これは中々いい湯だなあ!兜蟹、釜茹でで真っ赤っか!
※注意!※ 今回の内容にはカニ(海老)バリズム的な少々過激な表現が含まれています。ですが食われたキャラはちゃんと(?)元通りになっています。そういうギャグでございます。そういったギャグ描写を理解できない方、且つ不快感を覚える方はそのままお戻りください。それでは・・・
時は戦国、俺、疲労困憊!
俺の名前は大兜武蔵太、しがない傭兵やってます。へへへ。いろいろあって崩壊した傭兵組織「真黒田の悪党」を抜けて、俺はかなり有名らしい「財貨衆」っつー傭兵集団に自分を売り込み、見事成功した!まあその辺りの話はまたおいおいするからな!今日は戦でヘトヘトなんだ・・・!俺もようやく自分の長所を活かせるようになってきたってところかな。今度の軍師は色々すげえ。
そんな訳で。俺は財貨衆が持ってる屋敷の一つに住まわせて貰えることになったんだ。なかなか広くて豪華だぜ?まあ「オマケ」も一応付いてるんだがな。飯炊きとかの話じゃねーよ?財貨衆ってなー貿易とかやっててかなり資金が潤沢らしく、鉄砲とかもすげえ挺数があんのよ!「味方につければ必ず勝つ」ってジンクスがあるくらいすげートコらしい。
ま、俺達はそのジンクスのおかげで負けたんだがな。世の中一寸先に財貨衆!そしてお先は真っ黒だ!ってか?ほんとに人生何が起こるかわかんねえもんだなあ。
そんな訳で前の戦では苦しめられまくった鉄砲だったが(火縄銃の連続射撃でチーズみてえに穴だらけだ!人海戦術プラス精鋭とか勝てねえよ!)、味方になれば心強え!だけどやっぱりトラウマだ!だって音も煙もマジやべえ。そして撃たれてよりやべえ、ってな!
・・・まあそれで死なない俺って何なの?って話だけどな。本当、考えるだけ無駄なことか。シリアス路線に乗り換えるにはまだまだまだまだ早えっつーの!
そんな訳で粟と稗の飯から麦飯、シリアルな食生活から。白飯食えるようになった俺はなあ。戦の疲れを癒す為、風呂に入ることにしたんだぜ。東海道中膝栗毛!
「兜蟹~、お湯加減はどうかな~?」
「おう、中々いい感じだぜ!しっかしこの風呂桶って中々デカくてスゲえよな!俺も後で火加減見てやるからな!」
「えへへ、ありがとう!でも私は下女さんにやってもらうからいいかなー」
「そうか!んじゃまあ頑張ってくれよ!」
「うん!」
まあそんなもんか。仲良くなったと思ったが、男と女の仲なんてそんなもんよな?つーか、そりゃあまあ、まあ。仕方ないか・・・
だって俺。こいつの風呂とか覗いたもんな。
そりゃあ欲望には勝てなかったぜ!だって俺ってば「男」だぜ?
・・・だけど、ちょっとだけ後悔しちまったなあ。いや、こいつの体つきは申し分ねえんだが。大分興奮はしたけどな・・・
俺と同じで、傷だらけ。
だからかなあ?魅力も沸きはしたんだが。それこそ風呂の湯みてえになあ。だけど、少しばかりではあるけれど。罪悪感も湧きはした。
だってこいつは。「女」だもんなあ。
紹介するのが遅れたな。こいつの名前は蝦夷美代身。前にいた真黒田の悪党での軍略会議以降意気投合して。それから色々あって悪党が解体された後、こうして行動を共にしている。「今は」屋敷も一緒だなあ。
あ、真赤珍太郎も合わせると三人か。
珍太郎ってなー、俺と似た感じの「ザリガニ人間」らしい。ざりがに・・?って最初は馴染みがなかったがあ、どうもこいつは「あめりか」ってとこから来たらしいなあ。まあな、異民族の移民ってことらしい。それは他の奴には秘密なんだがな。
おっと、別に金髪とかじゃあねえぜ?まだまだ時代的にネイティブ・アメリカンの時期だしな。それにこいつは俺と似た感じの「ザリガニ人間」。ま、頭と皮膚の甲殻以外は人間的な見た目の俺と違って、こいつは大分甲殻類っぽい。甲殻は背中までびっしりで、手首から先の部分はでっけえハサミだ。不器用だって仕方ねえ。そして腹には三対の歩脚と水かき(泳ぐときにしゃかしゃかいうやつだな。腹肢っつーらしい)があって、だけど足はしっかり二足歩行なんだぜ?
まあその辺はどうでもいいか。美代身について見てみるぜ。見た目は普通の女の子・・・いや、普通よりも可愛いと俺は思う。年はおおよそ十五位だ。俺?俺はうーんと・・・17になるのか?元服はとっくに済ませてる、それからすぐに家を出たしなぁ。野郎の話はともかくだ。ツインテールがかわいいぜ。そしてツインテールまで海老の味。
・・・そう、こいつはいわゆる「海老人間」らしいのだ。だけど見た目は俺や珍太郎とは違う普通の人間の女っぽくて。でも不死身である。なぜだ?うーん、神様ってのはどうも不公平だよなあ。
だけど、俺はこうしてこんな可愛い女の子とも知り合えたし。こうして風呂付きの上等な暮らしまで出来ている。あの時死ななくてよかったのかもな・・・正直、軍略会議の後でこいつが話しかけてきてくれた時は、そしてその後も。嬉しくて心強かったもんだ。神様、マジでありがとう!
欲を言えばおふくろとオヤジも呼びてえが、だけどやっぱり危ねえしなあ。仕送りだけで勘弁な。本当、一応の親孝行はできてんのかなあ・・・
しばらくしたら帰ってみるか。
「・・・つーか、ちょっと熱くねえ?」
なんだこりゃあ?解説と望郷の念でちっちぇえ脳が忙しくなってたら。どうもお湯の温度が・・・体感で40℃は軽く超えてんじゃねえの?やべえよやべえ、マジやべえ。このままいったら50℃、そして60℃・・・タンパク質が凝固しちまうぜ!即ちおれは、カチコチで!
皮膚と甲羅は真っ赤になるぜ!?
ところで酒に浸されてそのまま加熱されてく魚も。こんな感じで感覚が鈍るもんかねえ?徐々に茹だるのは残酷だ。若しくは、蟹を茹でるようなもんだぜ。
・・・駄目だ、いいジョークも浮かばねえし・・・
そしてそんなこと考えてる状況じゃねえ!
「おーい美代身ーみよみー!ちょっと、熱すぎるぜー!もういい、みよみ!ミヨミー・・・!?」
「えー?なにー?フゴー・・・きこえないよー?・・・フゴー!!」
そうして俺は、気付いたのだ。
美代身が一生懸命、節を抜いてある竹筒で。燃え盛る釜に力強く息を吹き込んでいる音が聞こえることに。あ、薪もごろっとくべられたな。
なんだこいつ、俺が「頑張れよ」って言ったからか・・・それは有り得るぜ!
だってこいつも俺と同じくらいバカだしっ!
いかん、このままじゃ・・・出汁が出ちまう!!!お出汁でちゃうのほおおおお!!!
「うおおおお!!うおおおおおお!!」
俺は風呂場からの脱出を試みた。しかし焦りのせいか、そして風呂釜がでっけえせいか!スベってななかなっ、噛んだ!なかかな、なかなかでられにねいぜっつ!
「うおおおお!!助けてー!!下女さん助けてー!!うおおおおおお!!」
(ふふ・・・兜蟹ったら戦の後なのに元気だなあ♪よーし、私も頑張っちゃうぞー!)
しかし助けは来なかった。そしてこの時、俺は知る由もなかった・・・
・・・この家の下女達が。揃って食材の買出しに出かけていたことに!
味噌と醤油は実際、重い!
「うおおおお!!やめろ美代身、うおおおおおお!!」
「フゴーッ!!フゴーッ!!!・・・すう・・・フゴーッツ!!フゴーーーッツ!!!」
・・・駄目だ!竹筒で息を吹き込むのに夢中でまったく話が聞こえていない!この状況を打破する策とは!?
「よし。諦めよう」
人生諦めが肝心だ。かの有名な水戸光圀公も、自身の旅のテーマソングでそう歌ったとか歌ってないとか・・・いや、歌ってはいないなあ。うん。ちなみに光圀公の旅物語はフィクションだ。
そうして俺は釜茹でになった。知らなかったなあ・・・俺ってこんなに真っ赤になるんだ。意識と上を向きそのまま凝固していく目玉の視界が薄れていく中で、俺は自身の内側に篭る熱気と、上昇していくお湯の温度を感じていた・・・
「うおおおお!!!うおおおおおお!!!!」
「あぎゃばぁーっ!!?」
そして俺はお湯の温度が程よく冷めた後。舟をこいでいた、居眠りをしていた珍太郎の首を手刀で勢いよく刎ねた・・・全裸のままでだ。
一方その頃、美代身はというと。疲れてしまったのだろうか、風呂釜のすぐ近くでうつ伏せになって眠っていた。泥のように。
「うへへ・・・湯加減どうかなあ?気持ちいい・・・?」
そしてその日の食卓には。「海老のような」食材を用いて作られた豪勢な料理が並ぶこととなった。本来、料理ってのは下女がするもんらしいが・・・農民育ちの俺には関係ねえ。それに、料理が出来る男ってなあ。一種のステータスみてえなもんだろう?それで助かることもあるしな。
「おいしそー、いただきまーす!ところで珍太郎は?」
「あいつ?あいつか。あいつはまたどっかで女でも追っかけてんじゃねえの?ハハハ・・・」
そしてふすまが横にスライドし。
「ただいまー!いやあ、何か起きたら頭がなくなってて驚きました。あはは♪」
「「きゃあああ!?」」
「わーっ!」
「Oh!ガネーシャ!」
首なしのままふらふらと行方を眩ませた珍太郎は何と。象の頭を戴いて戻ってきた!何か知性的に感じるぜ・・・とても優しい、つぶらな瞳だ。
どうしてこの辺に象が居たのかは謎である。大方見世物として連れて来られたか・・・?財貨衆は結構金あるもんな。
よくぞまあ船の中で暴れずにいたもんだなあ。あ、ガネーシャよりは歓喜天の方がよかったか・・・。時代考証とか、有って無い様なもんだねえ。