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終幕 2

 

 作業は夜に行われた。昼間は光が強すぎたため、目を痛める可能性があったからだ。ロッククライミングの要領で助手は『太陽』の役割を果たす超巨大ダイヤモンドの近くまで登る。そして高性能の指向性を持つ爆薬を次々と設置していった。事前に最も効果の高いポイントを博士が計算で算出したので最小の爆薬で最大の効果を得ることができるだろう。

 

 その様子を人形と博士は白塗りの家の屋根で見上げていた。

『B婦人はすばらしい身体能力の持ち主だな。きっと一騎当千の武人なのだろうな』

 人形は感嘆の声を漏らす。それに博士も続く。

「ええ、僕の助手をしているのは実にもったいない。ましてや主婦など神への冒涜です」

『はは、違いない。ところで、A博士殿に伴侶と子供は?』

「はは、わけあって今は一緒ではありません。息子もいるにはいますが母についていきました」

『それは良くない。ここから戻ったらすぐに不和を直したほうがいい。でなければ•••』

「でなければ、彼みたくなると?」

『•••そうだ。あの哀れな男のようにむなしい『家族』を求めるようになる。もっとも、あまりA博士殿にそのような心配は必要ないとは思うがね』

「勿論、そんな心配はいりません。ここから出たらすぐにも三度目のプロポーズをしにいきます」

『そんなに再婚離婚を繰り返しているのか、やっぱり剛の者だな、A博士殿は。さてと、』

 人形は腰をあげ、博士に背をむける。わずかばかり差す月の光を受け、哀愁たっぷりに。

「どこへ、行くのですかな?」

『私は人形師との約束を果たした。ここは、去らせてもらう』

「見届けなくて良いのですか?」

『いい。博士とB婦人ならキッチリやり遂げてくれる。それにこれ以上長くいたら変な情がこの町に湧いてきそうだ。あんな狂気の町でも私の故郷みたいなものでな•••』

「•••わかりました。またいずれ、会う機会もあるでしょう」

『そうだな。短い間だったが楽しかった。別れの挨拶もせずに去る無礼をB婦人に詫びておいてくれ。では、さらば』

 人形は静かに屋根を降りて去っていった。


 

 


 下での会話など聞こえるはずもなく、助手は淡々と作業していた。全ての爆薬を設置し終えたことを確認して、彼女は深くさして固定したザイルに硬質ワイヤーを結びつける。彼女はザイルをもつ手を離した。重力に身を任せ、彼女は落下していく。腰の降下装置に直結している硬質ワイヤーがその落下スピードを抑制する機能を持ち、彼女はそれを自由に操ることができた。


 風を切って、白塗りの家の屋根に彼女は降り立つ。

「ただいま戻りました」

「うん、お疲れさま。起爆装置は?」

「これが起爆装置になります。そしてあの人形は?」

「ありがとねえ。彼は去っていったよ。人形にも感情はあるらしくてねえ」

「さいですか。報酬はもうもらったのでどうでもいいですが」

 そう言い捨てる彼女の首には美しい金のロザリオがぶら下がっていた。

「じゃ、行こうか。また明日にでもランプを回収しにいこう」

「了解です」


 二人は、月光を一身に集めほのかに輝くダイヤモンドを背にして町の出口へと歩みだした。

「ところで、君はここからでたらどうするんだい?」

「私ですか、そうですね••••••結活でもしますかね、良い男でも探します。博士は?」

「僕は、そうだねえ•••ランプの一つでも手土産によりを戻しにいくよ」

「上手くいくんですか、もう何度目になるんだか」

「君は何年目になるんだか」

「喧嘩売ってます?」

「どうだろうねえ。まあ、お互い上手くいかなかったらまた冒険しますか」

「いや、今度こそ結婚しますよ」



 二人の冒険は、まだ終わらない。


















ご愛読ありがとうございます。一年のブランクはそろそろ埋めれたので、次回作からは長編になります^@^


 機会があれば、また私の三文小説に目を通していただければ幸いです^^

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