6月18日ー晴れー
あれ?
梅雨、明けちゃったの?
思わずそう言っちゃうくらい、カンカンに晴れた朝。
ただ、駅まで歩くだけなのに、汗がじんわり滲む。
この一週間、梅雨だと思えないくらい、雨がほとんど降らなかった。
嬉しいような、寂しいような。
そして、私の王子様も、雨と一緒に気配を消した。
毎日、一応期待しながら二両目に乗り込んでいた私も、さすがに、今日は期待も消え去っていた。
他の車両に乗っているのか。
時間を変えてしまったのか。
理由はもちろん分からないけれど。
もう…会えないのかなぁ…。
って!
私、こんなに落ち込む必要なくない?
外見は理想の王子様を見つけて、大分目の保養になったのは確かだけど…。
愛が言ってたみたいに、恋しちゃったわけじゃないし。
むしろ、二日間だけでも、あんなイケメンさんを拝めただけで、ラッキーって、思うべきじゃない?
そうだよ、大体、性格も知らないし、声すら聞いた事ない。
きっと、あんなにカッコイイんだから、ものすごーく性格悪くて、女たらしかも!
うん、そうに違いないんだから!
サヨナラ、私の王子様…。
勝手に想像して、勝手にセンチメンタルになった私を乗せて、電車はあっという間に下りる駅に着いていた。
――――…
「ヒーナー?どした?なんか、今日元気なくない?」
学校に着いてからも、すっかりセンチメンタルに浸りきった私を見て、愛が声をかけてきた。
…が、今はもう5時間目も終わった、HR前。
心配するなら、もっと早く話しかけてきてください…愛さん…。
「…なんでもない。ちょっと、センチメンタルなだけだから」
「はぁ?なにそれ?また王子様絡み?」
「なんでもないったら、なんでもないのーっ」
愛のちょっと馬鹿にしたような態度に、若干イラッとした私は、ぷいっと、顔をそらした。
そんな私に、ため息をつきながらも愛は話しを続ける。
「ヒナ?そうやって、いつまでも物語のお姫様ぶってると、恋なんてできないよ?待ってるだけじゃ、王子様が迎えになんて、来ないんだから」
「お姫様ぶってなんか…」
やけにキッパリ言った愛に、どうしてか、反論できなかった。
「…あの人は…ホントに、ただの、王子様だったんだもん…」
呟くように口にする。
そんな私に、何も言えなかったのか、めんどくさかったのか、愛はもう何も言わなかった。
―――空が、泣いてる
帰りの電車内から、空を見上げながら、しくしく痛むココロを、見ないふりした。