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なんと宿敵の登場だ!兜蟹、「鍬形」の足元に及ぶ!

 「うおおおお!!うおおおおおお!!」

 時は戦国、俺・・・って。

 「兜蟹ー!だめよ、正面から向かっていっても勝ち目はないわ、多分死にはしないけど負ける!」

 のんきして自己紹介までしてる暇はねえよなあ・・・今のこの状況じゃあな。でも、名乗りってのは割と大事なもんみてえ・・・だからっ!

 「俺の名前は大兜武蔵太おおかぶとたけぞうた鍬形小次郎くわがたしょうじろう!イザ尋常じゃなく・・・俺の狂気の刃を受けろおおおおい!!!」


 「・・・笑止。」


 俺が鍬形小次郎くわがたしょうじろうと呼んだ奴は。まるで俺のことなんて見ていないようだった。

 だって、そいつの体はすっげえデケえ。

 三メートル・・・は流石に言い過ぎだけど。それでも二メートル半はあるんじゃねえかな。くそっ・・・名前負けしてねえどころか遥かに勝ってるじゃねえの。


 俺の肝っ玉にも少しは見習って欲しいねえ。甲羅、つまり外見ばっかのがらんどう野郎だぜ俺って奴は。

 「うおおおお!!うおおおおおお!!」

 俺は両手で大刀を持ち、大振りで「鍬形」に斬りかかる!


 ・・・

 所謂「やられる体勢」というやつだ。大振りのモーションとかそれ、一騎打ちなら死亡フラグでしかないよなあ。

 若しくはジャンプして空中から攻撃・・・

 どのみちあいつの得物で打ち落とされる運命ディスティニーしか見えねえ!




 さて、斬りかかる際のスローモーション、アドレナリンがそうさせる。ゆっくり見えてく景色の中で俺は思う。死ぬには慣れたと思っていたが・・・

 中々どうして。


 「・・・・・・・・・い く ぞ 。」


 あいつの「殺気」にびびってやがる。



 先ず結果からいうと、俺は鍬形の奴に叩き伏せられた。文字通り、あいつが手にしてた二つのでっけー棍棒で。

 「ひょええぇぇえ・・・・・・」


 そうして俺は紙みたいにぺっちゃんこになって・・・潰れるとか、甲羅が砕けるとかとはまた違う。なんかよくわかんねえ状態になっちまったんだよなあ。巻物みてえにぺらぺらだ。

 

 「たけぞう、たけどぅおおおおお!!!」

 そして蝦夷美代身えぞみよみ・・・ミヨミの奴に息を吹き込まれて。読んで字のごとく、風船に息を吹き込むみてえにされて何とか復活出来たんだ。こいつの肺活量ってなんかすげえぜ・・・

 っていうか。これって間接キスじゃねえの?


 パアアアアン!!!


 ・・・なんて思ってたら。今度は体が破裂した。こいつはいけねえ・・・邪念が余分に入ったせいで、体が破裂しちまったんだなあ。よくあるよくある。

 「あーっ!た、たけぞうたあああああんんんんんおおおおおおおわー割れた!」


 「わー割れた!」じゃねえよオイ!・・・っていうか硬い殻の部分まで膨らむのはおかしくね?とか思ってたら。


 そういや俺ってば。「脱皮」したばっかで体が柔らかくなってたんだよなあ・・・どおりで体が膨らむわけだぜ。


 「・・・ほう。やはり貴様も。思ったとおり我等と同じ「海魔の眷属」だったという訳か。」

 あ?垣間見た走馬灯がなんだって?美代身なら何か知ってるかも・・・


 「・・・けんまの・・・かいぞく・・・・・・?」

 ッテお前も知らねーのかいい!まあこいつバカそうだしな、俺ほどじゃねーけど。へへっー。

 ・・・一応自覚はあるんだぜ?

 だけどどうにもならねえ「愚かさ」よ!


 「話をしようか。あれは今から・・・」

 「あ、それ長い話とかになりますか?でしたら「巻き」でお願いします」

 おいいいいそこを削ってくのか蝦夷っちゃあん!!!


 「・・・「先史人類」や「旧支配者」にとってはカダスで見た明日の夢のような出来事だ。だから、まあいい、とにかく「先史人類」、半不死性を持った人間とは違う知性体の祖。その純粋な子孫、または人間と混血の子孫である我等には数通りの呼び名があるが、何と呼べばよろしいのでしょうか・・・」

 「はやくー」


 だから削るなよ話を!あー、破裂した体が元に戻るまでまだまだ時間が掛かる・・・バラバラの体を動かすのも一苦労だぜ!



 そうそう、俺は軍略会議の一件以降。ミヨミと知り合ってから、幾つかの事を教えて貰った。その中でも重要なことが二つある。一つはミヨミもまた不死の人間であるということ・・・話の流れから察するに、成程。俺ら二人はこいつの言う「海魔の眷属」だってことなんだな?


 そしてもう一つは、この「不死の体のコントロールの仕方」だ。最初は、例えば自分を釜茹でにして自殺しようとしてたときは・・・今思うと自分でもなんでそんなことしようと思ったのか謎なんだがな?いや、失恋のショックからだ、ってのは覚えてるけど・・・体のタンパク質が凝固して。それでもお湯の温度が冷めたら自然と復活してた。嘘みてーだけどほんとのことだよ。


 だけど、どうも自分の体が千切れたり切断されちまったときにはどうしようもなかったんだよなあ・・・所謂縦真っ二つとか横真っ二つとか或いはバラバラとか。ああ、後ろの二つは農民時代に遭った事故によるもんだ。俺ってばかなりドジだからな。


 ・・・割とシリアスな話をするとよお?俺が子どもの、ほんとの子どものころ・・・俺が「気付いた」ときにいたとある浜辺で。漁村の漁師のおっちゃん達に。バラバラにされたことがあんだよ・・・「わー気味が悪い」ってなあ。そこにはどうも「神様」ってのがいたらしく・・・


 ま、その時は運よくサメの腹の中で、胃の内容物として溶けてくっつく感じで元に戻れて。だけどそれから俺はなんか悲しくなっちまって。「うおおおお!!うおおおおおお!!」って無我夢中で山を駆けていってなあ・・・そこで出会ったのが俺の父ちゃんと、そして母ちゃんとも家で出会ったというわけだ。


 でもその時には、そしてつい先日までは誰かの助けを呼んでくっつけてもらわねえと治らなかったんだ。こないだの戦でくっつけてもらったときもそうだったな。なんで駄目だったか、っていうとそりゃあ・・・


 ・・・痛すぎて動けなかったからよお。体が切断されるとそりゃあもう、いてえんだよね。わかんねえ?そりゃあまあ仕方ねえよ。人の痛みなんてなかなかわからないもんだろう?でもミヨミはそれを動かして、自分でくっつける方法を教えてくれた。それはどんな方法だと思う?


 答え「痛みを我慢して気合で自分の体を動かして復活する」


 ・・・気合ってバカにできないもんだなあ。そして俺はこうして再生しだしてる・・・再生というよりは「接合」か。へへ・・・


 さあて。後は腕が体に戻るだけだ!大分遠くに飛んだからなあ!


 「海魔の眷ゾック。まあ、みんないいやつだよ」

 さて、あいつの話が終わったようだな。

 「ふーん、つまりはそういうことなんだ。すごいね」

 ミヨミ、お前ノリ軽いなあ!

 「おどろきすぎて、何て言っていいのかわからないよ!」

 ああ、成程お前それびっくりしてんだな!


 「で?それで話は終わりか?」

 そしてここで俺だ。まーだ腕が戻らねえが。あれは遠くにふっとんじまったからな・・・ま、二本の足があれば立てるさ。


 「いや、まだだ・・・「我々」は仲間を探している・・・強い仲間をな」


 「仲間・・・?」

 てか他にもまだいんのかよ仲間が!

 「・・・名乗っておくとしよう。俺はお前達も知る通り鍬形小次郎という・・・「赤海月あかくらげ」という最高の「不死性」を持った海魔の眷属・・・そして俺達の頭領である奴の下。仲間を集めている・・・」


 赤海月・・・そいつも海魔の眷属ってやつか!

 

 「・・・そして「アノマロカリス」の海魔の眷属。それが俺だ」

 「あの・・・麻呂・・・?」

 なんだそりゃあ?まるで聞いたことがねえ名前だな。


 「で、名乗ってくれたってことは俺達はテストに合格したって訳か?待遇は色々保障してくれんのかい?」

 「いや・・・」


 と言う否定の後。鍬形のやつぁー、Uの字に沿った、口元に二本ある「触腕」を振り上げたそいつは。棍棒を持ち上げてこういうわけよ。いい話とは思えねえなあ。はてさてどんな言葉だったかって?


 「お前らの力はよくわかった・・・我等がるに足らん弱者だと言うことがな。だから俺はお前らを「打ち捨てて」いくつもりだ。名乗ったのはせめてもの礼儀、武士としての情けというわけだ」


 かあーっ!何たる上から目線!それじゃあ人材の育成なんてできねーっての!この無能上司!実力主義者!


 「そうかい・・・だったら仕方ねえなあ。まったく、大人しく斬られるしかねえよ・・・」

 「そうだ、大人しく叩き伏せられておくがよい。数日は再生が出来ぬほどにな。女はすぐに済むだろうが・・・ミヨミとやら。おそらくお前は「混血」だ。兜蟹、お前はどうだかわからんが・・・」

 振り上げられる棍棒ふたつ。

 「まあ、二度と我らの前に立てなくしてやろう。その体も、人前に出られぬよう。人目をはばかるような無造作パッチワークにしてくれるぞ」

 棍棒ふたつ、振り下ろされて。 


 

 そして―


 ・・・鍬形の左足の腱が切れた。

 「・・・これはっ・・・・・・!」


 いったい何が起こったか、って?実はこの俺の両腕なあ、さっき遠くまで吹っ飛んでたのよ。この鍬形野郎の死角までな。そんでその手が。今まさに戻ってきたところなんですわ。


 ・・・この鍬形に背骨を鎧ごとひしゃげさせられ叩き伏せられた、雑兵の刀を。両手に持って!

 ―んで、腱のあたりを、鎧の隙間を斬り付けたのさ!まだまだ痛みが凄くって、大した力は出せねえが・・・へへ、うまくいったぜ!


 ・・・・・・その後の策はねーけどな!

 へへ、愚策も万策も尽きまして。後に残るは・・・

 「無策な俺」よ!


 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 おお、キレたか!?どうやら頭も腱もキレたかよ!だけどこれなら、あいつは大丈夫!


 「今だ!逃げろおおおお!!美代身いいいいいい!!」


 ・・・これで、ミヨミは逃げ「キレ」るっ!


 女を助けて散れるなら上等よっ!!

 

 「・・・別に逃げる必要はないぞ?」

 なんだ、戯言か?それとも罠か?図体に似合わねえ小細工をろうしやがって・・・来るなら来いよ!

 「我はこれにて退くことにしたからな」

 そうそう!こっちに来い・・・って?


 

 えええええええええええええええええええええええええええええええ!!?


 「気が変わったぞ・・・お前達が未だ「不合格」であることに変わりはないが。この太刀傷に免じて見逃してやる・・・」


 「・・・我が足元に及んだことに免じてな。ふふっ、・・・ふははははははっ・・・・・・!!」


 なーに斬られて喜んでんだこいつは?マゾか何かじゃねえのこいつ?


 「もっとも、この分だと次は「良い返事」を期待出来そうにはないがなあ!まあ、それも一興、お主らを「また」叩き伏せるのも一興よ!それでは期待しておくぞ・・・」


 「・・・お前が俺を「殺す」ことをな!ふっははははほははほへへへへへえ・・・」


 何あの変態、若しくは狂人・・・すっげー怖いんですけども。もう二度と会いたくなんかねえよ・・・


 そうして俺は意識を失った。やべー、さっき破裂したときに血を流しすぎちまったみたいだぜ・・・


 「ああー!兜蟹!!こんなところで寝ないでよぉー!」


 ・・・ま、こいつがいるから今日は大丈夫かな。そんじゃあ後はよろしくな・・・


 「裸で寝たら、風邪引くよー!?」


 そして鎧まで弾け飛んだ俺の体は全裸であった。

 まあ別にいいか、どうでもな。今はそれよりとっても眠いぜ。







 さーて、今日は色々わかったがな・・・だけど。今日知った事は。心の内にしまっておこう。面白おかしく語るような話じゃねえからな。

 それこそ日常で語る事はない・・・


 

 ・・・だから、戦闘パート以外の日常のギャグパートでこの話題は出さないってことで。

 それなら「つじつま」が合うだろう?ギャグとはいえ矛盾や齟齬はあっちゃあ「アチャー」なもんでして。んじゃあまたな!

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