
二人の距離が少しずつ、少しずつ縮まっていた。
僅か30センチ。ちひろは映画を見つけて「あったぁっ!! 」と声に出し取ろうと手を差し出した。「あった!! 良かったぁ!ラッキー♪」と男も言って同じ映画を取ろうとしていた。
2人は手が触れた。
電気が走る。
「あっ、痛いっ!! あっ、ご、ごめんなさいっ! すいません」とちひろは慌てふためき、挙動不審気味に顔を上げてみた。
男は微笑んでいた。笑顔が優しくて綺麗だった。
『ぶわっ!! げっ!! うわああああっー!! 本屋の素敵なあの人だっ!! 』
とちひろは思い、驚愕して腰が抜けかけていた。
男はDVDをそっと取り出して、ちひろに差し出す。
「えっ!良いんですか?」
「大丈夫です。どうぞ。凄く良い映画ですよ。僕は前にも観ました。好きな映画なんです」と男は言った。ちひろは茫然としていた。
ちひろは
いつまでも
彼を見つめていた。
つづく
「この世を動かしているものは、愛である!」ルイス・キャロルの言葉です。読んでくれてありがとうございました!