今日から私はアボカ導師
『おめでとうございます佐倉優斗さん、貴方は転生実験第1号に選ばれました』
『............はい?』
目がさめると、天使のような女に唐突にそんなことを告げられる。
(どういうことだ?確か俺は道路で突っ込んできたトラックに轢かれて....)
じわじわと記憶が蘇る。
『......つまり俺、死んだの?』
『イエス 』
『........わーお』
自分が死んだことを理解する。頭が真っ白になる。
何も考えれなくなる。
そんな俺を差し置いて女は淡々を告げる。
『普段なら、死者は新しく生まれ変わり、現世に戻るのですが、(なんかそのプロセス面倒臭くね?)といちゃもんを付けた神がいまして、ならば若くして死んだ者をそのまま転生させてみよーという話なり、ちょうどいい所に貴方がやって来たというわけです』
マシンガンのごとく説明され、ほとんどわからなかったが、自分が転生するということだけはなんとか理解する。
『しかし、元の世界にそのまま返してしまうと辻褄が合わなくなるので、貴方には異世界に行って頂きます』
『...え?.......異世界?』
『イエス異世界』
『.........わーお』
自分が死んだと思ったら、転生して、更に異世界に行くと言われ、この短時間に色々なことが起こり過ぎてもう何がなんだかわからなくなる。
『しかしなんの術のないまま異世界で1人生きていけと言われても無理な話ですので、剣士や魔術師といったジョブを貴方に与えましょう』
あまり乗り気ではなかったが、16歳の男の子にとって剣士や魔術師になれるという言葉は、冷めた心に熱を付けるのには十分であった。
『じゃあ俺も剣士になれるのか?』
『いえ、人にはそれぞれ天職という物があり、それを見極める為に貴方に少々質問をさせて頂きます』
それを聞いて少し落胆したが、気を取り直し質問を受ける。
『父親の職業は?』
『アボカド農家』
『子供の頃の夢は?』
『アボカド界の頂点に立つこと』
『特技は?』
『触るだけでアボカド農家産地を当てれること』
『.........』
これまで表情を一度も崩さなかった女が顔を引きつらせている。女は気を取り直し、すぐさま質問に戻る。
『趣味は?』
『アボカドの栽培』
『高校の部活は?』
『アボカド研究同好会。ただし部員は俺一人のみ』
『......好きな食べ物は?』
『キュウリ』
『.............』
女は何かすごく言いたげな顔を残し、質問を終える。
『…………いま結果が出ました。貴方のジョブは........』
これからの運命を左右する言葉を俺は固唾を飲んで見守る。
『アボカ導師です』
『……はい?』
『というわけで、貴方にはこのアボガドの木から作られた魔法の杖と、アボカドの種を授けましょう。さあお行きなさい、アボカ導師ユウトよ、異世界へ!』
半ば投げやりな顔で杖と種を渡されると、目の前にワープホールの様な物が現れ、そこに引きずり込まれていく。
『アボカ導師ってなんじゃああああぁぁぁぁあ!!』
こうして、佐倉優斗はアボカ導師となったのであった。