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雨の日  作者: 日和
5/11

6月21日ー雨ー


またまた月曜日。



土日を死んだように過ごした私は、久しぶりに人間らしく、顔を洗い、服を着て、家を出た。


……雨かぁ。


なんとなく、先週からの気分を引きずりつつ、ローテーションのまま、電車に乗り込んだ。



相も変わらず、車内はたくさんの人でごったがえしている。



――ん…?この香り…。



普段通り、下を向いていた私だけど、バッと効果音でもつきそうなくらい、思い切り顔を上げた。




王子様………。




し ば ら く 凝 視 。




あれ…?目、合ってる…?


気がつくと彼もこちらを見ていて、バッチリ目が合っている状態になっていた。

少しだけ、困った目をしているのは、気のせいではないだろう。


あわわわわ。

いつの間にぃー!!


ぽーっと見とれすぎてて、全然気付かなかった!


このままじゃ、男子校生の顔を凝視する怪しい女子高生になってしまう。



かつてない危機感に襲われた私は、とりあえず顔は彼を向いたままに、視線だけを彼の後ろの、車外を見ている感じにして、事なきを得た。



ふぅー、危ない、危ない。



顔は平常を装いながら、心の中では、思い切り安堵のため息をついた。


そして、窓の外を見る振りをしながら、しばし彼を観察してみる。



やっぱり…かぁっこいいなぁー…。



もう、私の不審な行動なんて忘れたかのように、ドア横に寄り掛かって、目を閉じている。


電車の振動に合わせて、さらさらと髪が揺れる。


さ、さわりたい…。


ダ…ダメ、ダメ!!


妄想禁止!

ハァハァ禁止!!



一週間ぶりのブランクは、けっこう大きかったみたい。

まさか私に、変態要素があったなんて。

うん、若干ショック。


それにしても、雨の日にしか会えないなんて…。


やっぱり彼は、雨の国かなんかの、王子様なんだわ!!




―――――


「…なんかってなによ、なんかって」



はい、ドン引きされました。



「ちょっとぉ、夢見る乙女の妄想に、突っ込み入れないでよー」


少しむくれて言うと、そんなことより!と、愛が身を乗り出して言った。


「で、いつ告白するの?」


うわぁ…その楽しそうな顔、なんか久しぶりー…。

じゃなくて!


「こ、コ、こ、告白っ!?」


「ちょっと、うろたえすぎ」


思いがけない愛の言葉に、声が裏返ってしまう。


「だって、告白って!いきなりそんな、ハイレベルなっ!!」


「うーん…まぁ、恋愛初心者のヒナちゃんだったら、番号渡すだけでも、十分だけどー…」


「そんなっ!神様に話しかけるなんて!恐れ多い!!」


「…また随分と、王子様から昇格したわね…」


ただ見てるだけで、鼻血出そうになるのに、話しかけるなんて、想像もできないよー!




ていうか、と、一人パニックに陥っている私に、ふと気付いたかのように、愛が言う。


「告白とか、恋愛とか、もう根本から否定しないのねー。やっと認めた?好きだって」


瞬間、時が止まったかのように、動けなくなった。


あれ…。私……?




「おーい。ヒナー?」



愛の声で、はっと我に返る。

と、同時に、ボッと顔が熱くなった。


「あ、あ、あいっ!私、王子様に、恋、しちゃったかも…」


「うん、うん。気付くの遅いけどねー」


「どうしよう…身分違いだよね…」


「とりあえず、妄想の世界から帰ってこようかー?」



初恋………。



そんな言葉が、ぐるぐると頭の中を巡って、その日は夜中まで眠れなかった。

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