オレが雨の日を好きな理由②
ほとんどの人にとっては、うっとうしい。
でも、オレにとっては、待ちわびた梅雨。
堂々と、ほとんど毎日朝練を休める。
…それだけじゃない。
オレは、未だにあの子に会える、雨の日の朝を楽しみにしていた。
初めて見かけてから約二ヶ月。
心に芽生えていた淡い気持ちは、日々、むくむくと大きくふくらんでいた。
そして、今日も雨。
彼女がいるから、という理由だけで、すっかり定位置になった、二両目のドア横を陣取る。
たぶん、いつも通り彼女が乗り込んでくれば、隣に来るはず。
そして、その予想は、想像以上に大当りする結果となった。
今日は、いつもより人が多い、気がする。
故に、隣との距離が近い。計画通り、あの子は隣に乗ってきた。
今、オレの全神経は、右腕に集中している……!
ガクン………ッ
突然、電車が大きく揺れた。
曲がりカーブか何かで、別段珍しい事じゃない。
のだけれど…。
揺れた拍子に、人がぎゅっと詰まって、彼女の顔がほんの一瞬、オレの胸にトンと埋まった。
シャンプーだろうか。
イイにおいが、一瞬香った。
ヤバイ…心臓つぶれる…。
しかも、なんか…見られてる?
なんだ?顔になにかついてる?
それとも、オレ臭い…!?
気にしない風を装って、携帯を開いてはいたけれど、不安でいっぱいで、画面をただ見つめるだけ。
ちらっと彼女を見ると、もういつものポーズに戻っていた。
…気のせい?
いや、オレが気にしすぎなだけか…。
漫画だったら、ここで声をかけたりして、仲良くなれたりするんだろうな。
でも、オレにそんな勇気はない。
―もう認める。
オレは、彼女が好きだ。
たぶん、一目惚れだったんだと思う。
認める、けど…。
一体これから、どうすればいい?
手を伸ばせば届くし、声をかければ応えてくれるだろう。
なのに、それができない自分にイラついて、すごく苦しい。
気持ちと妄想ばかり大きくふくらんで、現実とのギャップに落ち込んでばかり。
出口なんて、とても見つかりそうにないまま、うろうろと、ただ、さ迷っているみたいだった。