陰謀渦巻く軍略会議!兜蟹、己の無能を曝(さら)け出す!
時は真夜中、俺、In To The 城!
日が落ちたら飯食ってすぐ寝る農民暮らしだった俺にゃー。夜ってなー辛いぜ。縄?んなもん暇な時の昼とか雨の日に綯うもんだ。
俺の名前は大兜武蔵太、訳と縁あって厄介になってる傭兵団「真黒田の悪党」の下っ端だ!格好良く言い直すと末端構成員!
そして俺達は依頼主、詳しい事は耳を通って抜けて行っちまったが。とにかくその配下の城主の城を間借りして。ああっと、平屋の・・・本丸じゃないな、二の丸か。とにかく天守(本丸、一の丸)じゃないとこで。軍略会議をしてるってのよ。しっかし眠いぜ。眠いよな?
闇を照らす灯台(注がれた油と火縄を収める照明。「灯台下暗し」の灯台とはこれである)の火が。緊張感を醸し出してやがるぜ!
ところで、こんな夜更けに油とか使って大丈夫なのかね?
メタい視点はともかくだ!ムードが出てきて昂ぶるぜ!?静かな夜宴もたけなわに、参謀によって既に煮詰まった作戦が。後は一派全員の承認を得るばかり、と静かながらも張りのある声で語られてやがる・・・
「・・・以上が次回の戦での作戦だ。工作に当たるものは十分に注意して行ってくれ。異議申し立てはござらぬか?」
「はいっ!!」
そして誰かが名乗り出た・・・
俺だ。
少しばかりその場の空気がざわめく。しかしすぐさま静まると。皆俺の一挙一投足に釘付けだ。そりゃあ釘付けにもなるだろうよ。何たってこの見た目だし。俺の歩脚は内側に丸まるぜ。
「はいはい、はーいはいっはいはいーーーっつ!!ほぉい!!!ヴォイ!!」
「そこまでアピィルせずとも判っておるわ!確か新入りの・・・兜蟹だったか」
「違います、先輩!大兜武蔵太でーっす!たけぞうた、って呼んでくださいね♪」
よっし!気さくなアピールが決まったぜ!
「・・・うむ・・・それでは。何か意見や良策でもあるのか? 武 蔵 太 。」
・・・あっれー?どうも参謀様の雰囲気がピリピリしてるぞ?まあ真剣な話だからなあ、仕方ないことか。そりゃあ真面目にもなるよなあ。
「はいっ!ちょっとご意見をばあ、おさせて頂いてもお、あ。お宜しいでございますでしょうか?かしこかしこみかしこまりましてー!」
ん?何だ、一気に周りがざわめきだしたな・・・人が話してんだから静かにしろよな。国会の野次でもあるまいし・・・そして参謀さんもなんか凄い表情をしているな。なんだ、ちゃんと敬語は使った筈だけど・・・
そうか。厠に行きたいんだな?
中々言い出せないよなそういうのって。わかるぜ、俺も「せっちん」を我慢したことがある。
「何だ・・・申されよ兜蟹。場合によっては「ほうび」をとらすぞ・・・?」
かーっ、だから俺は「カブトガニ」じゃなくて「たけぞうた」だっつーの!皆よく間違えるんだよなあ。
ところで皆は分からない事があったらちゃんと質問とかしてるか?俺はしてるぜ。いやまあ、それも恥ずかしい事だけどよ?知らないままのが恥ずかしいっての!だからな、俺は質問をする事にした。
「えーっと、説明の内容が専門用語ばっかりでよくわからなかったので。もう一度詳しく説明してもらえませんかねえ?」
・・・バイトとか。或いは新入社員が先輩に指導を受ける際。説明の内容や仕事の指示が専門用語ばっかりでわかんねえことってあるのよな。きっと本人は分かってるんだろうけどよお。ま、分からないことを聞くのって大事だよな。予習?ググる?なにそれ面倒臭えな。
でも皆は「知恵袋」とかで質問に答えて貰った時。短くてもいいからちゃんとお礼はしろよな!きっと「誰か」にムカつかれてるから!
そして暫しの静寂の後。さっきまでの静かな剣幕は何処へやら、優しい笑顔でもう一度分かりやすい説明を始めてくれた参謀殿。隣の奴も肩を叩いてきて、「頑張れよ」って言ってくれた。それにしてもこいつ、変な顔だな。いや、顔立ちはいいんだが。顔面の筋肉でも麻痺しちまってるのかな?・・・お大事にな。
やっぱり自分の意見は通してみるもんだぜ!意見は言っただけ、得するな!
「・・・これで説明は以上だ。お分かりいただけたかね、兜蟹くん?」
「はい!すっげー難しかったけど何とか!」
「そうか、それは何よりだ。それでは「ごほうび」をあげようか・・・」
そして参謀はにこやかな笑顔のまま、胡坐をかいて座ってる俺の前まで歩いてきて・・・
そして、脇に差してあった刀で頭を兜割りにされた。しっかり綺麗に二等分だ。
成程、所謂「上げて落とす」って奴か。
2分割された右脳と左脳それぞれに。鞘が刀にゆっくり納められる、擦るような音と鞘とつばの隙間がぶつかって埋まるような金属音が響く・・・
そして薄明かりの下に曝け出された俺の脳味噌は、驚くほどにスカスカであった。
所謂「無脳」ってやつだな。
ちなみに蟹味噌は脳みそじゃないんだぜ?肝臓とすい臓にあたる部位らしいよ。それじゃあまたな。