終幕 1
「ふむむ、僕としてはこの墓は考古学的には非常に偉大な発見になると考えています。それをみすみす逃す手はない」
『ただとは言わない、この家の真上にある超大型のダイヤモンドを持っていく権利を認めよう。それとも今の時代ではただの石ころかね?』
「価値をありますが、そんなもの二人ではここから運びだせませんねえ。そもそもどうやって発掘するのですか?」
『さあ、今の時代ならいとも容易いのではないかと思っただけだ。さてそうなるといよいよ困ったな•••』
「いやいや、焦る必要はありませんよ。ここに来るまでのランプ二百個といくつこの人形をいたただければ僕は結構です。」
『人形は少しならいいだろう。ランプ•••そんなものがあるのかね、だったら好きに持っていってくれて構わない。ふむ•••』
人形は少し不満げな声を漏らす。
「なにか不満ですかねえ?」
『いや、そうだな•••できれば、あの忌々しい鉱物を持っていってもらいたかった。というのが本音だな』
「それはまた、どうして」
『人間というのはうらやましい限りだ、自分の生に終わりがある。だが私はどうだ?。あの哀れな男の町を見守るというだけのつまらない生活をあとどのくらい続ければいいのだ』
「それが、あなたの役目なのでしょう?」
『ああ、そうだ、だが数百年働き続けたのだ。そろそろ暇のひとつでももらっても罰は当たりはせんのではないかね?』
「それがどう、あの巨大ダイヤモンドと関係するのですかな?」
『約束なのだ、人形師とのな。いつかこの町に永遠の闇が訪れたのなら、私は自由になることができる。いくら口約束でも生みの親との約束だ、破るわけにもいかん。気がつけば数百年たった、というやつだ。あのダイヤさえ、砕ければこの町を照らすものはなくなる』
「持って帰るのは難しいですが、砕くのは難しくありません。物を破壊するのは私の後ろに立つ彼女の得意分野です。ですが、彼女は今大変機嫌がよろしくないでしょうな。なんて言ったってアテにしていたお宝を逃すことになったのですから•••••」
博士の言葉以上に助手は不機嫌だった。このままでは五年の歳月をかけたものをただ、人形の長話を聞かされただけで終わってしまう。
「彼女は機嫌はまるで大海原の波のようでして、ある時は穏やかで周りを和やかにさせ、またある時は荒れ狂い周りの者共を困らすのです。まったく、この気まぐれにはよく手を焼かされました。どうりで貰い手がまだ現れないわけです」
博士の言葉で助手は更に機嫌を損なった。
『なにが、いいたいのかな?』
「彼女の機嫌が急転直下で上向く、なんて物があるといいのですけど•••••••ね?」
博士の目が狡猾に光る。人形は博士の意図を読み取る。ようは、もっと金目になるものを寄越せというわけだ。成る程、人が良い顔をしていながら人並みの欲はあるらしい。
『私は人形師からいくつかの財を頂いている。自由となった時に不自由しないように、とな。全てとはいかないがその一部をB婦人に譲り渡そう。当時の金細工の一流品だ。それでどうかね、博士?』
「どうだい、B君?」
「俄然、やる気が出てきました」