馬は意外とデリケート!兜蟹、馬に噛まれて蹴られまくる! その壱
時は戦国、俺、乗馬経験ゼロ!
俺の名前は兜蟹、フリーランスの傭兵だ。
・・・というのは嘘だぜ?へへ、一回言ってみたかったんだよなあ。格好いいよなフリーランスって。
ところで俺はどうも馬って奴に縁がねえみてえなんだ。縁がねえっていうか、嫌われるっていうか・・・なんだろうなあ。俺がそんなに桜肉(馬肉)食いたいって思ってるのが・・・。。。
うん、いけねえよな!そういう邪念はよだれと一緒に仕舞っておくぜズルルーッ!!ズルズルジュルリーーーッ!!
でもまあ、馬肉はうめえよな!前に父ちゃんがご馳走してくれてよお。あれは中々美味かったぜ。てな訳で、今回は俺と出会ってきた馬どもに関する不仲の話。所謂「馬が合わない」話の一つをくっちゃべってみたいと思うぜ!今日はどうすっかなー、そうだなー・・・
それじゃ、順を追って農民時代の話でもするか。あ、馬を食べる前の話だからな。そう、俺が馬を食べるそれ以前の話だ。
時は戦国、俺、農民の養子 大兜武蔵太!
最近俺って、幸せだ。何か気付いたら海岸にいて、そこがどこかを訪ねたら。なんとそれだけで気持ち悪がられて、バラバラにされて鮫の餌!
・・・まあそこまでは不幸なことこの上ないんだがなあ。
なんだろなあ、服の代わりに打ち上げられたワカメを巻いてたのがいけねえのかなあ?そして体が痒かった、ワカメは服の代わりにはならねえなあ。
そして鮫の胃袋の中で何とか元に戻った俺は。悲しみのあまり、勢い余って鮫の口から飛び出して。いや、這い出す感じだったか・・・ゲロみてーになあ。鮫の歯ってばけっこうなあ、剃刀みてーに切れるんですわ。ま、ワニ程顎の力は強くねえみたいだからこじ空けられた。ワニの顎の力が一トンで、鮫の顎が・・・んーっと、何キロだっけ?まあいいや。
にしても、たまーに鮫のことを「ワニ」って呼ぶこともあるから。それって結構紛らわしーよな!
んでもって俺は、腰の辺りが鮫の顎でガッチリホールドされちまったもんだから。そのまま顎の骨ヘシ折って砕いて・・・
なんか俺ってば。昔から力に自信はあるんだよなあ。
「サメエエエェェッ!!サメエエエエェェッツッツ!!」
・・・それでも腰が抜けなかったから。仕方なくそのまま海岸まで這い上がってさあ。そして何だか悲しくなっちまって・・・
「うおおおお!!うおおおおおお!!」
「サメエエエェェッ!!サメエエエエェェッオエエエツッツ!!」
悲しみのあまり、海岸から離れるように、どこか遠くまで。その場所じゃあない遠くまで一息に駆け抜けた。鮫を下半身にくっつけたまま・・・「着込んだ」、とでもいえばいいのかな?
「うおおおお!!うおおおおおお!!」
「サメエェ・・・・・・サ、サッ・・・サメエ・・・。。。・・・ッエッツエェエーーオエエエエウボアーーーッツ!!!」
そして気付いたら山にいた。そのとき既に鮫は絶命していたのであった。
「はあ・・・はあ・・・ここは・・・はあ・・・どこだ・・・?」
「あ、人がいる。聞いてみよう♪」
俺も懲りない奴だなあ。だけど、そこがこの俺のいいとこなのかもな。
「すいまっせーん!すいまっせえええええんんんんん!!!」
「うわっ!!!!!!!!」
その人はすげーびっくりしていた。そりゃあそうだよな・・・
だって、山の中とか自分一人しかいねえと思うのに、急に話し掛けられたらびっくりするもの!俺だってそうだよ!
「あのー、ここってどこですか?」
「に、ににっににに・・・・・・兄ちゃん?あのっ・・・そのさあ・・・っ。」
そして怯えるそのじいさんの顔を見て。いや、じっさんとおっさんの中間ぐらいの年なのか?まあ何となく、俺は後悔したわけだ。
ああ、こいつも「あいつら」と同じなのかな、ってさ。
「・・・その鮫!それって「鮫」だよな!よかったら俺に分けてくれねえか!?いやあ、鮫って身はアンモニア臭くてあんまり美味くねえみたいだけどよ!ヒレは中々珍味になるみてえじゃけえ!干すのにすげえ手間がかかるそうだけどな!がはははは・・・・・・」
・・・なんか、要らぬ心配だったみてえだぜ。世の中結構広いよなあ。
そしてこのじいさんも。心が広い、というかなんというか。
「アー、イーッスヨー。持ってけドロボー!」
そして俺の懐も広かったのであった。まあ裸一貫、そして同時に無一文でもあったがな。
そりゃあ懐がだだっ広くもあるわけだ!
「マジか!!ヤッターーーーー!!!!!!よっしゃそれじゃあウチに来るか?麦とか、麦とか、麦とかあるぞ!」
「雑穀しかねえのかよ!てか、あんた農家か?」
「だって米は大体税で取られるもの・・・ああ、そうだよ。ワシの名前は大兜武蔵っつーんだ。あんたは?」
「わかんねえ!」
「がはは、そうか!マジで!?」
「ついでに金も持ってねえ。なんか気付いたらここにいた」
「マジで!?・・・そうか、マジで?まあとにかくウチに来なさいよ。」
そして俺はその「大兜」のおっちゃんに連れられて、夕食をご馳走になったわけなんだ。勿論、鮫料理である。
「サメって意外といけるのな・・・ま、「おまえ」の料理の腕がいいからだろうけどな!ははは!!がはははは!!」
「やだ、「あなた」ったら。褒めても何も出ませんよ?」
「淡白で、だからこそ沢山食えちゃうこの感じ!唐辛子で甘辛く味付けたこの感じがたまんねー!!うまいぜー!!」
そこからが俺のささやかな幸せ。そんな日々の始まりだった・・・その後意気投合した俺達は。この俺の腕力を活かせねえか、ってことで。俺が養子に、大兜の「父ちゃん」が養父に。そして「母ちゃん」が養母になることになったんだなあ。
そして畑仕事に精を出す。ファーマーライフが結構続いたぜ!力は強いが、腰痛と筋肉痛には悩まされたさ!そりゃあ腰の構造ってなー猿を無理やり立たせたもんだから弱いし、幾ら俺が筋肉質だからって。作業によって使う筋肉ってのは違うもんでよお。んだから筋肉痛にはなったよな。
ま、それは。筋肉痛のほうは、はじめの一年くらいだったけど。
17年、ってことになるのかな・・・農民として過ごした年月ってばよ。俺が農民として新たな生を始めたのはあの日から。そう、「あの日」からなんだよな。
大兜武蔵父ちゃんと出会って。俺が「大兜武蔵太」って名前を授かったあの日。その日その時。初めて俺は産声を上げたんだ!
そしてそれから間もない頃だったかなあ・・・
俺が初めて。馬と出会って、噛まれて。そして蹴られたのは。
「ヒヒヒヒヒヒイイイィン!!ヒヒヒヒヒヒヒイイイイィィンンンン!!!」
「ぎゃああああ!!ぎゃああああああ!!」
俺は畑で馬に噛まれた。主に手の甲を、前に揃った草を噛み千切る為の平たい歯でなあ。でっけえ歯形がつきまくり。
皆は昔、牛や馬が農耕に使われてたってことは知ってるか?そう、寛政時代。江々戸幕府の将軍、得河が十一代目の頃で・・・
・・・って、その頃って戦国時代じゃねーじゃねーか!とにかく、1789年頃の話らしいぜ、馬が田畑を耕し出したのは。まあでも俺らの村では戦場でかっぱら・・・もとい、どっかの迷い馬を保護して、その馬に面白半分で鍬を引かせてみたところ。思いの他土が耕せて、「これはいけるぜ!」っつーことで馬に畑を耕させていたみてえだ。まあ「かっぱらった馬」でやるんだからよその村には話せねえ・・・そしてこの村は。山の奥にある中々よそ者がこねえ寂れたとこで。
・・・そりゃあ歴史にも載らねえわけだ!
それにここにゃあ、文字書く程の学がある人とかいねえもの!
ま、その日はその馬。働きたくねえ気分だったんだろうなあ。そういう時もあるよなあ。馬ってのは結構気難しいんだ、神経質でデリケートな生き物なんだよ。俺は畑仕事大好きだったがな。戦場に憧れる15歳頃までは夢中だったなあ・・・
「・・・ま、そういうときもあるさな。しゃーねーな、今日は俺が代わりに耕してやるっつーの!」
「・・・ブルルヒヒヒィ・・ン?」
そう言った俺を見つめる瞳が。円らでキラキラしてて可愛いのなんのって!そうして俺はそいつの、馬の後ろに回りこんで。ケツをバシバシ叩いてこう言ったのよ!
「こんなに立派な足があるんだ!源のなんとか、出っ歯のヨシツネがしたみてーに!崖を駆け下りることもできるんじゃねえの!?がはははは・・・」
「ブルッフホホホホオウ!!!ブルッフホホホホホオウゥウ!!!!!!」
「か、カニ味噌がーーーーーーっ!!!」
そして俺は頭部を蹴り砕かれた・・・殻とか味噌とか汁が飛び散ってヒデぇ有様だったらしいぜ。
別に尻を叩いたのがマズかったんじゃねえ・・・父ちゃん曰く、「馬は後ろに立たれるのが苦手」らしい。どっかの殺し屋みてえだな?まあそんなわけで。これが俺と馬との最初の確執になったんだなあ。生まれた時からすぐに立つ馬だ・・・角が立つのは。遅かれ早かれあることだったのかもしれねえなあ、
・・・はあ、まったくよお。
跳んだじゃじゃ馬、そして飛び散った俺のカニ味噌、ってわけだ。
・・・んで、それから暫く経ったある日のこと。
「ただいまー!いやー、今日は戦場で活きのいい馬肉が獲れたぞ!」
戦場に行っていた父ちゃんが戻ってきた。別に兵士として行ってる訳じゃなく、所謂「火事場泥棒」をしに行ってるんだとよ。まあ戦が始まったのはここ近年のことだから、貰えるものは貰える内に貰っとけ、ってことだとよ。
・・・実は刀や鎧とかも。遠くの町の鍛冶屋に売っぱらってこっそり金にしてるらしい。やべえな俺の父ちゃん。
「獲れた、じゃなくて「盗れた」じゃねえの?まったく父ちゃんはすげー人だなあ。」
皮肉を言いつつ、しかしその後のフォローも忘れない。折角の馬肉が食えねえなんて残念だ。それにしても馬肉かあ・・・刺身は無理だろうが。いったいどんな味なんかねえ?
「ところで今日は肉じゃなくて。農作業用の馬をかっぱら・・・借りてくるんじゃなかったのかよ?」
そうそう、今日の父ちゃんの目的はそれだったのだ。すると・・・父ちゃんは一瞬だけ何やら渋い顔をして。その後、いつもの笑顔でこう言ったんだ。
「ああ、そのことだがな!敵方の兵が領地を制圧できなかった腹いせにこっちの村まで攻めてきそうだから。ちょっとこの馬肉と保存食持って逃げよう。このぼろ屋が焼けるのは仕方ねえが、俺らまで焼かれちゃやだもんな。」
「マジで?!それって結構ヤバくねーーー!?」
「あらまあ、いやだわ!どうしましょう武蔵さん、私・・・」
「大丈夫だ、だってお前はもうババアだもの。」
ヒュカッ・・・・・・
バッシイーーーーーーーーーーンンン!!!!!!
バリバリドジャアアアアンン!!!!
「オゴグエエエエエエエッツ!!!!!!」
「ひどいわ、ひどいわ武蔵さん!!!」
武蔵父ちゃんの妻、大兜お通。つまりこの俺の母ちゃんが。
・・・全身のひねりを利かせた、空を切る大振りの張り手で父ちゃんをぶっ飛ばした。ボロ屋、この家の壁をぶち抜いた外までだ!
「ア、アイッテエエエエエエエエ!!!!!!」
・・・そしてその先にあるのは。恐らくその場所に植えてある柊。ギザギザトゲトゲの葉っぱが茂るところだ。OH・・・
「ま、実際母ちゃんいい年だしな!青年誌とかエロ同人みたいなことにはならねえっての!ぎゃははは・・・」
「武蔵太ちゃぁぁん!!!!!!」
「オベエエエエエエッ!!!???」
ドッカラガガアアアンンン!!!!
次の瞬間、俺は顎に走るハンマーで叩かれたような衝撃と脳の揺れを感じ。
「武蔵太ちゃんまで・・・そんなこと言う子に育てた覚えはなかったのに!二人ともひどい、ひどいわ!あああああん・・・うわあああああん!!」
次の瞬間、俺は自分が母ちゃんのアッパーで吹っ飛んで。そして屋根に突き刺さっていることを理解した・・・あー、今日は夕日が綺麗だなあ。
・・・なんて言ってる場合じゃねえ!何とかフォローしなきゃあ駄目だ!
「ご、ごめん!母ちゃんマジごめんって!!いやまあ俺ってほら、その!熟女とか!垂れパイとかも結構好きだから!いけるから!!」
「た・け・ぞ・う・た・・・ちゃあああああん!!!!!!」
その声は天井の俺まで一息に迫ってきて。
足首を掴まれる感触・・・母ちゃんの重みが一気に全身に伝わって。
あれ、これって結構ヤバくねえ?
数値にしたら、そうだなあ・・・体感で65829・65ヤバス位だと思うぜ。
「ちょっと!頭!冷やしなさああああいい!!!!!!!!!」
いや、脳震盪起こしてる頭によく言うよ。
ちなみに50000ヤバスが信号待ちでの車の衝突事故くらい、3000ヤバスが「やっべー財布落としたとおもったらベッドの隙間に落ちてたー」くらいである。
筆者?ぶつけられたことはあるがぶつけた事はないらしいぜ。
ゴワッシャバリボオオオオオンンン!!!
「ぎゃああああ!!ぎゃああああああ!!!!!!」
そうして俺は床板をぶち抜いて、土間と同じ高さ・・・
・・・より下の。固い地面深くまで沈み込んだ。首から上だけ床下に出して・・・まったく、死ぬより怖かったぜ。
ま、死なねえから70000ヤバス弱で済んだけどな。
その後俺は父ちゃんに地面から引っこ抜いてもらって、二時間くらいは掛かったかな・・・結局掘り出してもらったんだ。それから、夜明けを待って。夜明けと同時に父ちゃんの「隠れ家」に逃げることになったんだ。奇襲ならともかく、軍が夜に行軍して。ましてや夜に村を攻める事はほとんどない、っていう父ちゃんの意見からだ。あれ、父ちゃんって意外と頭良くね?
そして結局敗軍は。俺らの村には来なかったんだ。俺がその時思ったのは。馬肉の鍋も結構うめえって事。それから逃げるとき馬があれば便利だったかもなあ、ってことだったか。あ、後「隠れ家」の洞窟は何か寒くてゲジゲジが割といた。ゲジゲジの怖さってのは死ぬとか母ちゃんの怖さとはまた違ったもんだよなあ。それじゃあまたな。
ああ、そうそう。帰った後は三人で仲良く家を直したぜ。